天月-あまつき-、大阪城ホールで覚悟新たに「みんながいるんだからさ、最強に決まってんだろ!!」
撮影:SARU(SARUYA AYUMI)

活動10周年を迎え、7月27日に10th Anniversary LIVE「The StarLight Seeker-prologue-」、28日にはLIVE「天月がいつもお世話になっております。」をパシフィコ横浜国立大ホールで開催した天月-あまつき-(以下、天月)。そして7月31日には、『The StarLight Seeker』本編として、自身初となる大阪城ホール単独公演を成功させた。
今回は、同公演の模様をレポートする。

キャラクター・正宗によるナレーションムービーが終わると、ストーリー仕立てのイラストムービーが始まった。「自分のことを好きになれるように変わりたい」と願う少年と、「嬉しい」「楽しい」といった感情を浴びることで育つ不思議な種。これらが、宇宙旅行へと出発する。なおムービーはこの後も随所で挟み込まれ、ライブとともにストーリーも進行していく形だった。

ムービーのテーマの通り、今日のステージセットはさながら宇宙旅行だ。
背景には天体のごとく、キラキラの照明が散りばめられている。そしてラブレター、額縁、きのこ、鳥かごといったセットは、これまでの彼のアートワークにも使われていたもの。それだけで10年の歩みを感じるが、今回はバンドメンバーもこれまでの人数にプラス2人を迎え8人という厚い構成だ。

アルバム『箱庭ドラマチック』から「流れ星」のイントロが始まると同時に、センター正面から天月が登場。白いシャツに黒いリボンタイ、ベージュのロングベストとフォーマルかつ華やかなスタイルだ。「ようこそ! 10th Anniversary LIVE Tour『The StarLight Seeker-』、大阪城ホールだ! よろしく!」と叫んだ天月の表情は、いつにも増して晴れ晴れとしている。
これまでの公演の登場時には多少の緊張感をまとっていたが、今日は何かが吹っ切れたような、迷いのない表情にみえた。

「めちゃくちゃ楽しくなる予感しかしないだろ!」といたずらっぽく誘うと、「シューティングスター」へなだれ込む。「それぞれ別の人生を歩いてきてるなかで、今日ここにたくさんの人が集まってる。奇跡みたいなものです! 楽しむぞ!」と喜びを叫び、最高のステージを約束した。
天月-あまつき-、大阪城ホールで覚悟新たに「みんながいるんだからさ、最強に決まってんだろ!!」
撮影:SARU(SARUYA AYUMI)

ロングカーデベストをまとった天月ダンサーたちが登場すると、ライブの定番曲「Sing!Swim!Swing!」を披露。振り付けのレクチャーはなくとも、オーディエンスのダンスは完璧だ。
天月自身も片手にマイクを持ったままダンスを披露し、<すっごいスキ!>では顔を傾けながら可愛らしく、<みてよ>では笑顔に低音ボイスで、観客を翻弄していく。「月曜日の憂鬱」では客席を指差す仕草や、ほっぺに手を当てるお茶目な仕草で和ませつつ、<君推し!>の歌詞を<大阪城推し!>に変えるアドリブで楽しませてくれる。

続いては、久々の「星月夜」を披露。パステルな配色のシャツ・ズボンに白い羽織をまとい、同じく白い番傘を携えた和洋折衷スタイルで登場した。柄に右手を乗せ、気だるげに歌う傘越しの横顔はどこか扇情的ですらある。この曲は、大阪夏の陣を描いた舞台「幻の城」(2015年)に天月が出演した際に、主題歌として歌ったもの。
今回大阪城ホールでライブをするに当たって、彼自身強いこだわりを持ってセットリストに加えたそうだ。

「僕がいろんな曲を歌うのは、いろんな自分を見せたいという気持ちがあるのと同時に、みんながいろんな期待をしてくれるから。いつも僕の選択肢を増やしてくれてる」と感謝を述べた天月は、ステージ上手側からトロッコに乗り込み、センターステージへ移動。そんな彼の姿に、リスナーは今日一番の盛り上がりを見せた。

トロッコに移動して披露されたのは、ファンの人気も高い楽曲「夜明けと蛍」。360度から視線を浴びながら歌う姿は、まさしく懸命に輝く蛍のよう。
ぽつぽつと降り落ちるようなピアノの柔らかいスタッカートと天月の高音が儚く響き、1万人の心に様々な感情を湧き起こしていた。

ステージにおける彼の求心力の強さは、パフォーマンスをするために生まれた存在と評したくなるほどだ。しかし彼は、高校を卒業する頃までは音楽活動をしていない、ごく普通の少年だった。ネットがなければ、ニコニコ動画がなければ、“歌ってみた”という文化がなければ。そして、彼自身が、それらに興味を示さなければ、我々は天月の音楽を聞くことはなかったし、ましてや今日この場所に1万人が集うこともなかった。ペンライトを振るリスナーたちの満面の笑みを見ながら、その奇跡の積み重ねに感謝せずにはいられない。

天月-あまつき-、大阪城ホールで覚悟新たに「みんながいるんだからさ、最強に決まってんだろ!!」
撮影:SARU(SARUYA AYUMI)

後編に入ると、雰囲気が一転。今年6月に両A面シングルの一曲として発表された「Ark」、さらに「マリオネットラヴァーズ」と激しいナンバーを畳み掛け、力のこもった歌声で会場を荒々しく沸かせる。

