3月3日、日本武道館で「Berryz工房ラストコンサート2015 Berryz工房行くべぇ~!」が行われた。彼女たちはこのコンサートでBerryz工房としての活動に無期限活動停止という形で、区切りをつけた。
 コンサートは本当に楽しかった。花柄のワンピースからドレスへの早着替えが魔法のようだった『21時までのシンデレラ』、お猿さんの格好での登場にファンから大歓声があがった『行け 行け モンキーダンス』、2005年の石村舞波卒業公演でも歌われた『Bye Bye またね』。デビュー曲『あなたなしでは生きてゆけない』から、これまで続けてきたアイドル人生を歌った『普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?』と続いたのは、それぞれの曲に意味が生まれ、とても感慨深かった。  この3時間のコンサートで、アイドルらしいかわいい曲も、Berryz工房ならではの迫力のあるパフォーマンスが見れる曲も、そしてコミカルなおふざけ満載の曲も、全部を見せてくれた。そのすべてがBerryz工房の魅力だ。  Berryz工房は、シルエットだけで誰かが分かるくらい、1人1人の個性が際立っていた。最年少の菅谷梨沙子は、小さいころから天使のようにかわいくて、メンバーみんなの妹のような存在。渋く迫力ある声がBerryz工房の歌ではおなじみだったけれど、この最後に歌われた『Love together』で、か細く消え入ってしまいそうな声で歌っていたのが印象的だった。涙を流しながら歌う姿が愛おしすぎて、胸が苦しくなった。恥ずかしがり屋なところもあるけど、6人のお姉ちゃんとのおふざけに楽しそうに参加する菅谷の姿を見られることは、いつもなんだか嬉しかった。  熊井友理奈は、クールビューティーな見た目とギャップのある、マイペースさがずっと愛され続けてきた。それでメンバーにいじられることも多かったけれど、それを丸ごと受け入れ、さらに周りを楽しませ、自分も楽しんでしまう彼女のやわらかい雰囲気は見ているだけで心地よかった。
そしてそのマイペースさを保ち続けられるのは、熊井の持つ芯の強さもあるはず。プロデューサーのつんく♂が彼女について「最初から今日まで一貫して自分を持ってたような気がする」とコメントしているくらい、わたしたちが知っている以上に彼女は強い女性なのかもしれない。これからもENJOYの精神で、真っすぐに歩み続けてほしい。 次ページは、Berryz工房を力強く支えた年長メンバーたち知れば知るほど愛おしくなるBerryz工房のメンバーたち  夏焼雅は怖いと思われることもあるけれど、優しすぎる人。彼女がメンバーや後輩の涙をふいたり、頭をなでているのをときどき見るけれど、普通ならちょっとやりづらいこと。でも、それをさらりとできるのが夏焼雅。そして誰よりもアイドルであり、プロ意識の高い人。歌詞に合わせた仕草や、手や顔の角度ひとつとっても、女の子らしい。それを無理なく、というか自然にやってしまう根っからのアイドルだ。そしてプロと言えば嗣永のことがあがることが多いけれど、夏焼も負けないくらいプロ意識が高く、『Love together』で最後までしっかり歌い続けた、夏焼と嗣永の姿はカッコよかった。 須藤茉麻の豪快さには、みんなが助けられていた。“Berryzの母”と呼ばれていた須藤は、メンバーにもファンにもずっと頼りにされてきた。
そんな彼女からの「こんなに素敵な空間を守ることができなくて、本当にごめんなさい」という一言は、重みがあった。クールな彼女は、どんなこともどんと受け止めているように見えたけれど、それはBerryz工房という大きな支えがあったからなのかもしれない。彼女が「アイドルに興味がなかった」と話したのは笑ってしまったけど、「苦手だった歌やダンスもいつしか自分が一番幸せだなって感じるものになった」という言葉は、ファンとしてすごく嬉しいものだった。  Berryz工房の“真剣にふざける”を体現していたのが、徳永千奈美。そんな彼女が「明日からメンバーがバラバラになると思うとすごくさびしい」と涙を見せたのは、このライブで一番切ない場面だった。