サントリー・グループにとって2014年は1兆円を超す巨額買収の発表に始まり、12年にわたってローソン社長を務めた新浪剛史氏を新社長に迎えるなど、まさに激動の1年だった。今年度はビーム社買収効果で売上高が2兆4400億円に拡大し、総合酒類飲料メーカーとしてはキリンを抜いて国内首位になるとされる。
そのサントリーの社内ベンチャーとして1986年に設立し、フィットネス業界4位にまで成長したティップネス。グループのなかで手堅く利益を上げている子会社をサントリーが手放す。
ティップネスの売却先は日本テレビホールディングス。年内をメドに譲渡を終える。売却額は350億円とも伝えられるが、両社ともに金額を開示していない。ティップネスの2013年末での会員数は25万1000名。2013年3月期業績は売上高329億円、営業利益23億円と堅調というよりも好調だ。ただ、店舗数は60店前後と伸び悩んでおり、業界全体で総合型フィットネスクラブの出店余地はなく、新業態の「FASTGYM24」ブランドの出店に注力しているという。
国内フィットネス業界では再編が進んでいる。昨年7月に明治ホールディングスが明治スポーツプラザを業界2位のセントラルスポーツへ売却し、今年11月にはサッポロホールディングス傘下のサッポロスポーツプラザをダンロップスポーツに売却した。
子会社売却の理由について、サントリーは、「酒類、飲料というふたつの重点分野を中心に、グループ全体で成長を目指す。
サントリーは従来も酒類・食品・飲料以外の非中核事業の売却を進めてきた。収益の中心だったウイスキーの販売数量が激減し、業績が悪化した2000年代には、医薬品やゴルフ用品販売、出版、ハワイの不動産事業などから撤退した。今年に入り、外食コンサルティング事業からも撤退している。
その背景にあるのが、今年5月の米蒸留酒大手ビーム社の巨額買収だ。1兆6000億円というサントリーにとって過去最大の買収で、買収資金は借り入れでまかなった。そのため2014年9月現在の有利子負債は1兆8000億円規模に膨らんでいる。財務の健全化が緊急課題だ。
サントリーは、当面大きな買収はないとするものの、「ビーム社を買収したことは終わりではなく始まり」としており、佐治信忠会長も7月の社長交代会見で、「引退までの3~5年の間にもうひとつくらいM&Aを……」と述べた。サントリーとしても膨らんだ負債を早く減らさなければ、酒類業界のグローバルな再編の波に立ち向かえないという認識がある。

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