
活動10周年イヤーを駆け抜け、その集大成として行う予定だった、幕張メッセイベントホールでの2daysワンマンライブ「天月-あまつき- 10th Anniversary Live Final!!」。コロナ禍によって延期、そして中止がアナウンスされたが、「ここまで応援してくれたみんなに感謝を届けたい」という天月-あまつき-(以下、天月)の灯火が消えることはなく、自身初の無観客・生配信という形で届けられることとなった。
配信になったにも関わらず、当初の予定そのままの会場で行うというから驚きだ。このライブにかけていた、彼の想いの強さ。それを余すことなく表現しきった2日間のステージを、ぎゅっと1記事に濃縮してお届けする。
久々のライブに満面の笑顔! カメラワークもMCも配信ならではの内容に

1日目のコンセプトは「Love&Pop」ということで、キュートなポップチューンを中心とした曲構成。OPムービーが終わると、サックス・トランペットを迎えた豪華なバンド隊が序曲を奏で、ライブは盛大な幕開けを迎えた。天月はストライプのジャケット、首元にはリボンとクラシカルなスタイルで登場し、トップバッターの『かいしんのいちげき!』を放つ。満面の笑顔に弾むような歌声、ダンサー陣と息ぴったりの軽快なステップで、画面の中に“天月ワールド”を構築していく。そのままノンストップで、一途な恋心を描いた『恋に溺れて』、ダウナーなリズムが心地よい新曲『ライフ イズ ビューティフル』を歌い上げた。
ここで今日初のMC。タブレットでリスナーからのコメントを確認しつつ「今日は自分のMAXスペースを確保して、思う存分声を出しても良し、手拍子しても良し。誰かと一緒に見てもらっても良し、一人で楽しんでも良し!自由に楽しんでほしいと思います」と呼びかけた。
笑顔の合間に一瞬だけ真剣なまなざしを見せると、タイトルコールを経て『小さな恋のうた』へ。アリーナやスタンド一面に設置された照明が赤く光り、リスナーのペンライトを彷彿とさせる。

配信で大きなポイントとなる、カメラワークも秀逸だ。歌詞にマッチしたダンサー陣の振り付けや、バンドメンバーのソロパートなど、「ここ!」という魅せ場をしっかり切り取ってくれている。時折ハンディカメラが天月の周囲を回れば、360度すべての角度から彼の魅力を映し出す。
バンド・ダンサー紹介を経て、後半へ。パーカー&ジャケットというカジュアルなスタイルに着替えた天月は、ペンライト片手に再登場。

幕間のムービーでは、天月が自身の声で10年間の活動と思い出を振り返り、リスナーに対する感謝のメッセージが伝えられた。「みんなが書き込んでくれた『楽しかった』とか『嬉しかった』のコメントが、僕に力を与えてくれた」「最近毎日ご飯がおいしくて、好きな歌が歌えて、友人たちと楽しく遊べて、生きることを続けてきてよかったなって。幸せだなって思えることが多くなった」「日々こうして歩めているのは、みんなが救ってくれたおかげだから」――。
一人ひとりのリスナーが、天月との間に築いてきた一つひとつの大切な思い出。それは天月の中にも感謝として残り、歌う原動力となっている。天月とリスナーのそんな関係性につい想いを馳せ、温かい気持ちになった。
さらに衣装を替え、ラストスパートへ。月をモチーフにしたガウンは、天月がステージを歩き回るのに合わせてゆらゆらとゆれる。『流れ星』で吹き上がったスパークラーは、今日を祝福する花火のようにも、願いを運ぶ流星痕(りゅうせいこん)のようにも見えた。

とにかく終始笑顔で、エネルギーに満ちあふれていた天月。アンコール含めこの日のすべての楽曲が終わった後も、まだ一曲演目があると勘違いし、続行しかけるというお茶目な一幕があったほどだ。ほほえましい空気の中、「明日があるということはとても素敵なことです。また遊ぼうぜ!」との挨拶をもって、1日目のステージは締めくくられた。
サプライズ演出も! 誰よりも天月自身が満喫した2日目

さて、2日目のコンセプトは「Rock&Cool」だ。昨日と同じくステージ後方から登場した天月は、疾走感あふれる『イデア』で開幕を告げる。シックな黒いジャケットから伸びるきらびやかな裾は天体を思わせ、彼の動きに合わせて舞う様は実に軽やかだ。吹き上がる火柱が空間をダークに塗り替えれば、『This Night』の激しいビートに自然と体が揺れてしまう。「ノっていこうぜ!」との掛け声で誘う先に『Mr.Fake』、さらには『ヒロイックシンドローム』と、ここまで休まず4曲を畳みかける。その歌唱は2日目と思えないほど力強く、チェロを迎えた重厚なバンドサウンドをたやすく乗りこなしていく。
その目にはどんな景色が見えているのか、この日の天月は曲中、何度も何度も手を伸ばし歌っていた。
インストとともにバンド・ダンサー紹介を挟み、ベースラインがおもむろに雰囲気を替えれば、今日一番激しいロックゾーンの合図だ。放たれたのは『儚きゴースティング』。星空のような装飾が光る黒インナーに、赤いジャケットを羽織った天月は妖艶な笑みを浮かべ、セクシーなダンスで魅了していく。ダンサーの舞踏会のような振り付けも相まって、視界に広がる空間はさながらダンスホールのよう。