ずっとふざけていたい、と話していたけれど、それはきっとBerryz工房でなければ意味がない。もう大人と言われる年齢でも、“大人になること”に常に抵抗しているように見えた徳永。でも彼女らしくいられれば、それだけで大丈夫。今後、ハロー!プロジェクト・アドバイザーへ就任することが決まっているが、徳永がいることで救われるハロプロメンバーは多いはずだ。  嗣永桃子は、嗣永桃子を貫き通した。今となってはあのキャラクターも定着し、メンバーも扱いを心得ているけれど、昔は疎ましく思われることもあっただろう。実際、徳永は彼女のことを「苦手だった」と話していた。
どう思われても嗣永は自分のアイドル像を守り、どうしたらBerryz工房が楽しく、面白くなるのかを試行錯誤し続けた。Berryz工房のこの形が出来たのは、彼女のキャラクターや頭の良さ、そしてグループへの愛が大きく作用していると言っても過言ではないはずだ。「ももちの大好きなBerryz工房を大好きになってくれて、本当にありがとうございました」と話した彼女は、いつでもみんなのアイドル、かわいいももちでいてくれた。  そしてキャプテンの清水佐紀は、女性らしく、みんなに愛される人。「キャプテンとして何もできてないんじゃないかなって思う」と話していたけれど、ものすごく頼もしく、カッコいい女性だ。個性的なメンバーを11年間まとめてきたってだけで、無敵だと思う。そして清水と言えばダンス。昔からダンスがうまいと言われていたけれど、今はドキドキするくらいに色気が増している。今後ハロー!プロジェクト・アドバイザーとしてどういった形で関わっていくのかは分からないが、彼女のダンスはまた見たいし、あのダンスの技術や表現力を後輩たちに伝えていってほしいなと思う。 次ページは、好きなことばかりじゃなかった11年間アイドル・Berryz工房は、今までもこれからもわたしたちのヒーロー  モーニング娘。やハロプロの先輩たちに憧れ、小学生で夢を叶えてしまった彼女たち。
そこから先のことなんて考えてなかっただろう。夏焼が「小さいころはステージで歌を歌って、キラキラした衣装を着て、好きなことばっかりできるって思ってナメてました」と言っていたけれど、11年間の活動でやってきたのは、好きなことばかりじゃなかった。それを、キレイごとだけじゃなく「つらいこともたくさんあった」と素直に話してくれるのが、彼女たちらしさだ。  Berryz工房はいつもかわいくて、いつもかっこいい。そして、正直でユーモアを欠かさない。年を重ねて自分らしさを理解し、グループとしての色が固まり、それを基盤にした楽しいステージを見せてくれるBerryz工房だから、ここからもっと面白くなるな、とこの先の活動を楽しみにしていたところもあった。でもこの無期限活動停止という決断は、メンバーみんなが20代の大人の女性になったからこそできたことだろう。いつか本人たちから、あのときそう決めてよかった、と聞けることを願ってる。  独自路線を行く人たちだから、もちろん受け入れられないこともあっただろうけど、己を曲げず、大の大人たちもひれ伏しちゃうくらい、いつも堂々としていた。『cha cha SING』の「踊る阿呆だけど ただのバカじゃない」というフレーズがぴったりだった。ファンがアイドルへ抱く感情は、守ってあげたいとか、支えたいと思うことが多いけど、Berryz工房に対しては、「この人たちについていきたい」と思った。アイドルだけど、わたしたちのヒーローでもあった。
 彼女たちはライブの最後に、『Bye Bye またね』を歌ってくれた。そして7人とファンで一緒に「また会えるよね」と歌った。無期限の“活動停止”だから、もしかして、もしかしたら、またあの7人に会えるのかもしれない。  コンサートが終わって会場に出ると、雨が降っていた。晴れ女集団・Berryz工房の涙かな、と思った。これからそれぞれが歩む人生が、幸せなものでありますように!東海林その子 アイドルが大好きです。アイドル、ファッションなどに関するライターをやっています。
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