幹部クラスと毎日仕事をする秘書。出世する男達に慣れている彼女たちは、ある意味、男性の「目利き」とも言える。
現役秘書に出世する男の特徴を聞いた。

出世する男達は同僚に対して…


「冷酷な社員が出世する」現役秘書に聞いたカイシャで出世する男の特徴

役員予備軍あるいは役員の座を掴んだ社員たちは、ある程度仕事での実績を挙げてきた者が多く、その実績には大差がない。それでもさらに出世できる人はどんな男性だろう? MBAを取った人? 帰国子女? 「そんなの関係ないですよ。ただ単に仲間を蹴落としてきた冷酷な社員が出世するのです」と言いきるのは、大手証券会社に勤務していた高木さん(仮名、41歳)だ。

高木さんが秘書にあてがわれたボスは、グループ長という役職者。高校も大学も早稲田、20代で結婚し、新婚のままニューヨークに転勤し帰国した人物だ。こう書くとなんだか華やかな経歴のようだが「社内にはそんなオヤジばかりだから、彼の経歴なんてちっとも目立ちません。
社費で大学院留学した人や、彼よりも営業成績の良い人なんていっぱいいる」という。

平社員から副部長、部長、グループ長、と順当に上がっていくのが日本企業のパターンであり高木さんの会社でも同様だが、グループ長に昇格する一歩手前の部長はゴロゴロ存在し、各部長の営業成績には大差がない。高木さんによると、その中でさらに昇格するには、自分が頑張るのではなく、頑張っている優秀な社員を蹴落とし自分だけが生き残るのが手っ取り早いという。そもそも役員フロアーにいる幹部クラスは「追い出すタイプ」が実際に多かったというのだ。

「もう、黒光りのダイヤの世界ですよ。私が仕えていたグループ長なんて、親友と呼んでいた一年後輩の部長が営業成績を上げると、先輩の立場を利用して仲間を集め、彼を本店から追い出しました。
何が怖いって、追い出してからもグループ長は『あいつ、いい奴なんですよ。僕は親友ですからあいつの良さがよく分かるんです』と、上司の役員や社長に対して平然と親友アピールをしている点です。

彼は、追い出した相手がいつか反旗を翻し自分を殺しにかかってくるのを察知しているからです。仮に、追い出された相手がグループ長に反撃しても、『親友を痛めつけるなんて』と何も知らない役員たちがグループ長を守り、追い出された側を責めるでしょう。平凡な学歴と営業成績しか持たないグループ長は、自分に何の武器もないことを理解しているからこそ、計算ずくめで追い出し、『親友』と呼び続けているんです…」(高木さん)
なんだか、「俺達親友だよな?」と自分に都合の良い時だけのび太に対して凄むジャイアンみたいだ。

大手コンサルの裏側


大手コンサルティングファームの秘書、近藤さん(仮名、32歳)も同様のことを言う。「目だった学歴ではないのに『パートナー』(編注:一般企業で役員クラスにあたる)にまで昇格できる人は、蹴落としたい同僚に対しては絶対に本音を見せません。
極めて紳士的に対応しつつ、でも距離を置いて、相手を眺め続けています。欠点を観察し、いざ蹴落とす時は、最も力のあるパートナーに高頻度でその欠点を愚痴るんです。ねちっこいでしょう(笑)? もちろん『根はいい奴なので僕も大好きなんですが』と報告時にしっかりと加えることで、あたかも自分には誹謗中傷や蹴落とす意図はない印象に仕上げます。秘書達は彼らのメールを読める立場なので、読みながら虫唾が沸いていますよ(苦笑)。でも結局、こういうタイプが昇格させてもらうんですよねぇ」。

暗く戦う男の裏側ばかりを見るうちに、嫌気がさしてこないのだろうか?

「もちろん嫌ですよ。
さらに、私達秘書のバックには重要役職者が就いていると思われているから、平社員や若手社員からは敬遠されたりもします。私達は自己顕示欲の強い中年オヤジより若手に声をかけてほしいのですけどね(笑)。こうして秘書は孤独に陥ります。どの会社の秘書室も独身者が多いんじゃないかな」(高木さん)。


秘書が好む男はどんなタイプ?


では、そんな秘書はどのような男性を好むのか。役員クラスの接待場所を予約しているくらいだから、頑張って高級レストランに連れて行っても驚いてもらえないのではないだろうか?

「あの…(溜め息)、みなさんは秘書たるものを誤解しています。
秘書は、蹴落とし合ったり承認欲求が強すぎる男性達のダークな部分を毎日見ていますから、プライベートでは真逆の男性、つまりダークさが少ない男性と一緒にいたいんです。素直な男性達からのお誘いを待っているんですよ」(近藤さん)
「秘書として、戦略的なマインドにとらわれた男達をヨイショする日々を送っているので、プライベートでは逆のタイプとほのぼのと笑っていたいです。裏表が激しくなく、出世云々のために人間性を失わない素直な男性に、今度は自分が尽くされたい。素朴で真面目な男性にこそ秘書は落ちます」(高木さん)

(タカヤナギ)