ロックバンド175Rのボーカル・SHOGOは現在、フィリピンのセブ島に在住している。世界的に問題となっている新型コロナウイルスの流行は、フィリピンでも感染者数を日々増加の一途をたどっている。
ロックダウンの最中であるフィリピン・セブ島での生活について、SHOGOに実情を聞いた。
外出時は1家庭で1人のみ “外出許可証”を携帯して外出
ーーSHOGOさんはどういった経緯でセブ島に在住されているのでしょうか?
2018年から子供たちの教育のためにフィリピン・セブ島に移住しました。SRRVというフィリピン退職庁が発行しているリタイアメントビザ(永住ビザ)を取得して日本を行き来しながら生活しています。
元々は用事があり3月に日本帰国の予定でしたが、フライトキャンセルや日本の親族への感染拡大の可能性を考慮し、セブ島に残る決断をしました。
ーー新型コロナウイルスが深刻化した際から、どのような生活をしていましたか?
正直、先に深刻化を感じたのは日本のニュースでした。日本の感染拡大が大変だなぁと思いながら普通に生活していたのも束の間、フィリピンのドゥテルテ大統領が3月12日にマニラ首都圏の封鎖を発表。そこからは急速に国内に様々な制限が始まり、今に至ります。
ーーロックダウン後に許される外出の範囲は?
原則外出は禁止です。外出時は1家庭で1人のみ外出許可証を携帯して外出します。ただし、65歳以上の方と18歳未満は許可証があっても外出できません。外出はスーパーマーケット、コンビニ、ドラッグストアでの買物時や病院に行くときのみです。
スーパーなどのお店は営業時間が短縮され、また店内の人数制限をしているため、入店するのに並ぶ必要があります。
ロックダウン前後から休業しているお店ばかりなのですが、数店舗だけ開いているレストランも店内での飲食は不可。食事のテイクアウトとデリバリーのみとなっています。外出禁止なので、ジョギングや散歩など外での運動はもちろんできません。
ーーご自身と周囲はロックダウンのなか、家でどう過ごしているんでしょうか。
買物時しか外に出ないだけで意外と冷静で普通です。家の中ではTV番組を観たり、インターネットでニュースを見たりしています。あとは子供たちと遊んだり、暇なのでなるべく野菜を取り入れた少しだけ凝った料理を作ったりしています。
数は少ないですがデリバリーを行う業者もあるので外出せずとも食事や野菜、肉や卵など配達してもらえます。でもコンドミニアムは入居者以外立ち入り禁止になってしまい、1Fロビーでしか受け取れません。子供たちは家の中でしか生活できないのが可哀想ですね。早く外で思いっきり遊ばせてあげたいです。
ニュースキャスターも感染を考慮し自宅から放送
ーー日本の様子をニュースなどで見聞きし、どのように感じていますか?
国の違いもあるので一様には言えませんが、まだ平和だな~と思えてしまいます。恐らく世界中で日本だけがあまり普段と変わらぬ生活をしているように見えています。
こちらはショッピングモールや映画館、美容院や歯医者、マッサージやスパ、ゴルフ場なども閉店・休業でアルコール類の販売、提供も禁止。基本的に生活に最低限必要な店以外、ほとんどの店が開いていません。公共交通機関(ジプニーやバス)、タクシー、Grab(配車アプリ)などもほぼ営業禁止なので渋滞もなく静かな街になりました。
もちろん日本はロックダウンなどせずにこの危機を乗り越えられれば一番幸せだと思います。ただTwitterを見ている限り、危機感を持っている国民が多くいることも事実。もしかしたら今後、ロックダウンもあり得るのかなとニュースを注視しています。
ーー現地から見て、日本の動きはどのように感じていますか?
ドゥテルテ大統領の決断が早いことはニュースでも度々報じられていますが、それに比べると全てが慎重すぎて遅いようにも感じてしまいます。それぞれの国民性もあるのでなんとも言えないところです。
日本のTV番組(特にバラエティ番組)は通常通り放送されていますが、こちらではニュースキャスターも感染を考慮して自宅から放送していたり、通常の番組放送を中止(撮影中断)して、過去に放映された映画などに差し替えて放送していると聞きました。
ーー国のサポートはどのような手当てがあるのでしょうか?