厳かなチェロのソロパートから展開されたのは『マリオネットラヴァーズ』。操り人形のようにひざをついて歌い上げれば、途切れることなく『Ark』へなだれ込む。火柱が断続的に吹き上げ、それすらも天月のエネルギーとなっているのか、歌はどんどんパワーを増していく。
「無観客でやるなら、幕張メッセである必要は正直なかった」この一言に、少しだけ緊張感が漂う。「でも僕が書いたり書いてもらったりした楽曲には素敵な絵や動画がついて、素敵なメンバーが演奏してくれて、たくさんの人に支えられてこの活動が成り立っています。その作品たちを披露するにあたって、少しでも見劣りしてしまうのは嫌だった」こう話すと、彼は晴れやかな顔で、視聴者と関係者に感謝を述べた。

みなさんが反応してくれるからこそ、活動を続けていくことができます――その気持ちをそのまま曲にしたような『キミとボク』を、天月はキーボードでしっとりと弾き語る。この曲が、応援してくれるリスナーへの「ありがとう」だとするなら、続いて披露された『Letters to me』は、一人で活動を始めた昔の自分に対する「ありがとう」に聴こえた。天月とリスナーが、一緒に綴ってきた10年間の旅路の物語。そのクライマックスたる2daysライブがこうして開催されたことを、心の底から祝いたい。
メイキングムービーを経て、アンコールに突入する。1曲目は少し怖がりな「僕」の青春を綴った『スターライトキセキ』。アウトロにて、両手を握ってガッツポーズをする天月の姿が印象的だった。
この2daysライブでの動員数が5万人に達したことを嬉しそうに報告すると、ここで改めてこの10年を振り返った。初めてライブに出たときの恐怖や不安、CDを出すことになったときの葛藤…そして今回、「ライブを中止しよう」と言われたときの絶望感。そんな心の底の弱い部分を、息を震わせながら吐露していった。何かをこらえるかのような声音で、しかしまっすぐ前を見据えて「ここで終わりじゃなくてまた新しい10年、もっともっと天月というコンテンツを楽しんでもらえるように。そしてみんなが胸を張って『天月って、良いんだよ。

「最後はこの曲です、一緒に歌いましょう。“Hello,My Story”」。この曲はリスナーによる、息ぴったりのコーラスも醍醐味だ。今日は画面を介して、一人で。あるいは家族と一緒に。恋人と。友達と。見えはしなくとも、日本中で様々なコーラスが鳴り響いていることだろう。天月の歌唱も熱を増していく。ラスサビで銀テープが発射され、ライブは大団円を迎えた。
……はずだったのだが。1日目のアンコールで、「あと一曲」がなかったことを悔やんでいたらしい天月は、突如「もう一曲やりませんか」とダブルアンコールを提案!演者・スタッフ全員がすぐにこの誘いに乗り、急遽『きっと愛って』が追加演奏されることに。
1日目のできごとが伏線となり、このような形で回収されるとは、うれしすぎる誤算。さらにはスタッフの粋な計らいにより、スクリーンに配信画面のコメント欄が映し出された。「ありがとう」「大好き」「最高」「幸せ」といったコメントで次々とスクロールされていく画面。それは彼がリスナー一人ひとりと築き、育んできた愛にあふれていた。本当に最後の一曲を歌い切った彼は、「またな!」と晴れやかに物語の続きを告げ、ステージを後にした。

いま日本中のアーティストが答えのない問題に直面し、前例のない挑戦を余儀なくされている。天月もまた、自身初の無観客配信ライブを行うこととなった。しかし配信活動から始まり、歌い手として動画投稿をしてきた彼にとって、これは原点回帰でもあった。
当時と違うのは、配信を行う場所が自宅ではなくあの幕張メッセであったこと。一人ぼっちではなく、ダンサーやバンドメンバー、挙げきれないほどのスタッフを伴っていること。そして何より、彼の歌を心待ちにしているたくさんのリスナーが日本中にいることだ。彼のルーツに触れ、そこから歩いてきた長い長い道のりを感じることができる、貴重なライブだった。
セットリスト
8/29「Love&Pop」
ー映像「マサえもん登場!」ー
<OP>
01.かいしんのいちげき!
02.恋に溺れて
03.ライフ イズ ビューティフル
<MC>
04.小さな恋のうた
05.きみだけは。
06.ホシアイ
<Band&Dancer紹介>
07.月曜日の憂鬱
08.Sing! Swim! Swing!
09.カラフルタッグチーム
10.ファンサ
<MC>
11.キミトボク
12.Letters to me
<映像「10年間を振り返ってみて」>
13.流れ星
14.Dear Moon
<メイキング映像「みんなに出会えてよかった」>
EN-1.恋人募集中(仮)
EN-2.きっと愛って
8/30「Rock&Cool」
映像「マサえもん登場!」
<OP>
01.イデア
02.This Night
03.Mr.Fake
04.ヒロイックシンドローム
<MC>
05.小さな恋のうた
06.きみだけは。
07.ホシアイ
<Band&Dancer紹介>
08.儚きゴースティング
09.マリオネットラヴァーズ
10.Ark
<MC>
11.キミトボク
12.Letters to me
<映像「10年間を振り返ってみて」>
13.流れ星
14.Dear Moon
<メイキング映像「みんなと出会えてよかった」>
EN-1.スターライトキセキ
EN-2.Hello My Story
[DOUBLE ENCORE]
EN-3.きっと愛って