株式会社JALUXが2018年8月に20~50代の有職男性500名を対象に実施した「出張疲れ」に関する調査によると、出張先での「スーツのシワ」「襟つぶれ」経験者は8割超えであった上に、そのうちの38.2%が「出張時のスーツじわ・襟つぶれが原因で、商談に影響が出たことがある」と回答した。
自由回答では、「初対面の相手だったので外見をチェックされたらしく『お疲れのようですね』と言われてしまった」という50歳男性もいた。このような商談中のきつい一言、他にどんなことがあるのか気になる。早速見ていこう。
1.「君は話が上手すぎて信用できない」~浦上俊司さん
まずは営業マンとして独自のセールススタイルを構築し、全国ランキング1位を獲得したこともある現・研修講師の浦上俊司さんが経験したきつい一言。
「今はすでに50代となり懐かしい思い出ですが、20代の頃に言われたお客様からの一言。『君は流暢に喋るので、話が上手すぎて信用できない。噛んでも、なまっても、とちっても良いから必死になって提案してくれる営業マンと私は取引をしたい。』こう言われて、当時としてはかなりショックで、この体験以降はあえて素人っぽい演技をするようになりました」
商談時は緊張して、しどろもどろになりがちだが、しゃべりが流暢すぎても信頼は損なわれるようだ。
2.「あなたはそれが普通かもしれないけれどこちらだって事情がある」~加藤あやさん
続いては、リポーター・キャスターの経験のあるコミュニケーション・スピーチトレーナーの加藤あやさんが体験したきつい一言。
「私は、仕事もプライベートも“すぐに行動する”をモットーにしています。そのため、悩む時間や考え込む時間が長い方が相手だったとき、ついイライラして口調が強くなってしまい、かつ相手を急かしてしまったことがあります。すると相手から『そんなこと言われても…』『あなたはそれが普通かもしれないけれどこちらだって事情がある』と言われたことがあります。また返答が遅い方やあいまいな方に対して、次の質問や話題に移ったり、『大丈夫です』と遮ったりしたとき『すみません、すぐに反応できなくて…』と非常に申し訳なさそうにうつむいて言われたこともありました。あとは、職業柄、滑舌が良く言葉がすぐに出てくるのが“あだ”となり、たくさん話し過ぎて『はい、はい』という、相手からの生返事が続いたことも。これらはやはりきつい一言でした」
3.「健康マネジメントができていない人に、レストランのマネジメントができているわけがない」~水野雅浩さん
ビジネスマンの健康マネジメント・スクール主宰の水野雅浩さんは、現在、健康的なルックスで肌ツヤも抜群。そんな彼がかつてこんな一言を言われたことがあるそうだ。
「2008年、香港で日本食レストランの事業立ち上げに参画した当初、リーマンショックによる顧客減、資金繰りの恐怖などで睡眠時間も取れず、ストレスで食生活も乱れ気味に。結果、スーツを3度も買い直すほど、激太りしてしまったのです。そんな中、営業に回っていたとき、私のメタボ体型を見て、香港の5つ星ホテル、インターコンチネンタルのコンシェルジュからぴしゃりと耳の痛いことを言われました。
『健康マネジメントができていない人に、レストランのマネジメントができているわけがありません。私たちが担当するVIPのお客様は事業で成功された方たちばかり。
4.「自分のことばっかり」「新人だからって許されるって甘えてない?」~高村幸治さん
経営コンサルタントであり、株式会社エナジーソース代表取締役である高村幸治さんは、こんなきつい一言を言われたことがあるそうだ。
(1)急な事故に巻き込まれ、5分、面会に遅刻したときのこと
「教育会社の人間が遅刻ってどういうこと? 言っていることとやっていること、違うことないか? 事故に巻き込まれたって言い訳することがありえへん。おたくの人材育成を学んでうちの社員が成長するのか、不安になってきたわ」
(2)成績が悪く、営業成績に追いかけ回されていたときのこと
「いつも来るたびに、研修の売り込みばっかりやね。こっちの状況なんか把握せずに自分のことばっかりやね」
(3)社会人になりたての頃、がむしゃらに動いていたときのこと
「ネクタイは曲がってるし、靴は汚れてる。身だしなみって相手のためにすることやで。君はお客さんのことを大切に思っていないんか? 新人だからって許されるって甘えてへんか?」
(4)大切なお客様でしたが、売り上げが少なくなって、疎遠になっていたときに電話で言われた一言
「最近、ウチにあまり来んようになったな。研修をオーダー(発注)していたときは毎週のように来ていたのに、ウチの業績が悪くなったら挨拶にも来ないんやな。なんかそういう付き合い方って冷たいわぁ。新しいお客様って既存のお客さんを大切にするから生まれるんやで。そんなことも知らんのか?」
5.「おまえの意思はどうでもいい」「そんなんで仕事になると思ってんの?」~福田剛大さん
続いては、名刺の専門家である福田剛大さんのエピソードだ。
(1)「おまえの意思はどうでもいい」
「取引先と商談中に納期について説明していたら、『絶対この日までに欲しいから守れ。おまえの意思はどうでもいいから調整しろ。』とまくし立てられました」
(2)「それで私にどうしろと」
「備品の補充を、総務課の主任に相談したら、こちらが『お願いします』を言う前に、説明の途中でそう言われました」
(3)毎週金曜日の夕方に「それでは月曜の午前中にお願いします」
「新規のオリエンが金曜の夕方から始まり、企画書・ラフ案などの提出を月曜の午前にお願いしますと毎週言われていました。この会社との取引がなくなるまで土日がなかったです」
(4)「そんなんで仕事になると思ってんの?」
「提案書を3案持っていきましたが、なんだかんだと言われた挙句に言われた一言です。その方の上司に同じ提案書を見せたらすんなり通りましたが…」
(5)「中古レコード屋の店長みたいですね」
「交流会での自己紹介後に、参加者の方から言われました。たぶん“もじゃもじゃ”な髪の毛の印象なのでしょうが、なぜわざわざ中古をつけるのか気になり、ポカ~ンとなりました」
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有識者5名の経験からは、こうした商談中のきつい一言があるからこそ、今の成功があるように感じた。きつい一言を受けたら、そう信じて前に進もう。
【取材協力】
浦上俊司さん
S62年 立命館大学経営学部を卒業。H7年からフリーの講師として全国各地にて企業向け研修(営業パーソン研修、モチベーションアップ研修etc.)、各種セミナー、講演など多方面で活躍中。
研修講師~『浦上俊司の感謝ブログ』
加藤あやさん
コミュニケーション・スピーチトレーナー。Act communications 代表。
https://act-communications.jp/
水野雅浩さん
ビジネスマンの健康マネジメント・スクール主宰。予防医学の専門家。著書「グローバルで勝つ!30代の太らない疲れない7つの習慣」はアマゾン総合1位に。企業、行政向けに研修を行い、健康面からビジネスマンの成功を支援。
http://www.healthylifepj.com/
高村幸治さん
株式会社エナジーソース 代表取締役
「子どもたちが憧れる未来の創造」を理念に掲げ、全国で講演や研修を展開している経営コンサルタント。論語の「知・好・楽」の考え方をベースにした独自の『楽学』スタイルのプログラムは多くの企業で採用されている。
http://www.energy-se.jp/
福田剛大さん
名刺の専門家。話ベタな営業マンを中心に「その場で仕事が取れる名刺術」をテーマにした講演・セミナー・執筆活動を展開。名刺のスペシャリストとして「マツコの知らない世界」などマスコミ取材多数。
「名刺 福田」で検索。
http://shunkan-dentatsu.com
(石原亜香利)