マキシマムザホルモンの「2号店」募集が話題になっている。ホルモンの曲を使って「本店」とは別にライブ活動するグループを募集するというあまりにも型破りな企画に驚いて、公式サイトを上から下まで何度も読み直した人もきっと少なくないだろう(私は3回ぐらい読み直した)。
発表されている2号店のイメージ写真もなかなかだが「希望パートはすべて自由、ギター、ベース、ドラム、ボーカルもそれ以外でもOK!」という思いきったキャッチコピーも印象深い。どういうメンバーが集まるのだろうとワクワクしながら読んでいるうちに、なんだかバンド界隈で有名な“あの募集”を思い出した。
そう、「当方ボーカル、ギター、ベース、ドラム急募!」という募集である。
バンドメンバー募集の時になにかと敬遠されがちな「当方ボーカル」募集だが、実際のところ、全パートを募集している当方ボーカルは本当に多いものなのだろうか? そこで今回のテーマは「バンドのメンバー募集」にまつわる数字を見ていきたい。
今回は国内最大級のバンドメンバー募集サイト「OURSOUNDS」を参考にデータを出した。調査量が多くなってしまったため、地域を東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・愛知県での募集のみに絞っている。
ちなみに余談だが、インターネットが今ほど使われていなかった頃は、メンバー募集といえば「下にメールアドレスが大量に書かれており、切り込みにそってちぎると持って帰れるチラシ」という、およそメンバー募集のときにしか見たことがない独自スタイルのチラシがスタジオやライブハウスにばら撒かれていた。
今回の調査にあたって「あのチラシをどうやって手に入れたらいいのかな……」と思っていたが、当たり前だが現代の日本社会ではメンバー募集はネットで行われるようになっており、チラシを集める必要はまったくなかった。
考えてみれば至極当然のことなのだが、かつて栄華を極めたあのチラシがいつの間にか時代とともに役目を終えていることを知り、少し寂しい気持ちになったことをここで報告しておきたい。
それでは本題に話を戻そう。「当方〇〇、他全パート募集」しているバンドマンを、パートごとに出してみたのが以下である。
1位 ボーカル(10代:14%、20代:58%、30代:17%、40代以上:11%)
2位 ギター(10代:11%、20代:48%、30代:22%、40代以上:20%)
3位 ベース(10代:9%、20代:48%、30代:25%、40代以上:18%)
4位 ドラム(10代:7%、20代:44%、30代:28%、40代以上:21%)
※少数以下四捨五入
パート別に見てみると、最も多いのはやはりというべきか「当方ボーカル、他全パート募集!」である。しかし、意外にも「当方ギター、他全パート募集!」も負けず劣らずかなり多い。
また、年齢別に見てみると10代・20代は「当方ボーカル」「当方ギター」が多いようで、それより上の年齢になると「当方ベース」などが多くなる。
さらに言えば、40代以上になると「当方ボーカル」はついに「当方ドラム」をも下回り、主要4パートの中では最も少なくなってしまう。もしかすると、ある程度の年代を超えてしまうと「当方ボーカル」は敬遠どころか、むしろ引く手あまたなのではないか、というのが私の中での仮説である。
次に、当方ボーカルの方々に人気がある音楽ジャンルを見てみたい。こちらも年代別で出したところ、やはりそれぞれの年代の特徴がでる結果となった。
最も人気なのは各年代ともに「ロック」、次いで「ポップス」が2位である。しかし、3位以下は各年代によって微妙にランキングにズレがある。
10代を見てみると、約1割の当方がアニソン・ボカロのボーカルを志望している。が、アニソン・ボカロは30代と40代には最も志望されていないジャンルであり、特に40代では壊滅的と言っていいほど数字が低い。アニソンやボカロというジャンルが、正真正銘「若者の音楽」となっていることがよくわかる数字だと思う。
20代は全世代で唯一「ビジュアル系」がランクイン。こちらは、楽器以外の部分にもお金をかけがちなジャンルなこともあるのか、働き盛りの20-30代に特に人気のようであった。
また、10代・20代に志望されていないジャンルの方を見てみると「ボサノバとラテンが一体何をしたっていうんだ...」と思わずにいられないほど、このジャンルは若年層に人気がない。人気がないというよりは認知がないの方が正しいのかもしれないが、個人的にラテンは比較的好きなジャンルなので、関係者各位にはぜひ頑張って欲しい所存である。いつか中高生が「よう、バンドやろうぜ! ボサノバで」と声をかけあう日が来るのをひっそりと願うばかりだ。
それでは最後に、ボーカル志望のバンドマンに人気のアーティストを見てみよう。
メンバー募集の掲示板には、好きなアーティストを書く欄がある。プロフィール欄に書いてあるアーティストが必ずしもその人の一番好きなアーティストだとは限らないものの、少なくともバンドを始めるきっかけになった「憧れの存在」ではあるはずである。
では、そういう「ボーカリストの憧れ」となっているアーティストは一体誰なのだろうか?
