19年前のASKAが見た「歴史的な出来事」 チャゲアスが紡いだ日韓異文化交流

19年前のASKAが見た「歴史的な出来事」 チャゲアスが紡いだ日韓異文化交流

慰安婦問題や徴用工訴訟、韓国をホワイトリストから除外、それらに伴う韓国国内での日本製品不買運動や反日感情の上昇……。現行、日韓問題は深刻さの一途を辿っているよう。一方、日韓の異文化交流に際しては、ここ20年程、良好な関係性が保たれている印象がある。しかしこれも一長一短で今に至ったわけではない。切り拓いた者がおり、道が作られ、流れが作られていったのだ。

2000年に日韓親善大使となったCHAGE and ASKA(以下:C&A)が同年の8月26日、27日に韓国ソウル市にて約2万人を動員したコンサートを成功させた。その際のライブ映像が19年の歳月を経て、この度映像化。DVDとして発売される。そんな同作品のリリースにあたりASKAを直撃インタビュー。

何故このタイミングでの発売なのか――。当日の経緯や背景、実際の光景や今思うところを余すところなく訊いた。

取材・文/池田スカオ和宏
編集/日野綾(エキサイトニュース)

マスコミに煽られても民間同士だけは絶対に刃のある感情で向き合っちゃいけない


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――今回の映像作品は、現在の日韓情勢だからこそ、「かつてはこのような日韓友好的なコンサートが行われた」との事実も含め、幅広い方に届いてほしい内容のように感受しました。

ASKA:ありがとうございます。僕としても今となっては、結果的にこうなってしまったと言わざるをえないというか。2000年のこのライブが終わった際には、「これは歴史的な出来事。この日韓の幕あけとなる韓国ライブは、決してビジネスにすべきではない」と判断し、以来ずっと作品化を拒んできました。それが3年程前から、「そろそろいいんじゃないか?」と思い始めていたんですね。そして、先々月のミーティングで8月25日、C&Aのデビュー40周年の日にリリースすることを決めました。ところが、以前より火種となってくすぶっていた徴用工問題をきっかけに、日本政府は、韓国を「ホワイト国」から除外いたしました。リリースとなる8月に入ってすぐのことです。とてもデリケートな問題です。政府の判断は日本国民として支持したい。しかし、韓国民の感情は激化するだろうなと。リリースの中止も考えておかなくてはと思っていました。

そんななか、徴用工問題が起き、ホワイト国からの韓国の除名等があり、なかなかその発表ができない状況になり……。僕も空気を上手く読まないと、これはすごくデリケートな問題だったので。

――そうだったんですね。8月9日に情報が解禁され、発売が8月25日と随分と緊急発売だなと思っていました。では、その告知解禁へと踏み出せた経緯は?

ASKA:当初は、「難しいかな」との見方が強かったですね。でも、それを変えてくれたのが両国の民間の方のSNSであり、韓国の経済評論家の方だったんです。

――韓国の経済評論家の方ですか?

ASKA:そうです。韓国のなかでも中立な立場でみて、「今回のことはおかしい」ときちんと述べられる方が現れて。それが韓国の市民にも広がり始めたんです。「これは良い風が吹いてきたぞ!」と。そこから、逆に「政治は政治家に任せておいて、民間は民間同士の気持ちでなければいけない」と改めて強く肝に銘じ、「1万人という大会場のなかに、日本人と韓国人があれだけ一緒になった光景を映し出した今回の映像を観てもらう」との決意に至りました。あの光景は決して一過性ではないと信じていて。今となっては、「よく、このタイミングでリリースとなったな」と、そう思わざるを得ません。
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――20年前のC&Aの韓国でのライブ映像との認識で見始めたものの、観進めるうちにこのコンサート実現に至る道のりや成果、これを機に、道が拓け、今に至っている。そんな流れへ観点が変わっていきました。

