俺の名前は藤井陸。地方の冷凍食品工場で、夜勤のバイトを始めたばかりの浪人生だ。
作業終了のブザーが鳴ると、すぐに先輩の川村さんが声をかけてきた。
「じゃ、タイムカード切ってから掃除入ろうか。初日は一緒にやるからさ」

タイムカードを押しながら、内心で首を傾げた。 
それって勤務時間外じゃ……。
でも、他のバイトたちは慣れた様子で掃除用具を手に取り、黙々と動き出している。聞こえてきた声は、「今日はまだマシな方だな」というものだった。
床には油汚れがこびりついている。水拭き、消毒、備品の整頓。それなりに重労働だ。しかも、掃除の途中で社員の原田さんが倉庫からひょっこり顔を出し、「排水溝も確認しといてね」とさらりと言い残した。