竹内扮する主人公の弁護士・氷見が、「逃げ場を失い崖っぷちに立たされている女性の心に寄り添い、手を差し伸べ、危機から救うべく奔走する」(公式サイトより)ということなのだが、なんだか見ていてモヤモヤする展開が続く。脚本が消化不良の上、竹内結子がすごくイヤな女に見えてしまうのだ。先週放送された第3話の視聴率は少し回復して6.4%。
石田ニコルの演技力が爆発
第3話は、フィギュアスケートの金メダリスト・相馬紀子(白石聖)が恋人殺しの容疑者になったというお話。弁護士たちが真実を探り、無実の容疑者にかけられた疑いを晴らす……のが従来のリーガルものの定番なのだが、このドラマの場合はちょっと違う。「家があるアメリカに戻りたいからなんとかしてほしい」という依頼なのだ。この時点で、頭の上に「?」マークが点灯する。警察の捜査は進んでいる。じゃ、氷見たちは何をすればいいのだろうか?
警察は世論に左右されるという氷見の主張により(そうか?)、「新しい被疑者」がでっち上げられる。それが銅メダリストの青山リナ(石田ニコル)。彼女は紀子の恋人と関係があった。無実を主張する彼女に「さすが銅メダリスト。
しかし、リナはワイドショーに出演し、紀子の恋人と付き合っていたことを赤裸々に告白して謝罪。これで世論がリナ支援に傾くと、氷見たちは苛立つ。情報操作、リナのほうが上手いじゃん。石田ニコルはモデルとして有名だが、実は演技力が高い。今回のエピソードは彼女の演技力でかなり助けられていた。
竹内結子がイヤな女にしか見えない
相馬紀子がアメリカに帰りたがっていたのは、彼女の母親(日本人)が末期がんだったから。母親は女手一つで厳しく彼女をスケーターとして育て上げた。氷見は紀子の子ども時代の映像を流す。
氷見と相棒の与田(水川あさみ)、藤枝(中川大志)はいつもバタバタしているのだが、何をやっているのかよくわからない。真野(斉藤由貴)は「犯人探しなんて、警察に任せたほうがいいんじゃないの?」と言うが、犯人探しなんてしてたっけ? あ、藤枝に情報を集めさせていたのがそうか。
藤枝が情報を得るために外国人男性スケーターと寝たことも示唆されている(洋服の乱れを直したりしていた)が、なんだかデリカシーがない展開だ。そして、藤枝に氷見がこんなことを言う。
「枕した?」
これ、男女を入れ替えると相当グロテスクだ。リナのアリバイ証言が嘘だと判明する(どうして嘘だと判明したかはなぜか描かれない)と、「あーあ、新たな魔女の誕生だ」とニヤニヤする。本当にこのドラマの竹内結子はイヤな女に見える。イヤな女が主人公のドラマならそして、そうこうしているうちに紀子は逮捕されてしまった。

真相を早口で一気に説明する斉藤由貴
結末は複雑だった。恋人殺しの真犯人は紀子の女性コーチだった。
紀子が女性コーチの指示に従って審査員と寝たのは、自分をスケートに縛りつけていた母親に金メダルを見せるため。体を売って得た、汚れた金メダルを見せて、母親に復讐したかったのだ。
紀子に金メダルを取らせようとした女性コーチが、紀子に殺人の罪を被せようとするのは矛盾のような気がするが、ちょっと調べてみたところ、罪を犯してもメダルが剥奪されるようなことはないらしい。恋人を射殺した容疑で逮捕されて有罪が確定したパラリンピックのアスリートがいたが、メダルは剥奪されていない。日本でもとある柔道選手が罪を犯して服役したが、メダルは剥奪されなかった(栄典・賞詞などはすべて剥奪された)。
また、放送直後から「フィギュアスケートの審査は、最高点と最低点をつけた審査員の評価は除外するので、審査員1人に八百長工作したところで意味がない」という至極もっともなツッコミがSNSにいくつかあった。紀子が審査員全員と寝ているのなら、それはそれで壮絶な話だったが……。
結局、紀子は記者会見ですべてを白状し、その後、女性コーチは逮捕された。
なにより、女性が体を売って点数を稼ぐというメインストーリーの中で、女性の主人公に「枕した?」と言わせるのは何なんだろう? コンセプトに合っていない脚本と演出が多すぎて頭が痛くなる。第4話はセレブママのご近所トラブルの話。今夜10時から。
(大山くまお)
「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」
脚本:倉光泰子、三浦駿斗
音楽:SOIL&"PIMP"SESSIONS、田熊理秀、ハセガワダイスケ
主題歌: YUKI「やたらとシンクロニシティ」(エピックレコードジャパン)
プロデュース:貸川聡子(共同テレビ)、櫻井雄一(ソケット)
演出:関和亮、横尾初喜、山岸聖太、戸塚寛人
制作著作:共同テレビ