2008年にAKB48に加入し、みちゃの愛称で親しまれていた野中美郷。2014年にグループを卒業し、現在、元AKB48の岡田彩花、鈴木まりやらが所属する1年間限定アイドルユニットSAISONに加入している。
なぜ、再びアイドルとしてステージに立とうと思ったのか、そしてAKB48卒業後どんなふうに過ごしていたのか、話を聞いた。(前中後編の後編)

【前編はこちら】元AKB48 野中美郷が8年ぶりにアイドル復帰「レッスン終腰が痛くて、超ブランクを感じた」

【中編はこちら】元AKB48・野中美郷 今だから言える卒業理由「すっきりしない気持ちのままいるのも違うな」

【写真】アイドルユニットSAISONに加入した野中美郷

──AKB48卒業後に勤めた、焼肉屋IWAとアパレルブランドを辞めて、福岡に移住したそうですが、きっかけは何だったんですか?

野中 何か手に職を付けたいなと考えた時に、エステの仕事がいいなと思って。私は、関東育ちなんですけど、生まれは福岡で。土地勘もあるし、友達もいるので、福岡に住んでみたいなと思って、福岡の会社でいいところがないか探していたんです。そしたら、ちょうど知り合いから、美容会社の女性社長を紹介してもらい、そこで勉強をさせてもらって、いざ福岡に移住するというタイミングで、店舗を1個もらったんですよ。

──すごい待遇ですね!

野中 私が働くと決まった時から、「1個会社を作って任せたい」と言ってくれていたんです。それで出資してくださって、私が代表取締役に就任して、エステサロンを任されたんですけど、とにかく最初の2年は大変で。誰かのトップに立つなんて初めてのことで慣れない上に、福岡市内に引っ越したにも関わらず、店舗を出したのが北九州市の小倉だったんです。

──どれぐらいの通勤時間だったんですか?

野中 新幹線なら15分ぐらいで着くんですけど、最初のうちはお金も使えないから、高速バスで片道1時間半ぐらいかけて通っていました。毎日、家と会社の往復で、しかも不定休で土日も休めないから、友達と会う暇もないし、帰っても寝るだけ。ロボットみたいな生活が嫌になっちゃって、夜中までお酒を飲んでストレス発散して(笑)。睡眠時間が短かったので、周りから心配されるほどでした。
ところが、そんな時にコロナ禍があって、エステサロンはお客さんと接触するからお店を閉めなきゃいけなくなって。それで3ヶ月ぐらい、何もできない状況になったんです。

──それまで多忙で遊ぶ暇もなかったのに、今度は何もやることがなくなったと。

野中 極端ですよね(笑)。何もできない状況は、もっと耐えられなくて、これは駄目かもしれないと。私は切り替えが早いほうなので、もう東京に帰ろうと思って、すっぱりエステサロンを辞めました。

──それでIWAに戻ろうと思ったんですね。

野中 眞由美とは東京に遊びに行ったら、必ず会うぐらいの関係だったので、またIWAで働かせてほしいと相談して。その時は中途半端には戻れないなと思って、社員になる覚悟で帰るつもりだったんです。でも結果、アイドルユニットのSAISONで活動することになって。だから、最初はいい顔をしなかった眞由美の気持ちもすごく分かるんです。「30歳を過ぎて、今さらアイドルなんて……」と思うのが普通ですしね。
でも、いざ活動を始めたら応援してくれて、私のお披露目ライブも見に来てくれました。

──SAISONには初めましてのメンバーもいたと思いますが、すぐに馴染めましたか?

野中 いまだに馴染めているかは分からない(笑)。まだ、がっつりレッスンを始めてから1、2か月ですからね。

──久しぶりのライブはいかがですか?

野中 初めてSAISONのステージに立った時は、緊張よりも楽しさのほうが勝っていて。「やっぱこれだわ!」と感じたんですけど、その時に披露したのは2曲で。その後、曲数が増えて行くに従って緊張のほうが大きくなって。7月10日に開催した「新メンバー加入イベント-SAISON革命-」は緊張しすぎて、ステージに出た瞬間、頭が真っ白になっちゃいました。曲を届けるというよりも、間違いないようにパフォーマンスするのに精一杯。AKB48時代は緊張した記憶がほとんどないんですけど、その時は余裕がなくて何にも覚えてないんですよ。特典会でファンの方から、「すっごく緊張してたね」と言われるほど、きょどっていました(笑)。

──ライブはAKB48時代のファンも多いんですか?

野中 そうですね。コンスタントにIWAに来てくれている方もいるんですが、久々に会いに来てくれる方が多いです。
8年ぶりに会う方もいるんですけど、雰囲気は変わってないので、すぐに思い出せるんですよね。

──AKB48の経験が、SAISONの活動に活きている部分はありますか?

野中 意外と別物ですね。AKB48時代はありがたいことに、大きいステージに立てたり、毎日何かしらのお仕事をいただいたりしていましたけど、SAISONはたくさんのアイドルが出る対バンライブが活動の中心なので、私たちのファン以外のお客さんばかりなんです。それに出番も約20分と短いじゃないですか。持ち時間が短い中、SAISONを見つけてもらうために、お客さん一人ずつに目を合わせてパフォーマンスをしています。メンバーが私を受け入れてくれたので、グループに貢献しなきゃと必死です。

──SAISONの活動期間が半年を切っている中、どういう目標で臨んでいますか?

野中 1年しか活動期間がないグループなのに、残り半年で新メンバーを入れるなんて、絶対に賛否があるなと思ったんです。いまだに納得できないという人もいると思うんですけど、活動が終わる頃には「9人でよかった」「野中美郷が入って良かった」と、SAISONのメンバーとして認めてもらえるように今は頑張っています。それに眞由美との約束を破ってまで始めたことなので、IWAでがっつり働くようになった時に、SAISONで私のファンになった方にも来てもらえるように爪痕を残したいです。
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