あの微笑みのあと、私は何をしていても、義姉の存在が頭を離れなかった。

家中に張り詰める“気配”。
見えない網のように、私の行動すべてが観察されている気がした。
でも、夫には言いづらかった。
彼の「気にしすぎ」という言葉が、まだ胸のどこかに刺さっていたから。
夜中ふたりきりの暗がりで私はそっと切り出した。

しばらくの沈黙のあと、夫はため息のように息を吐いた。

「うん…正直、昔からちょっと“変わってる”って言われてた」
「小学校の頃、同じクラスの子のことを観察して、ノートにまとめてたって、噂があってさ」
その言葉に、背中が凍りついた。
「観察…って、メモ帳みたいな?」
「たぶん同じ。姉ちゃん、昔から人間観察好きだったから」
そう、昔からだったのだ。