過去ロックインジャパンフェスに出演したアーティストを対象に調べた「ボーカル志望者に最も憧れられている邦楽ロックアーティスト」の結果を見てみよう。
1位:ONE OK ROCK
2位:椎名林檎
3位:RADWIMPS
4位:BUMP OF CHICKEN
5位:Mr.Children
6位:UVERworld
7位:ELLEGARDEN
8位:YUI
9位:スピッツ
10位:SiM
栄えある1位は、新アルバムで話題沸騰のONE OK ROCK。もはやボーカル志望者に限らず、全方位のロックファンに人気のような気もするが、確かにTakaに憧れてボーカルを志す気持ちはわかるので、個人的にはかなり納得のいく結果である。
また、2位につけたのは女性からの圧倒的な支持を受けた椎名林檎。ちなみに、今回の調査対象から外れていたのでランキングには入っていないが、椎名林檎がボーカルを務める東京事変も人気が強く、数字としてはBUMP OF CHICKENに次ぐ5位であり、事実上のダブルランクインとなっていた。
その他のアーティストもそうそうたるラインナップになっており、個人的には納得しかないランキングなのだが、強いて挙げるなら長期の活動休止を経てなお7位にランクインしているELLEGARDEN、モンスター級に人気が根強いバンドだと思う。今年のフジロックへの出演も決まり、エルレを通じて一層「バンドやりたい!」という人が増えれば何よりだなと思っている。
ちなみに、ここに挙がらなかった主なアーティストにも触れておくと、米津玄師や星野源らシンガーソングライターは、バンドで演奏するイメージが薄いのかそれぞれ22位および49位となっており、いずれも知名度に比べるとバンド志望者は少ない結果となっていた。
今回は、邦楽アーティストだけでなく、過去フジロックもしくはサマーソニックでヘッドライナーを務めたアーティストを対象に「ボーカル志望者に最も憧れられている洋楽ロックアーティスト」も出してみた。
1位:オアシス
2位:リンキン・パーク
3位:レディオヘッド
4位:クイーン+アダム・ランバート
5位:レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
6位:グリーン・デイ
7位:メタリカ
8位:ミューズ
9位:ウィーザー
10位:コールドプレイ
洋楽部門の1位はUKロックの雄・オアシス。その他競合アーティストおさえての完勝である。
また、映画「ボヘミアン・ラプソディ」で人気が再燃しているクイーン(もしくはクイーン+アダム・ランバート)も4位と好順位にランクイン。さらに、今年のサマソニへの出演が決まって話題となったレッチリも5位につけており、バンド志望者への強い人気を伺わせる結果となった。
それでは、今回の調査はここまでである。なかなか気の合うメンバーと出会うことが難しいと言われるメンバー募集だが、Aqua TimesやSUPERCARなど、サイトやチラシでのメンバー募集を通じて結成され、大きな人気を得たバンドも少なくないので、現在メンバーを募集している方はぜひ頑張って欲しいと思う。どうぞ良い出会いがありますように!
