選挙の時と言っていることが違うのではないか。投票を終えた後、国会で始まる議論を見ながら、多くの方にとってこうした違和感を抱くことは少なくありません。
まず前提として、公約(マニフェスト)の法的な位置づけを確認しておく必要があります。日本には、公約の不履行に対して法的責任を問う制度は存在しません。憲法上、国会議員は「全国民の代表」であり、特定の選挙区や支持者との約束に法的に縛られるものではないと考えられているからです。
しかし、民主主義において公約は、政党が国民から権力を預かるための「契約書」としての重みを持ちます。そのため、政治家は当選すればいいと考えているわけではなく、むしろどうすれば公約を1パーセントでも形にできるかという、非常にシビアな交渉の中に身を置いています。
公約がそのままの形で実現されない最大の理由は、1つの党で世の中のすべてを決められるわけではないという国会の現実的な仕組みにあります。特に現代の日本政治において大きな壁となるのが「議席の数」と「連立協議」です。
例えば、高市政権が掲げる政策であっても、自民党が単独過半数を割り込んでいる現状では、連立を組むパートナーや、野党第一党である中道改革連合の強い反発があれば、すべてをそのまま通すことは困難です。
次に立ちはだかるのが「財源の壁」です。公約を1つ実現するには、時に数千億から数兆円単位のお金が必要です。明日からの国会でも、食料品消費税ゼロや2兆円規模の所得減税といった公約に対し、官僚組織や予算委員会から「財源をどこから持ってくるのか」という厳しい積算が突きつけられます。この予算編成の過程で、公約は理想論から「実現可能な実務」へと削ぎ落されていきます。
公約には、すぐにできることと時間がかかることがあります。既存の法律の運用を変えるだけで済むものは比較的守られやすい一方、国の根幹に関わるルール変更や、膨大な財源を必要とするものは、成立までに数年単位の時間を要します。
明日からのニュースで各党の主張がぶつかり合うのを見る際、ぜひ意識してみてほしい視点が1つあります。それは、その公約の「何パーセントが政府の決定に反映されたか」という点です。0か100かの結果だけを追うと、政治は失望の連続になってしまいます。しかし、A党の案にB党の主張が10パーセントだけ反映されたとしたら、それは「10パーセント分の公約の実現」と言えます。
公約を絶対の約束ではなく、合意形成のための「交渉のスタートライン」として捉えること。





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