長年の夢を叶えたその瞬間、私は心から拍手を送った。
…はずだった。
心のどこかで、「これが私じゃないこと」を受け止められなかった。
30代後半。
仕事は順調、友達もいる。でも、たったひとつ、“結婚”という枠だけが空白のまま。
「焦ってないよ」なんて、もう自分に言えなかった。
友人の結婚式――。
ずっと仲良くしていた親友が、ついに結婚した。
「本当に幸せそうだったね」
「ドレス、似合ってたね」
周囲の友人たちも、みんな笑顔で祝っていた。
もちろん、私もそのひとり。
だけど、心の奥で鳴り止まない音があった。
それは、焦りでも嫉妬でもない、“取り残された実感”だった。
20代の頃は、まだ余裕があった。
「結婚なんて、タイミングと縁だよね〜」と笑いながら流せた。
でも30代後半になった今――
その“タイミング”も“縁”も、
いつしか他人のもとに行ってしまったような気がしていた。
式の帰り道、ふとインスタを開くと、
そこにも“結婚報告”や“マタニティフォト”の投稿がずらりと並ぶ。
「全員が幸せで、全員がこっちを見てくる気がする」
そんな感覚に襲われて、思わずスマホを閉じた。