【前編はこちら】在日クルド人を描く映画に出演・奥平大兼「日本にこういう境遇の方が居るとは…」
【写真】日本アカデミー賞新人賞・奥平大兼
──今作は奥平さんにとって本作は、2作目の映画なんですよね。
奥平 これまで、ありがたいことに様々な現場に行かせていただいて、まだ公開してない作品もあるので、自分でも「まだ2作目なんだな」と思います。初めて出演した映画『MOTHER マザー』の撮影が3年前にあって、それから色々なドラマに出させていただきました。今回の撮影は『MOTHER マザー』の公開から1年後だったので、当時とは考え方も持っている知識も変わっていて、色々と考えすぎてつまずいたこともあったんです。監督に相談して、アドバイスをいただいて、考えを改めるきっかけにもなりましたね。
──つまずいたというのは?
奥平 「映画に帰ってきた」という気持ちが強かったので、すごく張り切ってしまい、自分が何をやりたいのかがわからなくなってしまったんです。『MOTHER マザー』の後、賞レースがあったりドラマやCMに出演させていただいたりしたことで、自分を評価していただく機会があったんですが、自分にはもう一度同じようにできるという自信がないことを評価していただくことに複雑な気持ちもあったんです。
贅沢ですけど、素直に喜べなかったんです。たから、評価してくださった方々にどうやって自分を見せたらいいんだろうと、変に考えすぎてしまっていたんですよね。自分では納得いかなかったのに、現場ではOKが出たりして「何でだろう」と思う時もありました。
──大型新人として一気に注目が集まりましたもんね。
奥平 今まで、特に自分がプレッシャーを感じるとは思っていなかったんですが、無意識に感じていたのかもしれません。評価していただけれるのは本当にありがたいことですけど、その反面、どこかで「もっと頑張らなくちゃ」と思っていたんです。そのタイミングでまた映画の撮影がある、となったのが今作でした。監督にお話をすることで、リセットできてよかったです。もしそのままだったら、正直、今どうなっているかわからなかったと思います。
──そうだったんですね。この撮影からも少し時が経って、現在の奥平さんは俳優としてどういう心境ですか。
奥平 川和田監督に話してからは結構吹っ切れています。どの作品もその時にしか出会えないものなので、今決まっている作品や今撮っている作品を大事にしよう、という考えです。いまは“なにがなんでも賞を獲る”というより、その日、その時に撮るシーン一つ一つを大切にし、自分なりにできる限り良いものにする、ということだけを考えようと思えるようになりました。僕はいま俳優としての明確な目標があるわけではないので、これが目標がない人なりのベストなのかなと思います。
──最後に、奥平さんの思う今作の見どころを教えてください。
奥平 サーリャが、コンビニでおばあちゃんに話しかけられるシーンがあるんですけど、そこはちょっと考えさせられるシーンだなと思いました。あの場面に出てくる人たちは誰も悪くないんですけど、善意がゆえに傷付く人がいる、ということを知れるのは、すごくいいシーンなのかなと思います。本当に何気ないシーンなんですけど、すごくちゃんとしたメッセージ性があると思います。
──ありがとうございました!