夏の行事といえばたくさんあるが、ここ最近恒例になりつつあるのが“ジブリ祭り”だ。今年も夏休みシーズンに金曜ロードSHOW!(日テレ系)で3週連続でスタジオジブリ作品の映画を放送された。
ジブリの人気は根強く、何十回目の再放送でも視聴率は好調で、SNSの普及もあって“バルス祭り”のように「皆でジブリを見る」というのが定番にもなりつつある。

ジブリ作品がここまで愛される理由はいくつもあると思うが、よく言われるのが「ごはんがおいしそう」ということ。特に「天空の城ラピュタ」に出てくるトーストに目玉焼きを乗せたパンや、「魔女の宅急便」のニシンとかぼちゃのパイなどは、実際に作ってみたことがある人もいるはず。

というわけで、今回はジブリ映画に出てくる「ごはん」にフォーカスをあてていく。なお、対象はスタジオジブリ制作の長編映画のうち、宮崎駿氏が監督か脚本で関わった作品のみとし、「風の谷のナウシカ」のようなスタジオジブリ制作以外の作品は除外している。

よく食べている作品はどれか?


まずは「よく食べている作品」が何かを見てみよう。

今回は「ちょっとお茶する」「深刻にお茶する」といった軽食のシーンも含めたほか、料理や食べものを収穫しているシーンもカウントし「一番ごはんのシーンが長い作品は何か」を出してみた。

ジブリ作品のなかで最も登場する“食べ物”は? よく食べる人物1位は「耳をすませば」月島雫
【ジブリ宮崎駿作品のごはん調査】一番食べ物・飲み物が出てくる作品は?(C)エキサイト

1位 魔女の宅急便
2位 千と千尋の神隠し
3位 風立ちぬ
4位 コクリコ坂から
5位 ハウルの動く城
6位 崖の上のポニョ
7位 耳をすませば
8位 もののけ姫
9位 紅の豚
10位 天空の城ラピュタ
11位 借りぐらしのアリエッティ
12位 となりのトトロ

最もごはんが出てくるのは、1989年公開の映画「魔女の宅急便」。主人公・キキがパン屋さんに住んでいるため当然といえば当然なのだが、最初から最後までひたすらパンが登場する。なお、パンも含めた食事に関するシーンは約1時間10分を超えており、ほぼパンの映画と呼んでも差し支えがないパン映画だ。

2位につけたのは日本最高の興行収入を誇る大ヒット作「千と千尋の神隠し」。こちらも主人公の千尋が湯屋に転がりこむという話のため、飲み食いのシーンが非常に多く、なんなら飲み食いのシーンが最も見せ場となっている1本でもある。同作品に関しては、比較的上品に食事を取ることの多い「魔女の宅急便」に比べると、全編通して威勢のいい食べっぷりを楽しめるのが魅力のひとつと言える。


そのほか、個人的に意外だったのが「天空の城ラピュタ」である。主人公のパズーとシータがトーストを食べるシーン、ドーラが肉にかぶりつくシーンなど、食事のシーンが多いように思えるが、ジブリ作品の中では下から3番目とかなり少ない部類に入る。これは物語の前半で長閑なシーンが続くのに対し、後半は全員が食事どころではない状態に追いやられるためであり、ラピュタの食事シーンを楽しみたいという方はぜひ前半に集中して鑑賞してもらえればと思う。

最も多種多様な食べ物・飲み物が出てくる作品は?


続いて、最も「品数が多い」作品を見てみよう。

現実世界でも痛感することだが、食べ物はやはり量だけではなく質も大事だ。ジブリに登場する食べ物はどれもおいしそうではあるが、せっかくごはんのシーンを見るのであればバラエティに富む食事を見たいものである。

というわけで、ランキングにしてみたのが以下である。

ジブリ作品のなかで最も登場する“食べ物”は? よく食べる人物1位は「耳をすませば」月島雫
【ジブリ宮崎駿作品のごはん調査】一番多種多様なごはん・飲み物が出てくる作品は?(C)エキサイト

1位 千と千尋の神隠し 58品
2位 魔女の宅急便 27品
3位 コクリコ坂から 26品
4位 耳をすませば 25品
4位 天空の城ラピュタ 25品
5位 ハウルの動く城 20品
6位 紅の豚 19品
7位 借りぐらしのアリエッティ 17品
8位 風立ちぬ 15品
9位 崖の上のポニョ 14品
10位 となりのトトロ 10品
11位 もののけ姫 9品

品数1位は「千と千尋の神隠し」という結果に。こちらは全作品の中で最も「何だかよくわからない食べ物のようなもの」が多かった作品でもあり、「これは食べ物なのか?」というものもカウントして調査したため、数字がやや不正確であることは予めご了承いただきたい。

対して品数が乏しかったのが「もののけ姫」だ。ややネタバレになってしまうが、こちらは太古の厳しい自然が舞台のため、出てくるごはんがほとんどすべて「おかゆ」である。まれに干し肉や煮物を食べるシーンも存在するが、他の作品に比べると圧倒的におかずが少ない。ジブリ作品のなかでは厳しい食事が多く、カロリー控えめの1本になっている。


よく食べる人物1位は?


