2014年に女子アイドル好きという共通点で何となく集まった仲間、なでksジャパン。モデル、振付師などが夜ごと集い、好きなアイドルについて語り合うこの集団から、『月刊エンタメ』12月号では、振付師の竹中夏海先生とモデルの日笠麗奈さんに登場していただき、2014年のアイドル界を振り返る対談を開催していただいた。
 ところが、2人のトークの熱さは編集部の思惑を遥かに超え、予定の取材時間を大幅にオーバー。『月刊エンタメ』本誌では誌面の都合でそのほとんどが掲載できなかった。そこでエンタメnextでは、内容量300%増し、ほぼ未公開の特別ver.をお届け! 女性ならではの目線に、目から鱗がドボドボ落ちること間違いなし!――2014年に女アイドルヲタ5人で結成されたなでksジャパンですが、どんな活動をしているんですか。 竹中 そんな大層な活動はしてなくて、ただの仲良しグループなんです。共通してアイドルが好きなので、友達同士でもメンバーカラー決めてみるか、とノリでちょっと遊び始めました。 ――やはりメンバーが集まるとアイドル話が中心なんですか。 日笠 そうでもないですね(笑)。 竹中 次は誰のライブに行くって話では盛り上がるんですけど、ライブ後に感想戦はほぼしないですね。 ――そこは男性ヲタと違いますね。 竹中 ライブ後にゴハンは行くんですけど、あくまでゴハンがメインです。 日笠 食事をする場所に移動するまでにアイドル話は終わるかなぁ。 竹中 アイドルを愛でる感じなので、好きな子に関しては全肯定なんです。
アイドル本人にモノ申すこともないし、接触も行かないので、仕切りや運営にイライラすることもないんです。 ――アイドルの発言から裏を読んだりはしないんですか。男性ヲタはけっこうしていると思うんですよね。 竹中 同性だし、近い道は通ってきたから、裏を読まなくても分かる、ところはあるかもしれないですね。 日笠 女性ファン同士だとそれを討論するまでもないんじゃないですかね。同じ女の子なら分かるよね、みたいな。もちろん正解かは分からないですけど、何となくは予想が付きますよね。 竹中 逆にグッズに関して執着は男性より強くて、あそこのグッズは可愛いって話はしますね。 ――実際に購入したアイドルグッズは? 日笠 リリスク(lyrical school)、Negicco。 竹中 クルミ(クロニクル)ちゃんも可愛い。リリスクのTシャツは何枚? 日笠 私は3枚ぐらい。 竹中 同じぐらいだ。
あとトートも買いました。Negiccoはスウェットとスマホケースも持ってます。 日笠 私はクルミちゃんのスウェットは予約中です。Tシャツは全種類あるかもしれません(笑)。 ――実際ライブに着ていくんですか。 二人 もちろん! 日笠 ライブのない日も着ています。 竹中 普段から着られるもの、持ち歩けるものが購入する基準ですね。 ――なでksジャパン結成元年となる2014年のアイドル業界を振り返っていきたいんですが、AKB48大島優子、モーニング娘。'14の道重さゆみ、アイドリング!!!の菊地亜美、私立恵比寿中学の瑞季、SUPER☆GiRLSの八坂沙織など、人気グループから中心的メンバーの卒業が相次ぎました。 日笠 私は、さゆ(道重さゆみ)の卒業が全てです! 竹中 さゆの卒業はモーニング娘。'14と言うより、アイドル界全体の出来事ですよね。後世まで語り継がれることだろうから、11月26日に横浜アリーナで開催された卒業コンサートは絶対に見ておかなきゃって気持ちでした。
――途中で道重さんが足を痛めるアクシデントもありました。 日笠 私は会場に行けなくてスカパーで観ていたんですけど、『ララピピ(ラララのピピピ)』が始まった瞬間にアップで顔が抜かれて「痛!」って表情を浮かべていたんですよ。よりによって『ララピピ』で、この表情か……って。ドラマティック過ぎますよね。ライブが終わった後も早く検証をしなきゃと思って、速攻で最初から観返しました。 竹中 正直、コンサートの演出自体は、個人的にはこうしてもよかったんじゃないかって思う部分もあったんです。例えばセトリ。スカパーで中継して、全国でライブビューイングもやって、いつもよりコンサートを観る人の数が多かった訳じゃないですか。だから、もっとベタにショーケースでいいんじゃないのかなとも思ったんです。 日笠 ベストメドレーを期待していたところもありましたよね。 竹中 ただ、さゆの一挙手一投足が良かったし、スピーチもさすがでした。その素晴らしさは演出を超えていたので、全体としては歴史に残る素晴らしい卒業公演でした。
