新しいマンションは、最寄り駅から徒歩5分。
オートロック、宅配ボックス、バストイレ別。
贅沢とは言えないけれど、今の私には十分すぎる空間だった。

部屋は白を基調にしていて、家具は最小限。
誰かの視線がないだけで、空気がこんなに軽く感じるなんて。

コーヒーを淹れながら、私は深呼吸をした。
“あの家”のことは、ここでは何も思い出さない。
そう思っていた。

でも、午前11時。
ポストを開けたとき、“最初の違和感”が届いていた。