政府は新型コロナウイルスの変異株の広がりを受けて緊急事態宣言を延長した。変異株は従来のウイルスと比べ感染力が高いだけでなく若年層が重症化するケースが増えているとも言われる。
重症化リスクの高い感染者の早期特定に関し、AIを用いたシステムの開発が行われている。5月7日、医療ビッグデータ事業を手がける大手IT企業の日本システム技術が、慶應義塾大学および理化学研究所との新型コロナウイルスにおける重症化予測モデル開発に関する共同研究の中間報告を発表した。この共同研究は昨年2020年11月から実施されており、診断内容等の情報が含まれる匿名加工したレセプトデータや健診データ等を利用し、機械学習によって数分で重症化リスクの予測を行う手法を開発している。
データ解析では、主に若年層において重症化に繋がるサインをレセプトから発見する調査を実施し、その結果、性別間や年齢上昇による重症化リスクの関連性、および生活習慣病との関連性、年代層ごとの重症化リスク要因を検出した。この分析から得られた結果で構築された重症化リスク予測モデルによる実際のレセプトデータを用いたシミュレーションでは、「重症化する確率が高い」と判定された感染者の上位10%において実際に重症化していた割合が70%以上と正答率7割以上を記録した。今後レセプトデータがさらに増えることで、データ解析や重症化予測の精度が高まることも確認している。
今後の展望については、データ量の増加による精度向上や第2波、第3波の影響調査も踏まえた予測モデルの改良を進め、8月を目途に論文誌への掲載を行う予定で、また11月末に開催される日本薬剤疫学会での発表報告も検討している。実運用については、ワクチン接種の効果や研究内容の保険者提供も考慮しながら、自治体や保険者との共同研究も検討している。重症化リスクの高い者を早期に特定し早期治療に繋げ重症者数を減少させることが医療崩壊リスクを大きく減らすことは間違いない。