株式会社矢野経済研究所が昨年発表した、国内の化粧品市場に関する調査結果によると、国内化粧品市場はコロナ禍からの回復基調が鮮明で、2023年度の市場規模はメーカー出荷金額ベースで前年度比104.6%の2兆4780億円と伸びている。製品カテゴリー別では、スキンケア市場が構成比46.6%(1兆1550億円)と最も高く、次いでヘアケア市場19.9%、メイクアップ市場18.8%、男性用化粧品市場5.4%、フレグランス化粧品市場1.3%と続く。
2023年5月に新型コロナウイルス感染症法上の位置づけが5類へ移行し、外出機会が一気に増加したことなどをきっかけに身だしなみへの意識も高まり、化粧品需要が増加したことに加え、原材料等のコスト高騰や製品の高付加価値化による製品単価上昇、インバウンド需要も順調に回復していることから、2028年度の化粧品市場規模は、2023年度比110.6%の2兆7400億円まで成長すると予測している。
また、異業種からの化粧品ビジネスへの参入も増えていることも市場拡大の大きな要因のひとつだろう。これまでにも、独自性のある商品展開やブランドストーリー、ビジョン、異業種で培ってきたマーケティング戦略などを武器にヒット商品を生み出し、成功を収めている企業は珍しくない。
例えば、写真フィルム製造会社である富士フィルムのオリジナルコスメブランド「アスタリフト」はその代表的な例だ。同社は写真フィルム製造で磨き上げたナノテクノロジー技術や、写真フィルムの主成分であるコラーゲン研究の知見、紫外線防御技術、光解析技術などを化粧品事業に応用し、主に40代以降のエイジングケアを意識する世代から大きな支持を獲得している。
また、日本酒トップメーカー、白鶴酒造の「うるおい日本酒コスメ」や「ドラマティックリペア」も異業種発の人気コスメだ。日本酒(コメ発酵液)には天然のアミノ酸が含まれており、肌の保湿力を育む力をサポートしてくれる。また、酵母や米こうじほか、酒粕に含まれる豊富な栄養素をスキンケアに活かしたたラインナップを展開している。
さらに白鶴酒造は今年6月、280年以上にわたって受け継がれてきた伝統ある発酵技術を美容に応用した新ブランド「itoshiro(いとしろ)」を立ち上げ、化粧品OEM/ODMで世界最大手のCOSMAX(コスマックス)社と共同開発した「itoshiroトーンアップ UVベース」をサロン専売品として新発売している。同製品は白鶴伝統の発酵技術とCOSMAX社のマイクロバイオーム研究を融合させた革新的な商品で、保湿しながら、毛穴が目立ちにくく、素肌から発光したような自然なトーンアップを叶えるスキンケア発想の化粧下地だ。ノンケミカル処方(紫外線吸収剤不使用)ながらもSPF50・PA+++でしっかりと紫外線から肌を守ってくれる。
「itoshiroトーンアップ UVベース」のようなサロン専売品は、一般の販売店などでは購入することができないものの、サロンスタッフが個々の肌質に合わせた商品を提案してくれるので安心できる。
このように、多様なバックグラウンドを持つ企業が参入することで、化粧品市場では今、既存の枠を超えた、新たな視点や革新的な製品がもたらされている。これは、消費者の選択の幅を広げるだけでなく、市場全体を活性化し、さらなる発展へと導くものだ。今後も、異業種からのユニークなアプローチが、化粧品市場の可能性を広げてくれることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)