少し視点を変えて「よく食べる人物」を見てみよう。食べている量やおいしさを正確に測ることは難しいので、今回は最もたくさんの「品数」を食べているキャラクターを調査した。その結果が以下である。
ジブリ作品のなかで最も登場する“食べ物”は? よく食べる人物1位は「耳をすませば」月島雫
【ジブリ宮崎駿作品のごはん調査】一番グルメなキャラクターは?(C)エキサイト

1位 月島雫/耳をすませば
2位 ソフィー・ハッター/ハウルの動く城
3位 マルコ・バゴット/紅の豚

ジブリに登場する人物のうち、最もグルメなキャラクターに輝いたのは「耳をすませば」主人公・月島雫。調査する過程で気付いたのだが「耳をすませば」という作品はほとんど「月島雫が本を読んでいるか、ご飯を食べているか」で構成されている作品であり、誤解を恐れずに言うならば「耳をすませば」とは「月島雫が本を読む→ごはんを食べる→本を読む……を丹念に繰り返す」映画である。

これは私自身も今回、食べ物という観点で鑑賞することで初めて気付いた「耳をすませば」の新たな一面でもあり、一度観たことがあるという方も、これを機にぜひ再度食べ物を注目する観点で見直してみて欲しいと思う。

2位には「ハウルの動く城」の主人公・ソフィー、3位には「紅の豚」の主人公・マルコがランクイン。
ソフィーは毎回の食事をきちんと一汁三菜そろったバランスのよい形で取っていたことがランクインに繋がったほか、マルコはあらゆるお酒を頻繁に飲む酒好きが高じて上位に食い込む結果となっている。

一番よく出てくる食べ物は何か?


では、そんなジブリ作品に「最も出てくる食べ物」は何だろうか?

ジブリ作品のごはんは、和風のものから西洋風のものまで多岐にわたるが、実際に最も食べられているものが何なのかを調べてみたのが以下である。
ジブリ作品のなかで最も登場する“食べ物”は? よく食べる人物1位は「耳をすませば」月島雫
【ジブリ宮崎駿作品のごはん調査】一番よく出てくる食べものは何か?(C)エキサイト

1位 パン
2位 魚
3位 お米・味噌汁・魚

最も多かったのは、古今東西で愛されてきた食事の代表である「パン」。こちらは「となりのトトロ」「もののけ姫」のような、昔の日本を舞台とした作品以外ではほぼすべてに登場しており、ジブリごはんの代表食とも言えそうだ。

1から3位の食事をみると、肉・魚などのタンパク質や、パン・ご飯のような炭水化物が非常に多い。鑑賞しているとついついおいしそうに見えるジブリごはんだが、栄養にはやや偏りがある。

各作品で一番出てくる食べ物は何か?


最後に、各作品でよく出てくる食べ物が何かを見てみよう。

ジブリ作品のなかで最も登場する“食べ物”は? よく食べる人物1位は「耳をすませば」月島雫
【ジブリ宮崎駿作品のごはん調査】各作品で一番出てくる食べ物は何か?(C)エキサイト

ラピュタ:パン
となりのトトロ:きゅうり など
魔女の宅急便:パン
紅の豚:肉
耳をすませば:お弁当
もののけ姫:おかゆ
千と千尋の神隠し:謎の巨大な魚
ハウルの動く城:パン
崖の上のポニョ:ハム
アリエッティ:角砂糖
コクリコ坂から:ご飯
風立ちぬ:サバ など

各作品でよく出てくる食べ物を見てみると、改めてパンとご飯が大人気であることがよくわかる。また「借りぐらしのアリエッティ」の角砂糖、「風立ちぬ」のサバのように、ストーリー上で重要な役割を果たすごはんは比較的よく登場するようだ。

特徴的な作品を挙げるとするなら、大半の作品が炭水化物やタンパク質をメインとしているのに対し、唯一ヘルシーな食事が多い「となりのトトロ」に目がいくだろう。トトロは最も食事のシーンが短いジブリ作品だが、食べているものも新鮮なきゅうりやトウモロコシなどかなり健康的な食事が多く、最も整った食生活を送っている作品なのかもしれない。

前述した通り「食べ物かどうかわからないもの」が多かったのが「千と千尋の神隠し」である。特に多かったのが「現実世界で食べるにはあまりにも巨大すぎる魚」であり、こちらは頭のぶつ切りなどでよく登場していたので、機会があれば実際にチェックしてもらえればと思う。

老若男女を問わず、多くの人に愛されているジブリ作品。ストーリーやキャラクターの魅力はもちろん、ごはんという点にも着目しつつ、観たことがない作品もある作品も楽しんでもらえればと思う。

■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

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