次ページ/夏のリリスク、冬のNegicco――では2014年でベストアクトを挙げるとしたら? 竹中 早い者勝ちで私が先に言っちゃっていい? 日笠 被る気がしますね(笑)。 竹中 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014』のリリスク(2014年8月10日に出演)。 日笠 やっぱり! ですよね。すごく良かった。 竹中 2014年は何度もリリスクのライブを観に行ったんですけど、この日は持ち時間が少なかったからメドレーだったんです。 日笠 アイドル枠で6組が連続で出たんですけど、一組の持ち時間は15分ぐらいでした。 竹中 そのメドレーがリリスクで観たい曲を全部やってくれたっていうぐらい選曲が良くて、曲の繋ぎもカッコ良くて。メンバーの状態もすごく良くてキラッキラでした。あまりにも良過ぎて、しばらく余韻に浸ってボーッとしたかったんですよ。ところがリリスクの次に(武藤)彩未ちゃんが出てきて『なんてたってアイドル』を歌ったんです。それを聴いた瞬間、「やっぱアイドルだよね」って泣いちゃいましたよ(笑)。 ――リリスクの魅力はどこにあると考えていますか。
竹中 ラップアイドルって王道とはちょっと違うしグループ数も少ないですけど、無理矢理やらされている感がないんですよ。メンバー全員が自然体で楽しそうにしています。あと曲がいいですよね。特にtofubeats作品! 中でも2014年は『FRESH!!!』! 日笠 2014年の夏は『FRESH!!!』でしたよね。 竹中 そして冬はNegiccoの『光のシュプール』! 日笠 初めて『光のシュプール』のMVを観た時、イントロが流れた瞬間に「トップテン入りは大丈夫!」って思いました。Negiccoは曲も良いですけど、衣裳も含めてアートワークも素晴らしいですよね。 竹中 本当に好きな人が集まって作っているのが伝わってきます。それだけNegiccoに人を引き寄せる力があるんでしょうね。 日笠 3人とも人柄が良いですからね。 竹中 Negiccoは最近同性人気も高くて、ちょっと前にリリイベに行ったら若くてこじゃれた女の子のファンがすごく増えていました。 ――日笠さんはリリスクの他に印象に残っているライブはありますか。 日笠 でんぱ組.incの武道館(2014年5月6日開催)ですね。
2014年はスマ(スマイレージ)、9nine、チームしゃちほこなど、アイドルを観に何度も武道館に行きました。3月にももクロちゃんが国立競技場で単独公演を行いましたけど、2014年はアイドルが目標に掲げていた場所で夢を叶える1年だったと思うんです。だから何かが終わっちゃうのかなって気持ちもあったんですけど、でんぱ組.incの武道館ライブは“涙”って感じじゃなくて、あんまりドラマ性に頼らず、ただただ楽しかったんです。ちゃんと次を見据えているステージでしたよね。それが伝わってきたので、まだまだアイドルは続いていくんだなって。7月15日のスマの日本武道館も感傷的ではなく本当に楽しかったので安心しました。 ――武道館に向けてドラマを作る時代が終わったとも言えますよね。他に2014年で良かったなと感じたアイドルはいますか。 日笠 私はアイドルネッサンスですね。持ち歌が全てカバー曲なのも斬新だし、選曲も絶妙なんです。 ――ロック系のカバーが多いですけど、ちゃんとアイドル曲として成立していますからね。 日笠 アイドルっぽいアレンジって訳でもないんですけど、あの子たちが歌うと、ちゃんとアイドル! っていうのが面白いですよね。あと運営の愛も感じます。常に舞台裏でスタッフの方がカメラを回しているんですけど、それを全てYouTubeにアップして見せてくれるのも嬉しいですよね。メンバー全員、楽しそうにやっているし、伸び伸びと育っている姿に癒されます(笑)。 ――一種の親心ですね(笑)。竹中先生はどうですか。 竹中 私はドロシー(Dorothy Little Happy)ちゃんやチキパ(Cheeky Parade)など、中堅どころを再発見する1年でした。先ほどの武道館の話もそうですけど、いろんなアイドルグループが物語を作り出そうとして、ありとあらゆることをしてきたじゃないですか。 ――ほぼ出尽くした感はありますよね。 竹中 ドロシーちゃん、チキパは出尽くす前に出てきた子たちですよね。それぞれカラーは違うけど、奇抜過ぎず、ちゃんと自分たちのスタイルがあって改めて良いなと思ったんですよね。私はアイドルを学校に例えるのが好きなんですけど、チキパは中学のイケてる男子サッカー部っぽいなって。ちょっとチャラめな可愛い顔をした男の子たちがいっぱいいて、誰か一人が好きと言うよりは、まとめてカッコ良い、みたいな。