JR九州<9142>は長崎新幹線での利用を想定し、研究開発を続けていたフリーゲージトレインについて、導入を断念する方向で検討を進めていることが分かった。開発スケジュールが予定通り進んでおらず、安全性に対する確証が得られない中で、収益性も見込めないことが、導入断念の背景と考えられる。
フリーゲージトレインは、線路幅が異なる新幹線と在来線を車輪の幅を変えて直通できる車両であり、現在も開発途上にある。しかしながら長崎新幹線はフリーゲージトレインの導入前提での開業計画であり、JR九州が正式にフリーゲージトレイン導入の断念を表明すれば、今後長崎新幹線の着工計画にも影響が生じる可能性がある。
長崎新幹線は博多-武雄温泉間は在来特急を経由し、武雄温泉-長崎間を通常型の新幹線が走るリレー方式での暫定開業を予定している。フリーゲージトレインの導入が断念されれば、博多-武雄温泉間の従来型新幹線での開業を望む声が大きくなる可能性もある。
フリーゲージトレインは開発が続けられていたものの、2014年の耐久走行試験の開始直後に車軸付近にひびや摩耗が見つかり、安全性が確保できないとして耐久走行試験が2年以上中断している。
更に車両の構造自体が複雑であり、交換部品も含めた運用コストが新幹線と比べて遥かに高コストになると言われており、仮に安全面がクリアでき開発が完了しても経済性に懸念があった。
長崎新幹線は22年までに開業を予定しており、フリーゲージトレイン導入断念の場合でも、元来の計画自体がリレー方式であり、開業に直接的な影響は生じない。しかし将来的なフリーゲージトレイン導入を前提に、長崎新幹線は計画されていたため、JR九州が正式に導入を断念すれば、沿線自治体等から計画の見直しを求める声が上がることも想定される。長崎新幹線は在来型特急と新幹線が混在のリレー方式を最後まで貫くのか、それとも国の財政措置を受け博多から長崎まで新幹線の直通を再度計画することになるのか、今後の長崎新幹線をめぐる議論が再燃することも予想される。(編集担当:久保田雄城)

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