ここで、ラッパーで歌い手のnqrseがサプライズ登場。27日のパシフィコ横浜公演で登場していたnqrseは、同公演後に急遽本日の出演を決めたという。そのフットワークの軽さこそ、彼らの間にある長年の友情が成すもの。バンドメンバー・ダンサー陣の臨機応変なサポートにも恵まれ、今日この日の出演が叶った。nqrseが「遊びに来たぜ大阪!」と挑発的なハスキーボイスを響かせると、赤一色だったペンライトは半分ほどがピンク色に染まり、ゲストを歓迎する。天月、nqrseは「ヒロイックシンドローム」、そして共作「This Night」で息のぴったり合ったステージングを披露した。

貴重なコラボレーションを堪能したあとは、怪しげなベースラインが誘う新曲「儚きゴースティング」。ジャジーな曲調に酔いしれつつ、天月が歌いこなす曲の幅に改めて脱帽する。

ストーリームービーも佳境だ。少年は青いバラを手にしたことで、種の正体が、子供の頃に作り出した空想上の友達だったということを思い出す。そしてこの種の成長は、旅で出会った人たちからもらった愛の形そのものだという。そう、このムービーは、天月のこれまでの軌跡を表した物語だった。

そんな文脈があって披露された「ホシアイ」だからこそ、いつもと違って聞こえたのは偶然じゃないだろう。青地に黄色の装飾が施された正装風のジャケットへと着替えた天月は、最後まで丁寧に歌い上げると、ちょっと照れくさそうにはにかんだ。

「コスモノート!」というタイトルコールで、パッと余韻から引き戻される。腕を大きく振り歌う彼の姿に魅了された客席も、輝く幾千のペンライトで応えていた。ちなみに同曲は公演後、活動10周年を記念して録り直されたリアレンジ動画が公開されている。天月は、続く『アストロスト』で宮田'レフティ'リョウが描いた三部作を完結させた。

「最後の曲です」と告げ、自身によるギター演奏とともに放たれたのは「スターライトキセキ」。かつて“終末の夜”を願っていたのは、きっと天月だけじゃない。ここに集まったリスナーのなかには、天月と出会ったことで、生きることを選んだ人もいることだろう。様々な想いをまとった会場中のシンガロングが、本編の締めくくりを彩った。

アンコールで登場した天月は、2018年の日本武道館公演を振り返りつつ、今日までに起こっていた彼自身の心境の変化を言葉にした。

「僕にとって武道館は、集大成のライブになると思ってた。ワクワクもあれば、不安もすごくあって、武道館でライブをやったら、天月は終わっちゃうんじゃないかって怖かった。この先武道館よりすごいものができる自分が全然見えなくて。『みんなも満足して、もう来てくれなくなっちゃうんじゃないか』という恐怖があった。でも蓋を開けて見たら、武道館の後にはツアーもできて、シングルの発売もあって、そして今回の大阪城ライブ。わからないなりに手探りで、でも間違いなく前へ進んでいる気持ちで、今日ここに立ってます。今はすっごくワクワクしてるんですよ」

武道館という大きな挑戦、そしてその後にさらに待っていたたくさんのチャレンジ。それらを経て、自身も新たなステップへ進んだ手応えがあったのだろうか。

「アーティストは変わり続けながら、それでも変わらない想いでいなきゃいけない。僕は楽しんでそれをできているつもり。だって僕にはたくさん素敵な曲を作ってくれる友人、お世話になっている方々、素敵な音を奏でてくれるバンドメンバー、素敵なダンスを踊ってくれるダンサー、イラストレーターさんや動画クリエイターさん、スタッフさん、そして何よりここで楽しんで声を上げてくれるみんながいるんだからさ、最強に決まってんだろ!」

丁寧に言葉を選びながら感情を吐露し、改めてリスナーと心をひとつにした天月が最後に歌ったのは「きっと愛って」。天月からリスナーへ、リスナーから天月へ、ライブという場で幾度となく愛を育んできた大切な曲だ。
天月-あまつき-、大阪城ホールで覚悟新たに「みんながいるんだからさ、最強に決まってんだろ!!」
撮影:SARU(SARUYA AYUMI)

最後には、会場BGMとして流れる「きっと愛って」に乗せて、リスナーから恒例の歌のプレゼント。しかし、今日は少し様子が違っていた。正宗のぬいぐるみと、サプライズゲスト・事務員G扮する「ジモリ」から受け取った青いバラの花束を抱えた天月は、スマホで客席を撮影し始めた。彼自身も時折歌いながら、リスナーの歌を動画に収めた。ストーリームービーによれば青いバラは、人の手で作り出すことが可能になったという経緯から、花言葉が「不可能」から「夢は叶う」に変わったらしい。今日のこの光景こそが、彼にとっての抱えきれないほどの青いバラだったのかもしれない。

「この画面に入りきらないぐらいの素敵な愛をいただきました。これからまだまだ頑張っていくので、ありがとう、バイバイ」と涙ぐみながらも、堂々とした笑顔ではっきりそう伝えると、天月はステージを後にした。

取材・文/ヒガキユウカ(プレスラボ)

<セットリスト>
01.流れ星
02.シューティングスター
03.Sing!Swim!Swing!
04.恋に溺れて
05.月曜日の憂鬱
06.ネバーエンド・ランド
07.星月夜
08.夜明けと蛍
09.1/6 out of the gravity
10.きみだけは。
11.Ark
12.マリオネットラヴァーズ
13.ヒロイックシンドローム (Secret Guest:nqrse)
14.This Night (Secret Guest:nqrse)
15.儚きゴースティング(新曲)
16.ホシアイ
17.コスモノート
18.アストロスト
19.スターライトキセキ

Encore
En-1.恋人募集中(仮)
En-2.Hello,My story(acoustic ver.)
En-3.きっと愛って