“彼”に似た横顔だった。
場所は、都内の再開発エリア。
タグには「現場バイト」「深夜作業」の文字。
「蓮くん、やっぱり消えてなかったんだ…」
名前は違った。
年齢も、雰囲気も少し違う。
でも、あの笑い方。
視線の向け方。
手首のホクロ。
私だけがわかる。
“彼”だって。
Aさんはその日から、
その建設現場の近くへ通い詰めるようになる。
毎晩、少しずつ近づいていく。
最初はコンビニの影。
次は向かいのビルの屋上。
そして、廃ビルの非常階段。
見える。
“彼”がいる。
声はしない。
でも、心の中でずっと話してる。