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
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発表されている2号店のイメージ写真もなかなかだが「希望パートはすべて自由、ギター、ベース、ドラム、ボーカルもそれ以外でもOK!」という思いきったキャッチコピーも印象深い。どういうメンバーが集まるのだろうとワクワクしながら読んでいるうちに、なんだかバンド界隈で有名な“あの募集”を思い出した。
そう、「当方ボーカル、ギター、ベース、ドラム急募!」という募集である。
バンドメンバー募集の時になにかと敬遠されがちな「当方ボーカル」募集だが、実際のところ、全パートを募集している当方ボーカルは本当に多いものなのだろうか? そこで今回のテーマは「バンドのメンバー募集」にまつわる数字を見ていきたい。
「当方〇〇、他全パート募集!」は実際どれくらいあるのか
今回は国内最大級のバンドメンバー募集サイト「OURSOUNDS」を参考にデータを出した。調査量が多くなってしまったため、地域を東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・愛知県での募集のみに絞っている。
ちなみに余談だが、インターネットが今ほど使われていなかった頃は、メンバー募集といえば「下にメールアドレスが大量に書かれており、切り込みにそってちぎると持って帰れるチラシ」という、およそメンバー募集のときにしか見たことがない独自スタイルのチラシがスタジオやライブハウスにばら撒かれていた。
「下にメールアドレスが大量に書かれており、切り込みにそってちぎると持って帰れるチラシ」(C)エキサイトミュージック
今回の調査にあたって「あのチラシをどうやって手に入れたらいいのかな……」と思っていたが、当たり前だが現代の日本社会ではメンバー募集はネットで行われるようになっており、チラシを集める必要はまったくなかった。
考えてみれば至極当然のことなのだが、かつて栄華を極めたあのチラシがいつの間にか時代とともに役目を終えていることを知り、少し寂しい気持ちになったことをここで報告しておきたい。
それでは本題に話を戻そう。「当方〇〇、他全パート募集」しているバンドマンを、パートごとに出してみたのが以下である。
【パート別】「当方〇〇、他全パート募集」は実際どれくらいあるのか(C)エキサイトミュージック
1位 ボーカル(10代:14%、20代:58%、30代:17%、40代以上:11%)
2位 ギター(10代:11%、20代:48%、30代:22%、40代以上:20%)
3位 ベース(10代:9%、20代:48%、30代:25%、40代以上:18%)
4位 ドラム(10代:7%、20代:44%、30代:28%、40代以上:21%)
※少数以下四捨五入
パート別に見てみると、最も多いのはやはりというべきか「当方ボーカル、他全パート募集!」である。しかし、意外にも「当方ギター、他全パート募集!」も負けず劣らずかなり多い。
ベースやドラムと比べると、比較的どちらも初心者が始めやすいパートだから、というのが関係しているのかもしれない。
また、年齢別に見てみると10代・20代は「当方ボーカル」「当方ギター」が多いようで、それより上の年齢になると「当方ベース」などが多くなる。
さらに言えば、40代以上になると「当方ボーカル」はついに「当方ドラム」をも下回り、主要4パートの中では最も少なくなってしまう。もしかすると、ある程度の年代を超えてしまうと「当方ボーカル」は敬遠どころか、むしろ引く手あまたなのではないか、というのが私の中での仮説である。
当方がボーカルを務めたい/務めたくない音楽ジャンルは何か
次に、当方ボーカルの方々に人気がある音楽ジャンルを見てみたい。こちらも年代別で出したところ、やはりそれぞれの年代の特徴がでる結果となった。
【年代別】当方がボーカルを務めたい音楽ジャンルランキング(C)エキサイトミュージック
最も人気なのは各年代ともに「ロック」、次いで「ポップス」が2位である。しかし、3位以下は各年代によって微妙にランキングにズレがある。
10代を見てみると、約1割の当方がアニソン・ボカロのボーカルを志望している。が、アニソン・ボカロは30代と40代には最も志望されていないジャンルであり、特に40代では壊滅的と言っていいほど数字が低い。アニソンやボカロというジャンルが、正真正銘「若者の音楽」となっていることがよくわかる数字だと思う。
20代は全世代で唯一「ビジュアル系」がランクイン。こちらは、楽器以外の部分にもお金をかけがちなジャンルなこともあるのか、働き盛りの20-30代に特に人気のようであった。
また、10代・20代に志望されていないジャンルの方を見てみると「ボサノバとラテンが一体何をしたっていうんだ...」と思わずにいられないほど、このジャンルは若年層に人気がない。人気がないというよりは認知がないの方が正しいのかもしれないが、個人的にラテンは比較的好きなジャンルなので、関係者各位にはぜひ頑張って欲しい所存である。いつか中高生が「よう、バンドやろうぜ! ボサノバで」と声をかけあう日が来るのをひっそりと願うばかりだ。
ボーカル志願者の憧れ「ワンオク」「椎名林檎」
それでは最後に、ボーカル志望のバンドマンに人気のアーティストを見てみよう。
メンバー募集の掲示板には、好きなアーティストを書く欄がある。プロフィール欄に書いてあるアーティストが必ずしもその人の一番好きなアーティストだとは限らないものの、少なくともバンドを始めるきっかけになった「憧れの存在」ではあるはずである。
では、そういう「ボーカリストの憧れ」となっているアーティストは一体誰なのだろうか?
