【写真】どこかぎこちない? 笑顔でインタビューに答える後藤拓実
――今回刊行した初エッセイ集『これこそが後藤』は『小説現代』の連載が元になっていますが、それまでネタ以外の文章を書くことはあったんですか?
後藤 ほぼネタしか書いたことがなかったです。連載当初は書くネタもあったから楽しかったんですけど、ネタ切れしてからは、担当編集の方にお題をもらって書いていました。
――序盤は日常生活で考えたことを題材にしたエッセイが並びますが、書くことで日常生活の見え方は変わりましたか?
後藤 これがね、あんま変わんなくて。書いている最中は、「日々そういうアンテナを張って生きよう」って思うんですよ。でも書き終わると、そんなこと眼中になくなるっていうか。あんまりアンテナを張らずに締め切りの日が来て、「忘れてたー」というのが(連載していた)1年間続いた感じです。あと日常でネタになるようなことって、漫才のネタに持っていかれるので、エッセイに書くことがなくなるんですよね。
――漫才のネタは後藤さんが全て書いていらっしゃるんですか?
後藤 そうですね。他の2人は全然干渉してこないです。
――それは結成当時から?
後藤 ずっと僕です。僕がネタを書いた方が面白いんで(笑)。
――ネタを作る上で影響を受けたものはありますか?
後藤 トリオ漫才なんで、あまり影響って受けようがないんですよね。コンビ漫才は参考にもならないというか、別のタイプの面白さだなって感じでしか見てないです。
――コンビ漫才をやりたいと思ったことはないんですか?
後藤 いまだに、思うことはありますよ。もともとトリオになったのも、僕が断れない性格だったというのもありまして。
――と言いますと?
後藤 養成所(ワタナベコメディスクール)の時に、都築(拓紀)と石橋(遼大)から別々に声をかけられて、2人にOKって言っちゃったという経緯がありまして(笑)。ネタ作りに苦労している時は、そんな昔の話を思い出します。ネタは2人の方が書きやすいと思うんです。以前書いたネタで、完全に石橋が出てこなかったときもあったぐらいで。
――ネタを書いている途中に、石橋さんが出てこないなって気付かなかったんですか?
後藤 気付かなかったです(笑)。そういうことは多々あります。そういうときは無理矢理、間に石橋の相槌だけ入れてなんとかします。
――相槌だけで、そこから展開させないときもあるのでしょうか?
後藤 ありますね。
――それで成立するのもすごいですよね(笑)。石橋さんからクレームはないんですか?
後藤 ないです、ないです。
――漫才とコントではネタ作りは違うものでしょうか?
後藤 一緒だと思います。僕らの漫才は、ちょっとコントに近い部分があるんで。
――四千頭身はネタ番組に出るたびに、新しいネタを披露している印象が強いんですが、どれぐらいのペースでネタを書いているんですか?
後藤 昔はけっこう作ってたんですけど、今は月に1、2本とか。単独ライブでバッと下ろす感じなんで、決まったペースはないです。
――後藤さん1人でネタを書いている上に、バラエティに引っ張りだこなのに、よく毎月、新ネタが書けますね。
後藤 いやいや。もっと作っている人はいると思いますよ。
――後藤さんは『IPPONグランプリ』にも出場経験がありますが、大喜利は得意ですか?
後藤 その日によるのかも。食後だったら得意ですし、寝起きだったら不得意ですし、体調によりますね。
――ピンだとプレッシャーを感じそうですが……。
後藤 いや1人の方が楽しいですね。ぜんぜん楽しい! 都築と石橋がいるとトリオのことを考えてしまうので。
【中編】四千頭身・後藤が語る友達「地元の奴らに“変わったな”って思われるのが嫌なんです」はこちらから
【後編】四千頭身・後藤「お笑いの道へ入ったのは流されて、当時好きだったのはあばれる君でした」はこちらから
▽『これこそが後藤』(講談社)
四千頭身・後藤拓実初のエッセイ集。テーマは「移動中後藤」「早起き後藤」など身の回りのことや、「小学生後藤」「三茶後藤」など生い立ちや住まいのこと、「第七世代後藤」や「後藤が好きだったお笑い」などお笑いのことまで多岐にわたる。俳優のムロツヨシ、作家の武田綾乃との対談も収録されている。お母様・後藤照恵さんによる推薦文にも注目。