MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露

MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露

MUCCというバンドの音楽的好奇心の旺盛さと、20年を超える活動歴のなかで彼らが身に付けてきた咀嚼力のすごさ。日本が令和という時代を迎えた最初の夜、それを存分に見せつけられた。

現時点における彼らの最新作は、去る2月13日に発売された『壊れたピアノとリビングデッド』。キーボード奏者の吉田トオルを期間限定メンバーとして迎え、鍵盤ありきの発想によるコンセプト・アルバムとして制作された作品であり、ゾンビを連想させるリビングデッドという言葉は、生を受けつつもしばらくお蔵入りの状態にあった楽曲のいくつかが今作をもって世に放たれた事実を指している。

この作品を携えながら、彼らは2月半ばから4月1日にかけて名古屋、大阪、東京を巡演する全4公演のZeppツアーを実施しているが、5月の到来とともに幕を開けたのは、同様に三大都市をめぐる『壊れたピアノとリビングデッドfeat.殺シノ調ベ』と銘打たれたホール・ツアーである。今回も全4公演という限られた本数であるだけに、ファンの多くは、何か特別な趣向が凝らされたものになるのではないか、との期待感を膨らませながら会場を訪れていたに違いない。

しかも今回の公演タイトルには『殺シノ調ベ』というキーワードも含まれているのだ。これは彼らがセルフ・カヴァー・アルバムの表題として掲げていた言葉であり、さらに言えばBUCK-TICKという先達から受け継がれたものでもある。そうした公演名からも、この場で最新作からの楽曲群がたっぷりと披露されるのみならず、バンドの歴史を彩ってきたさまざまな楽曲が今現在の切り口によって再構築されるであろうことは、ある意味、容易に想像可能ではあった。が、重要なのは、実際のライヴがそうした想定を遥かに上回るものだったことだ。

館内が暗転したのは、開演予定時刻の午後6時を20分ほど経過してからのこと。最新作の幕開けを飾っていたミステリアスな“壊れたピアノ”が流れると、まず吉田が登場してピアノを弾き始め、SATOち、YUKKEがそこに加わって各々の音を重ねていく。続いて登場したミヤはギターを抱えるのではなく鍵盤の前へ。さらにステージ後方上部には4名の女性たちが登場。去る2017年、結成20周年記念ツアーの際にも花を添えていた弦楽隊、Killer's Orchestraの面々だ。加えて、舞台の両脇に設えられた不気味な処刑台にも男女のヴァイオリン奏者が姿を現す。しかもそこで奏でられていたのはBUCK-TICKの“ICONOCLASM”の調べ。あまりにも情報量の多いその幕開けに、筆者はめまいをおぼえそうになった。

MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露

MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露

MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露

MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露


満を持して現れた逹瑯がステージ中央へと歩み出る。彼が「始めようぜ」と呼びかけた頃、ミヤはすでにギターを手にして戦闘態勢を整えていた。そして『壊れたピアノとリビングデッド』の冒頭の展開と同様に“サイコ”が爆裂。きわめてヘヴィなバンド・サウンドに鋭利なストリングスの切れ味が絡んだ音の洪水のなかで、フロントの3人と処刑台上のヴァイオリン奏者たちが、何かから解き放たれたかのように暴れ始める。ステージの背景は、一面に大きく描かれた最新作のアートワーク。目に飛び込んでくるその光景は地獄絵図のようでも、アミューズメントパークで過激な音楽活劇が繰り広げられているようでもある。とにかく圧倒的と言うしかない

以降のステージ上での時間の流れについて必要以上に細かく追っていくことは、これから名古屋(5月19日)、大阪(6月9日:言わずと知れた“MUCCの日”である)でこのライヴを観ることになる人たちのためにも避けておきたい。ただ、このバンドが未成熟だった時代から今現在に至るまでの間に提示されてきたさまざまな楽曲たちが、過去最強の説得力と実験精神をもって次々と披露されていくさまが、きわめて音楽的な興奮に満ちたものだったことは間違いない。

彼らの楽曲のなかには、狭苦しいアパートの一室のようなリアルな閉塞感こそが持ち味といえるものもあれば、大河の流れのようにゆったりとした果てしなさを伴うものもある。それほどまでに各曲の持つ世界観の広さに差異があり、なおかつ総計6人の弦楽隊と交わりながら奏でられる曲もあれば、4人プラス吉田の鍵盤だけで披露される曲もあるという具合なのに、不思議なくらいギクシャクとした感じがない。しかもそうした落差の大きな楽曲群が、演奏上都合のいい順序に並べられているというわけでもない。こんなライヴが成立し得たのは、まずは楽曲そのものに力があるからだろうし、各楽曲の特性をとことん知り尽くしたメンバーたちが、今日に至るまでに経てきた幾多の実験や冒険を通じて得てきたものを噛み砕いて消化し、その間に育まれてきた英知を即時的に活かす術を身に付けてきたからこそであるはずだ。音楽的多様性の面白さのみならず、実際、そうしたバンドならではの力技のすごさを感じさせられるライヴだった。

MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露

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当然ながら、もっと具体的な意味で象徴的な場面もふんだんにあった。新たな代表曲のひとつにも数えられそうな“自己嫌悪”で、ミヤがギターを武器に次々とメンバーたちを攻撃していく光景からは、この楽曲の根底にある感情的混沌が見えてくるようにも思えたし、そのミヤの弾くピアノに合わせて逹瑯が歌った“積想”もクライマックスのひとつに数えられる。彼がランタンに息を吹きかけて火を消した同曲のラスト・シーンも印象的だった。スクリーンに映し出された大きな月を背にミヤと吉田が奏でたベートーヴェンの“月光”も新時代の幕開けを飾るに相応しいおごそかな空気を感じさせたし、その月が徐々に霞み、雨音が激しくなっていくなかで“雨のオーケストラ”が披露されるという流れも見事だった。

そうした音楽的な起伏のきわめて大きなライヴは、最終的にはそこが整然とした大ホールであることを忘れさせるような、むしろライヴハウス的な一体感を伴いながらの二度にわたるアンコールを経て終着点に至った。しかし同時に、演出面の充実ぶりや音楽的情報量の多さ、スケールの大きさといった意味においては、それは平均的なホール公演を遥かに超越する規模感のものでもあった。こうしたある種の過剰さもまた、MUCCの大きな魅力のひとつだといえるだろう。

そしてひとつ付け加えておきたいのは、翌日に同じ中野サンプラザで行なわれた東京公演第二夜も大盛況のうちに終わったということ。加えてそのステージ上、6月9日のグランキューブ大阪公演が映像化されることが逹瑯の口から発表されている。発売時期などはまだ明かされていないが、こちらについても続報を待ちたいところだ。

MUCCが令和最初のライブで鍵盤+弦楽隊との合体による必殺曲披露


前述の通り、この公演はこの先、名古屋と大阪でも開催され、7月以降のMUCCはさらに全国各地で“壊れたピアノ”とともに“殺シノ調べ”を奏でていくことになる。元号が令和に変わり、このバンドが生まれ育った平成という時代が過去形になろうと、どうやら彼らが攻撃の手を緩めることはなさそうだ。今後の重層的なライヴ活動を経ていくなかで、この音楽がさらなる深化を遂げ、彼ら自身にとっても未知の新たな何かが生まれてくることを期待したい。
(取材・文/増田勇一、撮影/西槇太一)

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2019年5月9日の音楽記事

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