「スカーレット」20話。戸田恵梨香に続いて水野美紀が柔道アクションを華麗に決める
連続テレビ小説「スカーレット」20話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます

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連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「スカーレット」20話。戸田恵梨香に続いて水野美紀が柔道アクションを華麗に決める

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第4週「一人前になるまでは」20回(10月22日・火 放送 演出・佐藤 譲)


冒頭、ギターの音色とナレーションの声が重なったところが美しかった。中條誠子アナウンサーの声がきれいなのだと思う。朝、小鳥のさえずりを聞くような、“おしつけがましくなく気持ちのよい朝”と言えるはじまりだ。


放送時間の変更


「即位礼正殿の儀」が行われるため祝日となった22日。放送時間が変更になった。朝は7時45分から、昼は12時半から。SNSではその情報を盛んに流していたが、それでも見そびれた、録画しそびれたという人もいるかもしれない。
でも、祝日仕様なのか、そんなに話は動かなかったからご安心。

高い賃金目当てに、デイリー大阪で働こうかと思う喜美子(戸田恵梨香)は、試しに働いてみることに。
平田(辻本茂雄)が、旅のおともの信楽焼のことを調べてくれて、室町時代の古いものだということがわかった。
でも、金銭的な価値はわからない。いや、たぶん、お金にはならないのだろう。それをやんわり言う優しさだろう。

後になってすごい高価だったことになるのかもしれないが。目下、信楽焼のかけらが蟹の甲羅に見えてしょうがない。

「草間流柔道でいうと」


平田から、ブンヤの誇りをもってちや子(水野美紀)のつねに“女ひとり”で活躍している武勇伝を聞いた喜美子は、すっかりちや子に心酔し、帰りに〈さえずり〉で落ち合った雄太郎にその凄さを「草間流柔道でいうと」と興奮気味に例える。

時々、「草間流柔道」に例える喜美子。
でも、雄太郎にはなんのことやらわからない。
そして、雄太郎も雄太郎で、聞いてほしい嬉しいことがあった。
なんと、映画出演が決まったという。市役所づとめは性に合わず、俳優をやりたかったらしい。
映画のタイトルは「大阪ここにあり」。
雄太郎は「喜びを分かち合おう」と喜美子にアイスクリームをおごる。

「そこ乳首やん」


19話――つまり第4週から、荒木荘の人たちの会話劇が重視されているようで、会話を練っていることが感じられる。20話は、前述の「草間流柔道に例えると」にはじまって、食卓でのみんなの会話。
突然、俳優になると言い出す雄太郎に驚く圭介(溝端淳平)は「明日の小児神経科の講義頭入るやろか」と医学生的なセリフを吐く。それから、
雄太郎「ぼくの脳天貫いてん」
圭介「いやそこ乳首やん 脳ここですよ」の医学生らしいツッコミ (あとでもう一回繰り返す)
黒澤明の「生きる」が脳天を貫いたという雄太郎に、「生きる」は市役所やめてないとツッコむさだ(羽野晶紀)。
会話のなかで、雄太郎の父親が亡くなっていて、池田で母が姉さん夫婦と住んでいるという情報も示される。

水野美紀のアクション


お金より夢、という雄太郎の話を聞いたからか、
その晩、喜美子が、ちや子が柔道をする夢を見る。
ついでに、雄太郎と圭介も柔道。でも、水野美紀だけが凛々しい。

さすが、志穂美悦子の再来と期待されたアクションのできる俳優である。
「とやあ〜」と寝言を言って起きたときの戸田恵梨香はあどけない“少女”という感じだった。

ちや子が遅くに帰ってきて、今日どうだった? と聞くと、雄太郎の話をする。
雄太郎に聞かれたときは、ちや子の話をまずした喜美子。
自分のことより人のことが先に立って、喜美子の夢はまだ定まっていない……。

目が覚めた喜美子が色鉛筆で花の絵を描き、彼女の感性を表現する。今日も猫が出てきたし、ドラマ小姑を満足させようという気遣いにはおそれいる。結局、視聴者はサービスされると喜び、サービスされないと無視されていると感じて寂しくなって文句を言うのである。お店で、なかなか注文とりに来てくれないとか、愛想悪くされるとか、ほかの客と比べて疎外感を覚えるとイラッとするそういう感じなんだと思う。全員に等しく心地よいサービスするのってほんとうに大変だ。

(文・木俣冬 タイトルイラスト・まつもとりえこ)

登場人物のまとめ



●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 絵がうまく金賞をとるほどの腕前。
勉強もできる。とくに数学。学校の先生には進学を進められるが中学卒業後、就職する。
川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいるらしい。
川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。

川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉 

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。
熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。

●滋賀で出会った人たち
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。
陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を
「ゴミ」扱いされる。
草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいた。帰国の際、離れ離れになってしまった妻の行方を探している。喜美子に柔道を教える。
工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。

…中川元喜  常治に雇われている。
博之…請園裕太 常治に雇われている。


●大阪 荒木荘
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対する。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者で不規則な生活をしていて、部屋も散らかっている。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて引きこもり中。
静 マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。

平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

あらすじ


第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき
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