ASKA:今まで閉ざされていたものが、その扉があいた瞬間、どれだけ心開かれていったか。その瞬間を観てほしいですね。どんな状況下や政治下、マスコミに煽られたとしても、「民間同士だけは絶対に刃のある感情で向き合っちゃいけない」。それがこの映像からは如実に伝わってくるんです。

日本人ミュージシャンのライブで、あれだけの韓国の方が喜んでくれたのは感激だった


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――今回驚いたのは、当時「大失敗だった」と伝え聞いていた話が、実際は満員で大成功だった事実でした。

ASKA:「C&Aの韓国ライブは失敗だった」「あのコンサートの失敗の負債で会社が倒産した」とライブに参加してなかった一部のマスコミが勝手な憶測でリークし、それが一気に広がってしまった。それが原因でした。あれは旧事務所が新事務所に業務を移管し、名前が変わったタイミングだったことで。倒産なんかしてないですし、あのコンサート自体はスポンサーもいたし大成功でした。我々にしても、もし利益が出たらそれはチャリティとして寄付する予定だったので、出た収益は全て寄付させてもらいました。なので利益こそ出ませんでしたが、損益もない状況というのが事実です。

――今さらでしょうが、あの誤報の際にこの映像を見せれば良かったような気もします。

ASKA:タイミングというものがあるでしょう? あのような記事を受けるようなリリースとなっては、大義が壊れてしまいます。それに、あんな記事をメディアがこぞって報じたことは、予想外でした。ま、いいじゃないですか。こうやって、やっと事実を観ていただけるんですから。

――今回の映像を観てようやく留飲が下がりました。C&Aは当時、アジア各国での日本人ミュージシャンのライブにおける先鞭付け的な役割を自負して動かれていたような印象があり、その際には各所それ相当の苦労もされたと思います。

ASKA:何事も最初に行うにはそれ相当の苦労がありました。中国で初めて1万人以上を集めてコンサートを行ったのも我々でした。それまでは法規上、クーデターの懸念もあり、中国では1万人以上の集会は禁止されていたんです。それを始め色々なことを最初にやらせてもらってはきましたが、この韓国でのコンサートに関しては、あえて自分たちからは手を上げなかったんです。いかんせん大変なのが分かっていたんで(笑)。最初にことを行う大変さ、これは僕らが重々知っていることでしたから。
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――意外です。C&Aはかねてより「アジアはひとつ」を掲げ、アジア各国でライブを行ってきましたが、そんな中、「韓国こそが最後の砦」感があったので。逆に「是が非でも俺たちが!」との気概で行ったとばかり思ってました。

ASKA:「韓国でやらなくて何がアジアでコンサートだ!」とは常々思ってました。とは言え、この時ばかりは、「誰かがやってくれた後で次回は自分たちもやらせてもらおう」そんな気構えだったんです。その前の台湾でのコンサートも日本語解禁前だったこともあり凄く苦労した経験もあったし。ライブ直前で、台湾も日本語曲解禁になりましたが、あれは僕らが国を動かしたわけではなく、僕らのコンサートを実現させたい市民、メディアが動いてくれた結果だったと今でも思っています。

――では韓国ライブを最初に行う決意に至ったのは?

ASKA:韓国に何度か足を運ぶようになり、仲間が増え、「もしかしたら自分たちならできるかもしれない」との気持ちにさせてくれたんです。途中からは逆に使命みたいなものを感じてきて。最後は「これはやはり自分たちがやらなきゃダメだ」という気持ちにさえなっていました。

民間同士の気持ちは決して当時も今も変わるものじゃない


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――映像を観て、日韓揃ってあそこまでの盛り上がりに驚きました。

ASKA:なんか日本でコンサートをやっているみたいだったでしょ? 正直、自分らでは日本から来たお客さんたちが先導して盛り上げ、後から韓国の方たちもついてくる状況を予想していたんですが、始まった瞬間から全体があの一体感でしたから。なんかそこで初めて日韓の異文化交流を実感しました。それは日本語の歌だけではなく、民間同士が分かり合い通じ合えた瞬間に立ち会えたような……。その時になんか「今後は大丈夫だ!」と確信したんですよね。

――当日はどのような気概で臨みましたか?

