今回のニュースのポイント


・みずほリサーチ&テクノロジーズなどの民間シンクタンクの試算では、ドル円が1ドル=160円程度で推移した場合、輸入物価の上昇を通じて1世帯あたり年間約9万円の家計負担増につながるとの見方が示されています。


・日本経済研究センターや大和総研などの研究報告では、生産拠点の海外移転により「円安が輸出数量を増やす効果」は限定的だとする指摘が目立っています。


・東京証券取引所の統計によれば、2024年夏には海外投資家が週次1兆円超の規模で売り越す事例もあり、新NISAを通じた個人マネーの流入がぶつかる構図が続いています。


 為替市場で1ドル=159円をうかがう展開が続くなか、株式市場では、日本銀行や民間シンクタンクのレポートでも「円安=株高」という従来の図式に揺らぎが生じているとの見方が示されています。理論上、円安は輸出企業の業績を押し上げますが、日本経済研究センターや大和総研などの研究報告では、生産拠点の海外移転により円安が輸出数量の増加に結びつく効果は限定的だとする指摘が目立っています。むしろ、ドル建て価格を据え置いたまま輸入コストのみが増加する構造的なリスクが意識されています。


 経済実態への負の影響についても、市場の関心が高まっています。みずほリサーチ&テクノロジーズなどの民間シンクタンクの試算では、ドル円が1ドル=160円程度で推移した場合、輸入物価の上昇を通じて1世帯あたり年間約9万円の家計負担増につながるとの見方が示されています。こうした物価高が賃金上昇を上回るペースで進めば、個人消費の冷え込みや中小企業の採算悪化を招き、日本経済全体の成長、ひいては株価の抑制要因となる可能性が指摘されています。


 こうしたなか、日本株のトレンドを決定づけるのは「投資主体の動向」です。2024年夏には、円相場やハイテク株安の影響で、海外投資家が日本株を現物・先物合計で1兆円超規模で売り越し、指数が短期間で大きく下落した週もありました。こうした動きは、東京証券取引所の投資部門別売買動向にも表れています。一方で、2024年に始まった新NISAを通じた個人マネーの存在感も高まっています。1~3月期の新NISA関連の資金流入について、日本株向けが全体のおおむね半分程度を占め、前年の数倍規模に膨らんだとする野村総合研究所などの調査もあり、海外投資家の売買と、新NISAを通じた個人マネーの流入がぶつかる構図が続いています。


 公募投信全体の残高も新NISA効果で増加しており、投資信託協会などの集計では、2024年に前年から3割前後増の30兆円台半ばに達したとされています。中長期的な「家計のリスク資産シフト」は、日本株市場において無視できないプレーヤーとなりつつあります。


 今後の焦点は、円安頼みの業績改善から、賃上げや設備投資を通じた生産性向上に裏打ちされた株高へ転換できるかです。メガバンク系リサーチや証券会社のエコノミストの見通しでは、2025年度にかけて為替が145円程度へ是正されるとのシナリオも描かれています。為替・金利・需給フローが連鎖的に動くなか、「円安=株高」という単純な見方ではなく、インフレや家計消費への波及を含めた多角的な視点が、今後の相場を読み解くうえで重要になると、証券会社のストラテジストやエコノミストは指摘しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部)

編集部おすすめ