
第10話あらすじ 頬にあざのある男
河川敷で男性の死体が発見されたというニュースが流れた。尊(渡部篤郎)によると、焼死体である立嶋雅夫は巌(麿赤兒)の偽装IDの名前だと言う。
捜査を担当する桜庭和馬(瀬戸康史)は遺留品として発見された錠前ネックレスの写真を三雲華(深田恭子)に見せた。このネックレスが本物であれば、マツ(どんぐり)の持つ鍵型のネックレスで開けることができるはず。Lの一族は錠前ネックレスを盗むため警視庁に侵入。盗み出した錠前ネックレスにマツの鍵を刺すと、悲劇にも開いてしまった。中には、若い頃のマツ、巌、そして和一(藤岡弘、)の3人が写った写真が入っていた。
実は、和一はマツの初めての恋人だった。しかし、和一が代々続く警察一家の生まれだと知ったマツは、和一からのプロポーズに応えられずにいた。ある日、マツが暴漢に襲われ、悲鳴を聞いて駆けつけた巌は頬にあざのある男とすれ違う。話を聞いた和一はマツに警察へ届けるよう勧めたが、マツは頑なに拒み、自分がLの一族であることを明かした。こうして、マツと和一の結婚はなくなった。
元々マツを好きだった巌は責任を感じ、以降、マツを襲った男をずっと探すことに。しばらくして、スリの腕を磨いた巌は大阪に拠点を移したマツと結婚し、Lの一族の婿養子になった。
マツによると、巌と和一は1年前に再会しており、巌はマツを襲った犯人を見つけたと和一に報告していたという。犯人探しを始めた尊は、橋元エミリ(岸井ゆきの)が保管室で遺留品のネックレスを探していたと明かす。尊はエミリに命令を下したのは元警視総監の巻英輔(浜田晃)だと続けた。目的は、過去の暴漢事件の犯人があぶり出されないようにするため。頬にあざのある英輔こそ、マツを襲った男だったのだ。和馬とエミリの結婚も何か仕組まれているかもしれないと疑う尊は、和馬をいただくと英輔に予告状を送りつけた。
結婚式当日。式で和馬とエミリの宣誓を聞く神父の正体は尊で、そこに泥棒スーツに身を包んだ華が現れた。華は和馬を連れ去ることに成功する。
華と同じ経験をしていたマツ
伏線がドンドン回収されていく10話だった。山場はマツの回想シーン。若かりし日のマツを演じるのは深田で、和一を演じるのは瀬戸、巌を演じるのは柄本時生だ。瀬戸は声を藤岡に寄せるだけでなく、眉毛をメイクで足し、泣きぼくろは消すという入り込みぶりだ。マツが泥棒に入る際のドレスはベルベットのもので、華が着る泥棒スーツの素材もベルベット。マツが関西弁を喋るのは大阪に拠点を移した時期があるからである。
最も大事なのはマツが華と和馬の恋愛を応援していた理由だ。
「うちは代々、警察一家だ。父は騎馬警官隊として活躍している」(和一)
仮面ライダーキバだった瀬戸だけに……。つまり、和一が警察だと知って自ら身を引いた過去がマツにはあったのだ。華と和馬が直面している問題は、60年も前にマツが経験済みだった。
一方の和一の反応も切ない。1話で和馬が華を家に招いた日、華を見た和一は「その女は諦めろ」と和馬に忠告していた。今思うと、あれは華を否定するニュアンスじゃなかった。自分が味わった悲しみを孫に味あわせたくないという気持ちからの苦言。華の恋を後押しするマツと、和馬の恋を制止する和一。どちらも、自分の知る苦しみを孫に味あわせたくないという思いは同じだ。
エミリの口癖「見ないでください!」の真意
前回のレビューで“エミリ黒幕説”を紹介したが、どうやら彼女は黒幕ではない。エミリは英輔の指示通りに動いているだけ。遺留品のネックレスを盗み出そうとしたのも英輔の差し金だった。
そういえば、ネックレスを探しているときのエミリは眼鏡をかけていなかった。彼女の様子を観察していると、本当は視力が悪くないことに気付く。エミリは英輔の言いなりになるうちに、本当に和馬を好きになってしまった。それでいて、英輔の言う通りに和馬を騙し続けている。自責の念に駆られるエミリは、嘘をついている自分を見られたくないから「見ないでください!」と口にするようになったのではないか。
英輔に前にいるときは、絶えず怯えているエミリ。彼女もある意味、被害者だ。
結婚式前夜、和馬からの“頼み”とは
10話で様々な伏線が回収されたが、新たな伏線も提示された。
「ここまで育ててくれて、本当にありがとう。最後に1つだけ、頼みを聞いてもらいたいんだ」
結婚式前夜、和馬が両親に申し出た“頼み”とは何なのか?