ASKA:しっかりと歌う。そして日本でのコンサートのようにいつも通り行う。あとは今後の為にも成功させなくちゃいけない。そんな気概で臨んだ気はします。セットリストは韓国用に新たに組みました。あとバックバンドはC&AバンドではなくASKAバンドだったんで、若干通例のC&Aのライブとはスタッフィングも違ってます。実はその秋にASKAとしてのソロツアーの予定があり、既にメンバーを押さえていましたので、そのままASKAバンドでやりました。

――改めて映像を観返していかがでしたか?

ASKA:楽曲の並びがいいですね。見事に上手くいってたなって。

――個人的には「HEART」「僕はこの瞳で嘘をつく」「YAH YAH YAH」の流れが素晴らしかったです。あとは、「SAY YES」での場内の大合唱や「YAH YAH YAH」の会場全体のコブシと呼応が印象深かったです。

ASKA:その感想は嬉しいです。これは後に韓国の方がおっしゃられたんですが、日本のアーティストのクオリティの高さに韓国側がかなり驚愕して、「日本の音楽が韓国を席捲してしまうんじゃないか?」との懸念が芽生え、以後、より日本のロックやポップスのアーティストやバンドは進出しにくくなった」と聞きました。
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――そうだったんですね。では、今作の観どころを教えて下さい。

ASKA:「こんな時代もかつてはあったんですよ」ってところかな。当時の日本語解禁について知らない、今や当たり前に解放されている世代が沢山いる中、こういったことも過去にはあったことを知ってもらったり、再認識してもらいたいですね。民間同士の気持ちはけして当時も今も変わるものじゃない。みなさんの観後のそこに期待したいです。

リリース情報


19年前のASKAが見た「歴史的な出来事」 チャゲアスが紡いだ日韓異文化交流

CHAGE & ASKA LIVE IN KOREA 韓日親善コンサート Aug.2000
8月25日リリース
価格:\6,480
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

『ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館』
2019年8月21日(水) DVD/Blu-ray発売
価格:¥7,000+税(DVD)、¥8,000+税(Blu-ray)
形態:DVD(2枚組)、Blu-ray(1枚)
レーベル:DADA label
品番:DDLB-0012(DVD)、DDLB-0013(Blu-ray)
収録内容:全22曲収録 + バックステージドキュメント+インタビュー

『ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館』
価格:¥3,800+税
形態:CD(2枚組)
レーベル:DADA label
品番:DDLB-0011
収録内容:全22曲収録

2019年2月6日を皮切りに開催された、約6年ぶりとなるファン待望のバンドツアー「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- 」の追加公演初日・日本武道館公演の模様を完全収録した、待望のDVD/Blu-ray『ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館』が発売。4月23日(火)に行われたライブの模様と、当日のバックステージを追ったドキュメント、そして公演を終えた本人へのロングインタビューが収録。

「歌になりたい」
2019年11月20日(水) 発売
形態:CD
収録楽曲:「歌になりたい」「Breath of Bless」2曲収録
価格:¥1,300+税
レーベル:DADA label

ほか、ASKAバンドとクラシック 界の名手によるビルボードクラシックス・ストリングス(弦楽アンサンブル)との共演の新しい融合に挑戦する全国ツアー『ASKA premium ensemble concert -higher ground-』の開催が決定。チケット情報、公演詳細は特設サイトまで。

オンエア情報


「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館」
・フジテレビ地上波(関東ローカル)8月27日(火) 26:05〜27:25
・BSフジ(全国放送)8月31日(土)  25:00~26:20

ASKA official web site


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