
イメージ写真
音楽を数字で見ていくこちらの連載。第7回はずばり「バンドは平均でどれくらいメンバーをチェンジするのか?」を調べたい。
ファン以外にはなかなか伝わりにくいものだが、「メンバーチェンジ」というのはそのバンドのファンにとっては、見逃せない重大発表のひとつである。
しかも、最もスタンダードな「音楽性の違い」による脱退から、ときには「住職になるから」「メンバーが失踪したから」などなど、予想のはるか斜め上をいく発表がされることもあり、良くも悪くも、思いもよらない大きなドラマが生み出されることが少なくない。
今回は、そんなバンドファンにとっての一大事「メンバーチェンジ」を、出来るだけ細かく見ていこうと思っている。
まず、調査対象は雑誌「ROCKIN'ON JAPAN」の2017年1月号から2018年11月号で特集されたアーティストのうち、「複数の固定メンバー」がいる150組。また「メンバーチェンジ」の定義として、純粋な加入(今までいなかったキーボードが正式加入する等)や、無期限休養は除き、「脱退」として発表されたメンバーのみをカウントする。
あわせて、対象期間は「そのバンド名で、オリジナル曲のデモ制作・ライブ活動を始めたタイミング以降」とし、「オリジナル作曲の演奏に参加していたメンバーかどうか」「本格的な音楽活動以降のメンバーかどうか」を基準として調べている。
では早速、結果から見ていこう。まず150組のうち「メンバーをチェンジしたことがある」バンドの割合がこちらである。

「メンバーをチェンジしたことがある」バンドの割合(C)エキサイトミュージック
・メンバーをチェンジしたことがある:54.0%
・メンバーをチェンジしたことがない:46.0%
結果を見ると、過半数のバンドがメンバーチェンジを経験しており「バンドは水もの」という言い伝えがいかに正しいかを教えてくれる。確かに、高校や大学の友人と一緒に音楽を続けていくのは、楽しいこと”だけ”ではないだろうし、残されるメンバーや脱退する本人にとって幸せな道を選んだ結果と思えば、寂しいながらも受け入れるしかない数字なのだろう。
では次に「脱退するメンバーはどのパートが多いのか?」を見てみよう。

脱退するメンバーはどのパートが多いのか?(C)エキサイトミュージック
1位:ドラム 48人
2位:ギター 36人
3位:ベース 35人
4位:ボーカル 8人 (※ギターボーカル、ベースボーカル等含む)
5位:キーボード・シンセサイザー 8人
6位:その他 14人 (※パーカッション、トロンボーン等)
この結果を見れば誰もが思うことだろうが、ドラマー、脱退しすぎではないだろうか? 数にしてボーカルの6倍、次に多いギタリストにも1.3倍もの差をつけての大勝だ。
さらに言えば、「脱退メンバー」の3人に1人がドラマーとなっており、さすがに圧倒的と言わざるを得ない。
残念ながら私自身がドラマーではないため「ドラマーの脱退理由あるある」等はわからないのだが、「絶対にメンバーチェンジをして欲しくない」と考えているファンの方は、ぜひドラマーに重点を置いて応援された方がいい、と思える結果である。
なお、非常に少ない「ボーカルの脱退・メンバーチェンジ」の具体例には、赤い公園、Crystal Lakeなどが該当している。確かに、ニュースとしてはかなり意外に感じた印象があり、体感的にボーカルの脱退は少ない気がするので納得だ。
では次に、メンバーチェンジを経験したバンドがそれぞれ「いつメンバーをチェンジしているのか?」を見てみたい。これは時期をインディーズ時代・メジャー時代に分けて、いつが最もメンバーがチェンジしやすいタイミングなのかを把握しておくことで、ファンとして出来るだけ心の準備をしておきたい、という趣旨に基づいている。その結果がこちらである。

いつメンバーをチェンジしているのか?(C)エキサイトミュージック
・インディーズ時代:40組
・メジャー時代:27組
・インディーズ・メジャー時代どちらも:15組
時代別に見てみると、インディーズ時代が過半数を超える結果となった。しかし、インディーズ時代・メジャー時代どちらでもメンバーチェンジをしているバンドも多く、ファンには寂しい限りだが、メジャーデビューしたからといって、すんなり「しばらくはメンバーチェンジはなさそうだ」と気を抜けないのが、バンドの性と言えそうだ。
また、あわせてメンバーチェンジを経験したバンドが、インディーズ時代とメジャー時代それぞれで「何回メンバーをチェンジしたのか?」を出してみたのが以下である。

インディーズ時代とメジャー時代それぞれで「何回メンバーをチェンジしたのか」(C)エキサイトミュージック
■インディーズ時代
1回 58.2%
2回 29.1%
3回 7.3%
4回 3.6%
5回以上 1.8%
■メジャー時代
1回 53.7%
2回 22.0%
3回 12.2%
4回 4.9%
5回以上 7.3%
最も多いのはインディーズ・メジャーともに「1回」。当たり前といえば当たり前だが、非常に安心できる結果で何よりだ。
なお、参考までにインディーズ・メジャーを通して5回以上のメンバーチェンジ / 脱退をしていることがわかっているバンドを挙げてみる。
・東京スカパラダイスオーケストラ
・KEMURI
・POLYSICS
・The Mirraz
・クリープハイプ
・くるり
いかがだろうか。さすがに活動歴が長いバンドが並んでおり、長くバンドをやることの難しさが伝わってくるリストである。
念のため繰り返しておくと、私個人は必ずしもメンバーチェンジが悪いことだとは思っておらず、むしろ全員にとってメンバーチェンジが望ましい場合も大いにあると信じている(し、信じたい)。なので、あくまでも上記のリストはファン同士が「あのバンドって、これくらいメンバーチェンジしてるのか!」と知って、笑って楽しむことに使っていただければ何よりである。
それでは、今回の内容はここまでだ。バンドファンには避けて通れないイベントである「メンバーチェンジ」だが、個人的にはメンバーがチェンジしたとしても、ぜひ去るメンバーのことも残るメンバーのことも変わらず応援していきたいと思う。
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
Twitter:https://twitter.com/_maishilo_
note:https://note.mu/maishilo