「ほら、清掃員にこっちは関係ないでしょ。清掃リストはそっち。よろしくね」

彼は話題を切り替えるようにリストを渡してきた。
私は何も言わずに受け取った。
使われていないはずの部屋の鍵が“使われている”。
そして、それは“少なくともフロントスタッフも知っている”こと。


何となくではダメだ。
“使われた痕跡”ではなく、“使った人物”を押さえなければ。
そうしなければ、また“清掃のミス”として片づけられてしまう。
私は静かにリストを持ってフロントを後にした。