地区によっては食料を配給するなどの措置が取られているようで、政府からは雇用されている従業員などへ5,000ペソ(約1万円)の現金が支給されたりしています。物価の違いがあるので1万円といえど、こちらでは高額です。
自分がプロデュースしているアパレルショップでは、外出規制から急遽休業が決まり休業補償や家賃補償などの話は全くできていません。恐らく補償問題は二の次で、感染拡大を抑え医療崩壊を招かない事を最優先にした感じです。
良くも悪くも政府や大統領のリーダーシップが強いためか、次々と急に決まっていく制限や禁止事項、隔離や封鎖に関して、フィリピン国民はこの状況を粛々と受け入れているように見えます。ただ、今後長引けば生活苦から治安が悪くなることも充分考えられます。
解決するためには命が無事でないと話し合うこともできない
ーー新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、ライブハウスや劇場などの文化施設が営業自粛を余儀なくされており、政府に助成金の交付を求める署名を集める運動などが行われています。数々のライブやイベントも中止に追い込まれていますが、SHOGOさんから見て、今の日本の音楽業界はどうなっていくと思いますか。
中止された場合の費用の補償や、会場の休業補償や家賃補償など解決せねばならないことも多くあると思いますが、解決するためには命が無事でないと話し合うこともできません。目に見えないウイルスとの戦いになりますので、ライブやイベントなど感染者が多数出る可能性があるものは主催者ならびに会場側から中止や延期などの決断をファンや来場者へ向けてしてあげることが一番重要なのかなと思います。
今の政府にヤキモキしているのと同じ状況で、ファンやチケット購入者は開催された場合に自身で行く、行かないの選択を強いられます。感染予防していても感染するのがウイルスの恐いところ。政府とは違い勇気を持って素早く決断するしかないのかもしれません。個人的には音楽はライブだけでなく外出自粛の際にCDやYouTubeなど遠隔的にパワーを送れる最高のエンターテインメントだと思っています。
不安だとは思いますが、生きてさえいれば落ち着く頃に皆で知恵を振り絞り助け合うこともできるのではないでしょうか。
ーーSHOGOさんの周りのアーティストとも、そういった話をしているのでしょうか。
今はセブにいるのでTwitterなどSNSでしか連絡は取れていません。
ーーフィリピンでは、こういったアーティストへのサポートは何かあるのでしょうか。
こちらのエンタメ界のことは詳しくないのでわかりませんが、外出禁止でライブハウスなども強制的に休業を余儀なくされています。あと、フィリピン国内では外出自粛でTikTokが急激に流行っているように思います。
ーーSHOGOさんからみて、今の音楽業界に必要な手当てはどんなものだと思いますか?
ドイツや他国ではアーティストに対して補償が出るというニュースをみましたが、やはり中止された場合の費用の補償や、会場の休業補償や家賃補償ではないでしょうか。ただ、セブ島の状況をみるとまずは全ての人々の生活が優先されないとマズイ状況にあります。
ーー先日、志村けんさんが新型コロナウイルスでお亡くなりになり、SHOGOさんも自身のツイッターにて故人との思い出を綴られていました。訃報を聞いたときの心境をお聞かせください。
世代的に子供の頃からTVを観て大好きな方だったので、驚き、唖然としました。そして改めてこのウィルスの脅威を目の当たりにしました。
ロックバンド・175R(イナゴライダー)のボーカル。1998年に結成された青春パンクロックバンドで2000年代前半に一代ブームを巻き起こし、「空に唄えば」や「ハッピーライフ」など様々な名曲をリリース。2010年に活動休止したものの、2016年に活動再開。以来、全国ツアーや多数のフェスの出演。現在は自身がプロデュースしたアパレルショップCebu&Co.やセブ島留学専門メディアCEBUYOLOの運営に携わっている。