もしくは誰か一人に告白してフラれたいなって思う。恋が叶っちゃダメなんです(笑)。 日笠 あくまで追いかけていたいんですね(笑)。 竹中 一方のドロシーちゃんはカトリック系の女子校に通っていて、聖堂でお参りしてから授業に出ている感じがする(笑)。 ――分かるような気がします(笑)。 次ページ/2015年、革命児になるのは誰?――グループとしてではなく、個人で注目しているアイドルはいますか。 竹中 スパガ(SUPER☆GiRLS)の(浅川)梨奈ちゃんですね。コピンクスで一緒にお仕事をしたんですけど、アイドルに対する愛情の深さがすごいんですよ。今はアイドルヲタアイドルのポジションって珍しくないですけど、それとは一線を画すものがある気がします。スパガはもちろん、アイスト(iDOL Street)全体、ひいてはアイドル全体への愛情が深いんです。あの子は革命児になるんじゃないかなぁ。アイドルグループで最終的に注目されるのって愛情のある子だと思うんです。それは、指原(莉乃)さん、さゆ、ねむきゅん(夢眠ねむ)などに共通していることです。メンバーのことをすごく見ていて、愛していて、自分もアイドルなんだけどメンバーの良いところを伝えたくてしょうがない、みたいな。梨奈ちゃんは2014年にスパガに加入したばかりの第2章メンバーですけど、新メンバーというポジションでありながら、それができているのがすごいなって。先ほど挙げた3人ってポジション的に包容力のあるお姉さんじゃないですか。梨奈ちゃんは年少として年上のメンバーばかりのグループに入ったからどんな化学変化を起こすのかな、と思っていたんですが、見事に隅々までスパガへの愛情が行き渡ってるなぁと。あんな風に懐かれたらメンバーは受け容れるしかないだろうなと思います(笑)。ゴマキ(後藤真希)みたいにセンターに置いて輝く存在ではなくて、指原さんやさゆみたいにジワジワと、上に立った時に上手くグループが循環していくような存在になるのではないでしょうか。 ――大絶賛ですね。日笠さんはどうですか。 日笠 私は歌の上手い子が好きで、アイドルネッサンスの石野(理子)さんは歌唱力が圧倒的ですけど、あくまでグループ推しなんですよね。アイドルネッサンスってボケとマジメしかいないんですよ。ツッコミのできるメンバーがいないから、いろんなボケが空中に散らばっているんです(笑)。そういうメンバーの関係が愛おしいんですよね。歌唱力で言うと、たこやきレインボーの清井咲希ちゃんに注目しているんですけど、めちゃめちゃ声がエモいんですよ。 竹中 落ちサビ声だ。 日笠 そうそう。初めてたこやきレインボーのライブに行った時のことなんですけど、まだ歌割りが分からなくて、落ちサビで「咲希ちゃん来い!」って願っていると、ちゃんと来るんですよ(笑)。 ――年々、アイドル現場に女性ファンが増えていますが、2014年は特にそれが顕著だったような気がします。女性ファンのお二人はどのような背景があると考えていますか。 竹中 AKB48のブレイクでアイドルファンの母数が飛躍的に増えて、メンバーそれぞれの顔を認識できるももクロちゃんが出てきた。そこからアイドルには選択肢がいっぱいあるんだって女の子にも拡がっていったのかなと。あと最近は新規でアイドルに入る時の敷居が低くなっていますよね。 日笠 お試しシステムがいっぱいあるんですよね。YouTubeで動画を見て気になって、リリイベに行って無料で遠くから観て、みたいな段階を踏める。あとアイドルがロック系のイベントで対バンする機会が増えたのも大きいと思います。 竹中 アイドルとロック、どっちも好きって層が増えましたよね。 日笠 なでksのメンバーでも、もともとロック好きでアイドルにハマった子が二人いますからね。 竹中 先ほどもお話しした『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014』では、リリスクちゃんとtofubeatsさんがスペシャルコラボをしていました。どっちかが好きだと親和性が高いから、どっちにもハマるんですよね。 日笠 女性ファンが増えたことに関しては単純に嬉しいし、その流れは2015年も続くと思います。 〈インタビュー・文/猪口貴裕 撮影/西邑泰和〉 猪口貴裕 実話誌から飲食系の業界誌まで節操なく執筆しているフリーライター。最初に好きになったアイドルは斉藤由貴、心の師と仰ぐアイドルはメロン記念日。
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