式が始まる直前、和馬の控室を訪れた巻栄一(加藤諒)に美佐子(マルシア)が出したコーヒーは意味ありげだった。和馬は河川敷の殺人現場で衣服の切れ端を発見し、持ち帰っている。美佐子は鑑識課の非常勤職員だ。栄一が飲んだコーヒーカップから指紋を採取し、現場にあった衣服の切れ端と照らし合わせるつもりではないのか? 栄一は巻家の落ちこぼれで、英輔の指示には逆らえない立場である。
ダスティン・ホフマンのような深田恭子
和馬とエミリの結婚式は、視聴者の誰もが予想したであろう展開へ突入した。
英輔の正体がどんな男か、Lの一族は気付いている。
「どうすべきか、答えはもう出てるんじゃないか? このまま和馬君を結婚させるわけにもいかないだろ。盗みに行くぞ、花婿の和馬君をな」(尊)
式で、神父が和馬とエミリに意味深な質問をしている。
「桜庭和馬さん。あなたは運命に従いますか? それとも乗り越えますか?」
困惑する和馬を前に神父が自らのマスクをとると、その正体は尊だった。『ルパン三世 カリオストロの城』でクラリスを強奪するルパンみたい!
そのとき華が姿を現し、和馬の手を引いて連れ去って行った。まさに、映画『卒業』と同じ展開! ただ、男女入れ替わっており、ダスティン・ホフマンの役を務めたのは華だ。バス(護送車)に乗り込む華と和馬。ここまでを含めて、全て『卒業』のオマージュだ。
(画像)
あの映画では、式場から逃げ出す両者の表情は暗かった。これから訪れるであろう現実を見据え、2人からは笑顔が消えていた。では、華と和馬の表情はどうか? ……和馬が白目をむいているのでわからない。
#ルパンの娘 第11話9月26日木曜22時〜10話ご視聴ありがとうございました次週いよいよ最終回ですLの一族が絶体絶命おじいちゃんを殺した犯人とは第11話1分PRです#深田恭子 #瀬戸康史 #渡部篤郎 pic.twitter.com/uGvact7Hlr
— 【公式】木10『ルパンの娘』___《《最終回 9/26(木)夜10時!》》 (@lupin_no_musume) September 19, 2019
早く、本編が観たい。どうにも待ち遠しくなる、希望に満ちた内容なのだ。円城寺輝(大貫勇輔)のアクションは勇ましいし、渉(栗原類)は家の外に出て敵と直接対峙している。Lの一族がみんなで歩いているシーンは映画『アルマゲドン』のよう。その中に、死んだと思われた巌が混じっているし!
でも、大事な部分はネタバレしていない。事件の行く末、そして華と和馬の恋の結末はまだわからない。『卒業』は厳しい未来を予感させたが、そこについては『ルパンの娘』はオマージュしていない気がする。
(寺西ジャジューカ)
『ルパンの娘』
原作:『ルパンの娘』横関大(講談社文庫刊)
脚本:徳永友一
音楽:Face 2 fake
主題歌:サカナクション『モス』(NF Records / Victor Entertainment)
プロデュース:稲葉直人、荒井俊雄
演出:武内英樹、品田俊介、洞功二
制作・著作:フジテレビ第一制作室
※各話、放送後にFODにて配信中