母が私の“私的な画像”を持っていた理由を、私は聞けなかった。
けれど、答えは別のところにあった。
父の遺品の中に、静かに、確かに残っていた。

仏間の押し入れにしまわれていた父の遺品。
香典返しのカタログの奥に、古びた箱があった。

中には、ネクタイ、腕時計、そして手帳が数冊。

その中の一冊を開いたとき、私は息を飲んだ。
そこには、見たことのない父の文字が走っていた。

「今日も彼女は笑っていた。何も知らないふりで、すべてを見ている」

「本当は、全部知っているのに」

「……化け物だ。怖い。彼女からは、逃げられない」

読み進めるたびに、背中が冷たくなっていくのを感じた。