【写真】小学校の新米教師役を演じた井上小百合、撮り下ろしカット【8点】
──夏休みの自由研究として映画製作に励む子どもたちの姿を描いた映画『ラストサマーウォーズ』。井上さんは、子どもたちをサポートする映画好きの担任、土方先生を演じられています。先生役を演じるうえで意識した部分はありますか。
井上 土方先生は新米教師で、結構ミスや抜けているところがある子なんです。教師としてしっかりとした人、というよりは子どもたちにとっては一番近い存在。学校という教育の場で一番親身になってくれる大人なんじゃないかなと思って、子どもたちとのコミュニケーションを大事に演じていきました。
最初は子どもたちも緊張していて、どういう風に距離を縮めていこうかなと思ったんですけど、宮岡(太郎)監督が一緒に話しかけてくださったり、子どもたちと話す場を作ってくださったりして。「好きなテレビ番組はなんですか?」というようなことから話しかけて(笑)。ちょっとずつ打ち解けていきました。
──演じる土方先生との共通点、似ている部分を挙げるとしたら?
井上 子どもたちに向かって「こんなところでボーっとしていないで遊びな!」というセリフがあったんですけど、わりと私もそういうアクティブなタイプ。
あとは、映画好きという部分も共通点ですね。空き時間に監督と今年観た面白かった映画の話題で盛り上がったり、お互いにおすすめの作品を教え合ったりして。楽しかったです。
──演じるうえで監督からリクエストされたことはありましたか。
井上 そこまで具体的な指示はなかったと思います。宮岡監督は「いいですね!」とすごく褒めてくださる方。例えば、私が寝坊しちゃうシーンでハッと電話を取って「忘れてました!」と髪をかき上げたら「それ、いいですね!」とすぐ採用してくださったりして。一つ一つ、お芝居のいいところを見つけて褒めてくださるので、逆に「これで大丈夫かな」と心配になるほどでした。
──撮影現場で印象に残っていることは?
井上 とにかく子どもたちがかわいかったです!ロケバスで移動するだけなのに、子どもたちは遠足みたいに毎日楽しそうに現場に向かうんです。アイスを食べるシーンがある日なんて、朝から「何味のアイスかな~」って。すごくかわいくて。
──この映画をどんな方に観てもらいたいですか。
井上 最初に台本を読んだとき、子どもたちのまっすぐさをおもしろおかしく表現している部分に楽しさを感じると同時に、そんな子どもたちの姿を見て周りの大人たちも成長していく、という過程がすごく素敵だなと思ったんです。子どもたち主体でかわいくて面白い、というだけじゃなくて大人が観てもいろいろ感じるものがある深い作品だなって。
私の演じる土方先生には、もともと映画監督になりたかったというバックボーンがあります。紆余曲折あって今は教師の仕事に就いているという人なんですけど、夢半ばで諦めてしまったという過去があるので、まっすぐに映画を作りたいという夢に向き合う子どもたちを見ながら、もう一度自分を見つめ直していくんですね。
だから、土方先生のように何か憧れや夢があったけど、いろんな壁にぶつかったり、環境的に難しかったりで諦めてしまった人に観てもらいたいなと思います。大人になると現実的になってしまう部分もあるけど、この映画は「何かまだ出来るかもしれない」と自分の人生を振り返れる作品になっているのかなって。あとは、お子さんを持つ親御さんにも観ていただきたいです。「あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ」っていうのは、果たして子どもを守る正しいことなのか。そういったメッセージも詰まっています。
──土方先生のセリフもメッセージ性が強く、子どもたちの心に刺さるものが多かったように思います。
井上 いっぱいありますね。最近、自分のことが少しずつ分かってきた気がするんですけど、そのなかでも伸ばしていきたいなと思うところを具現化して、もっといろいろやってみたいと思うようになったんです。そのためにも、自分をまず整えることをやらなくちゃいけないなって。朝昼晩ちゃんとしたご飯を食べるとか、必ず朝日を浴びるとか。1日の終わりに嬉しかったことや感謝したことをノートに書いて寝るとか。いろんなことに「やるっきゃない!」と思って過ごしています。
あと、この映画に感化されてテナーサックスの教室に通い始めました。そういえば、私も諦めていたことあったなと思って。学生時代にテナーサックスをやっていたんですけど、当時、ジャズの映画を観て「この楽器がやりたい」と思って始めたんです。でも、私が通っていた学校はクラシック専門で、一度もジャズをやらずに終わっちゃったんですよ(笑)。
取材・文/吉田光枝
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▽映画『ラストサマーウォーズ』
URL:https://lastsummerwars.com/
監督・企画・編集:宮岡太郎
脚本:奥山雄太
出演:阿久津慶人、飯尾夢奏、羽鳥心彩、松浦理仁、小山春朋、上田帆乃佳、井上小百合、長妻怜央(7ORDER) / デビット伊東、櫻井淳子
6月24日(金)よりユナイテッド・シネマ入間にて先行公開
7月1日(金)より新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開