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桜の季節が到来している。春といえば出逢いと別れの季節だが、皆さんはどちらをイメージするだろうか。
この時期になると、音楽ランキングで目立ち始めるのが「桜ソング」だ。桜をテーマにした曲はとにかく多く、“ひゅるりーら”というコーラスが印象的なケツメイシの「さくら」から、いきものがかりの1stシングル「SAKURA」まで大ヒット曲も珍しくない。
音楽を数字で見ていく本連載、今回はJ-POPの春の風物詩「桜ソング」を調べたい。
今回の調査にあって、当初は日本に存在する「さくら」というタイトルの曲すべてを調べてみるつもりだった。が、実際に音楽著作権団体のJASRACとNEXTONEで調べたところ、登録されているだけで876曲も「さくら」という曲があることが判明し、「さすが100円玉の表に描かれているだけある花だなぁ」と感心しつつこの計画は断念した。ゆえに、以下のデータはレコチョクが発表している「おすすめ桜ソング」を参考としたものである。
桜ソングはどれくらい出逢い、どれくらい別れているのか
桜ソングといえば、テーマは「出逢いと別れ」だ。3月から4月にかけて、卒業・入学・入社などが重なることもあり、何かと頻発されるこの「出逢いと別れ」というフレーズだが、実際に桜ソングはどれくらい出逢い、どれくらい別れているのかを調べてみた。

桜ソングはどれくらい出逢い、どれくらい分かれているのか(C)エキサイトミュージック
結果として、桜ソングは圧倒的に「別れ」を歌ったものが多かった。ただ、別れの中にも少しグラデーションがあり、元恋人への思いを歌った西野カナ「SAKURA, I love you?」のような、失恋を歌ったものはより“別れ感”を感じる。
こういった失恋系の桜ソングは、歌詞の中に「もう二度と会えない」「あの頃には戻れない」といったフレーズもふんだんに使われており、今生の別れを歌っている場合が多い。さらに、歌詞の中で桜もかなり散っている。
逆に、同じ「別れ」を歌ったものでもテイストが違うのが「旅立ち」を歌った曲である。
これは森山直太朗「さくら(独唱)」などが該当するが、こういった曲は「もう一度会おうね」「また会えるよね」と再会を念押ししている曲が多く、往々にしてまた会えそうな雰囲気が漂っている。比較的桜も咲いている場合が多く、同じ花を歌ったものでもどの時期を切り取るかにやや違いがあることが伺える。
また、全体のうち約20%しかない「出逢い」の曲は、河口恭吾「桜」などが該当する。これは便宜上「出逢い」に分類したものの、正確に言えばもともと出逢っていた人と桜を見に行きている場合がかなり多く、純粋に初めての人との「出逢い」を歌った曲はほぼなかったというのが桜ソングの実態であった。
桜ソングはいつリリースされているのか
桜ソングの歌詞テーマを見たところで、次に音楽的な「桜の開花時期」がいつなのかを見てみよう。今回対象とした曲が1月から3月のうち、いつリリースされたのかをまとめてみる。

桜ソングはいつリリースされているのか(C)エキサイトミュージック
1月下旬:7.7% 少しずつ咲き始める
2月上旬:3.8% いきなり咲かなくなる
2月中旬:19.2% 2週間かけてゆっくりと咲きはじめる
2月下旬:15.4% 1週間で集中的に開花、かなりの開花ラッシュ
3月上旬:15.4% 1週間で集中的に開花、満開の見頃
3月中旬:11.5% 遅めの桜が見頃をむかえる
3月下旬:5.8% オフシーズン
※その他:21.2%
結果を見ると、1月下旬から次第に早めの桜ソングがリリースされ始め、2月末〜3月頭に「J-POPの桜の見頃」をむかえるようだ(実際、桜ソングの3分の1がこの時期に発売されている)
ちなみに、ソングではない本物の桜が見頃となるのは、一般的に3月下旬〜4月上旬にかけてなので、約1ヶ月前にリリースされることが多いといえるだろう。
また、数は少ないものの、時期に関係なくリリースされる桜ソングも存在する。宇多田ヒカル「SAKURAドロップス」は葉桜も終わりをむかえる5月にリリースされているほか、高い知名度を誇るコブクロ「桜」は11月リリースの曲である。発売時期にかかわらず、愛される曲は愛されるということがよくわかる例だろう。
J-POPでよく咲く花は? 最も多いのは「さくら」だった
ここまで「桜」について調べてきたが、最後は少し趣向を変えて「J-POPでよく咲く花が何か」を見てみたい。これについては音楽著作団体JASRACとNEXTONEに登録されている日本の商業曲をもとに、主要な花をタイトルにしている曲の数を、調べてみた。

J-POPでよく咲く花は何かランキング(C)エキサイトミュージック
1位 さくら 876曲
2位 ひまわり 636曲
3位 あじさい 360曲
4位 コスモス 276曲
5位 ばら 115曲
結果、桜の完勝である。
そのほかも誰もが名前を知っている花が並んではいるものの、圧倒的に「さくら」が多い。ちなみにこれは「さくら」というタイトルの曲だけであり、福山雅治「桜坂」、AKB48「10年桜」のような変化球タイトルの曲は除いているので、こういった広義の桜ソングも含めるとさらに数は多いはずだ。
また、2位にはひまわりソングが登場。具体的にはMr.Children「himawari」やSEKAI NO OWARI「向日葵」などが挙げられるが、童謡の曲名としても人気のようで、桜に次ぐ人気を誇る結果となった。
意外にも下位につけたのがばらソング。「薔薇のような~」「~の薔薇」といったタイトルが多いためか人気のように思えたのだが、端的に「ばら」というタイトルの曲は少ないようで、さくらの8分の1ほどの数となった。今後もし花の名前をタイトルにしようと思った際は、この知識を役立てていただければ幸いだ。
ちなみに、今年の桜は東京3月21日、大阪3月26日に開花予定となっている。既に桜を楽しんでいる方もいるかと思うが、その際はぜひJ-POP名物「桜ソング」とともに花見を楽しんでもらえれば幸いだ。
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
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