過去ロックインジャパンフェスに出演したアーティストを対象に調べた「ボーカル志望者に最も憧れられている邦楽ロックアーティスト」の結果を見てみよう。
ボーカル志願者に最も憧れている邦楽ロックアーティスト TOP10(C)エキサイトミュージック
1位:ONE OK ROCK
2位:椎名林檎
3位:RADWIMPS
4位:BUMP OF CHICKEN
5位:Mr.Children
6位:UVERworld
7位:ELLEGARDEN
8位:YUI
9位:スピッツ
10位:SiM
栄えある1位は、新アルバムで話題沸騰のONE OK ROCK。もはやボーカル志望者に限らず、全方位のロックファンに人気のような気もするが、確かにTakaに憧れてボーカルを志す気持ちはわかるので、個人的にはかなり納得のいく結果である。
また、2位につけたのは女性からの圧倒的な支持を受けた椎名林檎。ちなみに、今回の調査対象から外れていたのでランキングには入っていないが、椎名林檎がボーカルを務める東京事変も人気が強く、数字としてはBUMP OF CHICKENに次ぐ5位であり、事実上のダブルランクインとなっていた。
その他のアーティストもそうそうたるラインナップになっており、個人的には納得しかないランキングなのだが、強いて挙げるなら長期の活動休止を経てなお7位にランクインしているELLEGARDEN、モンスター級に人気が根強いバンドだと思う。今年のフジロックへの出演も決まり、エルレを通じて一層「バンドやりたい!」という人が増えれば何よりだなと思っている。
ちなみに、ここに挙がらなかった主なアーティストにも触れておくと、米津玄師や星野源らシンガーソングライターは、バンドで演奏するイメージが薄いのかそれぞれ22位および49位となっており、いずれも知名度に比べるとバンド志望者は少ない結果となっていた。
ボーカル志願者の憧れ 洋楽では「オアシス」「リンキン」
今回は、邦楽アーティストだけでなく、過去フジロックもしくはサマーソニックでヘッドライナーを務めたアーティストを対象に「ボーカル志望者に最も憧れられている洋楽ロックアーティスト」も出してみた。
ボーカル志願者に最も憧れている洋楽ロックアーティスト TOP10(C)エキサイトミュージック
1位:オアシス
2位:リンキン・パーク
3位:レディオヘッド
4位:クイーン+アダム・ランバート
5位:レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
6位:グリーン・デイ
7位:メタリカ
8位:ミューズ
9位:ウィーザー
10位:コールドプレイ
洋楽部門の1位はUKロックの雄・オアシス。その他競合アーティストおさえての完勝である。
また、映画「ボヘミアン・ラプソディ」で人気が再燃しているクイーン(もしくはクイーン+アダム・ランバート)も4位と好順位にランクイン。さらに、今年のサマソニへの出演が決まって話題となったレッチリも5位につけており、バンド志望者への強い人気を伺わせる結果となった。
それでは、今回の調査はここまでである。なかなか気の合うメンバーと出会うことが難しいと言われるメンバー募集だが、Aqua TimesやSUPERCARなど、サイトやチラシでのメンバー募集を通じて結成され、大きな人気を得たバンドも少なくないので、現在メンバーを募集している方はぜひ頑張って欲しいと思う。どうぞ良い出会いがありますように!
■まいしろ
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