【前編はこちら】オールナイトニッポン元チーフディレクター・石井玄が語るラジオ業界奮闘記「番組終了は僕の責任だと後悔」
【写真】数々の人気番組を手掛けたANN元チーフディレクター石井玄
――『オードリーのオールナイトニッポン』にはADから関わっていたそうですが、長く近くにいて若林(正恭)さんの変化は感じましたか?
石井 若林さんはいつも悩んでいるし、いつも考えているからアップデートされているんだと思います。ラジオについても、お笑いに関しても、人間としても諦めてない。本人も「思考が止まらないのがつらい」と話していらっしゃいます。僕の仕事の仕方は、星野(源)さんと佐久間(宣行/元テレビ東京プロデューサー)さんと若林さんから大きな影響を受けていると思います。
――お三方は仕事につながる話もしてくれますよね。
石井 9月7日の『星野源のANN』で星野さんと若林さんが話したことなんて、まさにそうですよね。「レベルが高すぎて理解してもらえるのかな」と思ったところに、佐久間さんから「これはすごい話だ」というLINEがきました。3人とも常に思考し続けているんですよ。
――9月7日の『星野源のANN』は、惹かれ合っていた若林さんと星野さんが邂逅した瞬間を聴くことができた喜びがありました。
石井 僕も感動しました。
――若林さんと星野さんもそうですし、9月8日の『佐久間宣行のANN0』のゲストが三四郎だったり、今のANNは横のつながりを強化している印象があります。
石井 過去にも同じようなことはやっていたんですけど、2組ずつ出演する「交流戦スペシャル」をやっていたJUNKに比べると印象は薄くて。だから、JUNKのやり方をパクりました(笑)。ANNのほうがジャンルの違う者同士が交わるから、お笑い同士のJUNKより効果が大きいと思うんです。いつもと違うファン層が聴いてくれることで、ANN全体を聴いてくれる人が増える。それに、ブッキングも話が早いですから(笑)。
――石井さんは2020年8月からニッポン放送に転職して、エンターテインメント開発局エンターテイメント開発部に配属されました。佐久間さんは現場を続けたいからフリーになったそうですが、ディレクターを続ける選択はなかったんでしょうか?
石井 以前は、僕も佐久間さんのようなタイプだと思っていたんです。
「TBSラジオもいいな」「TOKYOFMもカッコいいな」なんて考えたんですけど(笑)、ニッポン放送の中途採用試験に受かって、自分の能力が活かせる場所として今の部署に配属されました。今は「演出」ではなく、外側からラジオを盛り上げたいんです。佐久間さんはクリエイターで、企画を考えて実施する人だけど、僕はプロデュースのほうが向いていると思ってます。ディレクターあんまり向いてないと思っていたので
――番組を終わらせないためにも、イベントやグッズの展開に力を入れているんですか?
石井 自分がリスナーだとしたら、楽しみながら番組を応援することができるならうれしいだろうなって。僕自身、大学時代に聴いていたラジオがイベントやグッズを展開したら、参加したり買っていたりしていたと思うんです。最初の話に戻るんですけど、ラジオは「素敵な思い込み」ができるメディアなので、リスナーが「僕が支えなきゃ」と思って動くことが、番組にいい効果をもたらしてくれるんです。
それと、スタッフを守りたい気持ちもあります。特に放送作家は基本的にフリーなので、ラジオで食えなくなってやめてしまえば、困るのはニッポン放送ですから。コンテンツを生み出した人にはしっかりギャランティを払いましょうと。ディレクター時代は受け身でしたけど、今はコンテンツを生み出す部署にいるので、出演者だけでなくスタッフにも還元できる仕組みを作りたいと思ったんです。
――ディレクターとして「やれることはやった」けど、プロデューサーとしてはまだまだやれることはありそうですか?
石井 そうですね。番組イベント以外にもやれることはありますから。例えば、オリジナルの舞台やイベントの題材を「ラジオ」にして、「ラジオ」に還元できたらいいなと。演者としての佐久間さんとしか仕事をしてないので、クリエイターの佐久間さんと仕事をしたい気持ちもあるんです。地上波は後輩たちが頑張っているので、僕は他の部分で力になることで、業界全体を盛り上げたいと思っています。
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