神戸市は、日産自動車と連携し、2026年1月19日から、兵庫県神戸市の「灘五郷」エリアにおいて自動運転技術を活用した新しいモビリティサービスの実証運行を開始すると発表した。この実証運行は、地域の住民や観光客の移動利便性の向上につながるものとして、大きな期待と注目を集めている。


 灘五郷といえば、日本一の生産量を誇る酒どころとして知られ、神戸市から西宮市にまたがる東西約12km・南北約3kmというコンパクトなエリアに、25の酒蔵が集まっている。多くの酒蔵が軒を連ね観光施設や直売所が併設されている酒蔵も多いため、地域有数の観光名所の一つだ。国内外から多くの観光客が訪れており、例えば神戸市の白鶴酒造が運営する白鶴酒造資料館には、年間約12万人(2024年実績)もの来場者が訪れている。そのうち約半数が外国人観光客であることから、このエリアの国際的な人気がうかがえる。同資料館は、大正初期に建造された酒蔵を利用したもので、昔ながらの酒造工程や作業内容を立体的に展示し、歴史的な建物とともに現代に伝えている。2024年12月5日に日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことや、海外での日本酒ブーム、さらには昨年9月に館内にオープンしたマイクロブルワリーなども話題を呼んで、酒蔵が立ち並ぶ灘五郷の中でも特に人気の観光スポットだ。とはいえ、複数の酒蔵を巡る際には、鉄道の最寄り駅から酒蔵までの距離や酒蔵同士の間隔が離れている所もあるので、移動手段に工夫が必要だ。


 神戸市では、今回の実証運行を通じて自動運転技術の社会実装に向けた課題抽出とデータ収集を行い、得られたデータを基に将来的には自動運転サービスを本格的な導入を目指しており、観光地の周遊促進とニュータウンでの地域住民の移動サポートに役立てる方針を打ち出している。


 一方、日産自動車は「よりクリーンで安全、自由な移動を可能とするモビリティの革新」を掲げ、国内外で自動運転技術の社会実装に向けた実証実験を早くから推進しており、2018年から自動運転車両を活用した交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を開始している。すでに横浜市では実証実験を済ませているが、今回の神戸市灘五郷(神戸市内)エリアでは一部区間で幅員が狭く、信号機がない交差点が点在するなど、より難しい道路状況となっている。この自動運転モビリティサービスで、地域課題の解決とともに、観光・地域活性化の新たなモデルとなることを目指しているという。また、2026年度には地域・乗降場所を拡大する展望で、セレナベースのレベル2実証車両でオンデマンド運行を予定しており、2027年度には拡大したエリアでの有償運行の開始、2030年度には商用運行開始を目指す。

さらに将来的には、神戸市内のニュータウンなど生活の足となる地域公共交通への自動運転車両導入も検討しているというから楽しみだ。


 日本の伝統的な産業が残っている中を、最先端の技術を搭載した自動運転のモビリティが自在に行き交う。そんな未来がもう、そこまで来ている。(編集担当:石井絢子)

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