スローテンポの異質な漫才で独走中、タイタン所属のコンビ、キュウのぴろ。Mー1グランプリでは、2020年、2021年共に準決勝進出。
2022年ツギクル芸人グランプリでは決勝に進出している実力派だ。今回、ネタ作りを担当するぴろに、芸人としてのキャリア、そして今年のM-1グランプリにかける思いを聞いた(前後編の後編)。

【前編はこちら】キュウ・ぴろが明かす錦鯉に解散を止められた夜「M-1なんてお前らのための大会だろう」

【写真】スローテンポの異質な漫才で独走中、キュウ・ぴろ

──ソニー、オフィス北野、タイタンと事務所を移っていますが、タイタンが一番合っているように感じます。

ぴろ 最近はそう思うようになってきました。

──ソニーの時はまわりと色が違うなと思いましたか?

ぴろ ソニーにいる時は、常に「ここにいていいのかな」と思ってました。いい人ばかりだったんですけど、あの環境の温度が合ってなかったというか。

──オフィス北野はどうでしたか?

ぴろ 当時のマネージャーがよく動いてくれる方だったんです。ただ、会社がどうなるかわからなくなった時に迷わず退社しました。いずれ辞めるなら早いほうがいいと思ったんです。

──辞める際、タイタンに紹介状を書いてもらったそうですが。

ぴろ 紹介状というわけじゃなくて。オフィス北野のマネージャーが「会社の都合なので、『辞める』と言っても止めないし、辞める場合は希望の事務所に電話を1本いれるから」と言ってくれたので、僕らはタイタンを希望したんです。
その電話も効力があるわけじゃなくて。

──そうなんですね。

ぴろ 事務所ライブのオーディションに参加するところから始めて、落ちましたから。「縁がないんだな」とフリーで活動しようと考えていた時に、タイタンのマネージャーから「一度会いたい」と連絡がきたんです。事務所の近くの喫茶店で話を聞いたら「所属しませんか?」と言われて、「なんで1回落ちたんだろう?」と思いつつ、「タイタンなら」と所属を決めたんです。

──タイタンの魅力はどこですか?

ぴろ 少数精鋭なところです。トップに爆笑問題さんがいて、若手は厳選されたメンバーしかいない。そんな小さいサイズでありながら芸能界に確固たる力がある事務所って他にないと思うんです。

──いまのキュウのスタイルは、どの段階で生まれたんですか?

ぴろ 最初からこのスタイルでした。大学の同級生と東京に出て漫才を始めた時から、いまのスタイルだったんです。

──初見だとわかりにくいスタイルだと思いますが、その怖さはなかったですか?

ぴろ お客さんに優しすぎるネタが好きじゃなかったので、伝わらなかったら伝わらないでいいや、という感覚でした。むしろ、まわりと同じようなネタをしても楽しくないと思っていたんです。


──キュウを結成して、年上の相方(清水誠)に「このスタイルでやりたい」と言ってスムーズに通ったんですか?

ぴろ 最初のコンビでソニーに入って。そこに清水さんが別のコンビでいたんです。同じファミレスでネタを書いたり、家に遊びに行ったこともあるので、清水さんは僕がやりたい笑いを知っていたし、僕も感性が合うと思っていたんです。で、お互いのコンビが解散して、組むとなったら「この人だな」とキュウを結成したんです。結成した時には、僕がやりたいことが相方のやりたいことになってました。

──清水さんのツッコミも独特です。

ぴろ ツッコミって訂正するじゃないですか。ボケてツッコんでボケてツッコんでの繰り返しだと、その漫才が行ける範囲が限られてしまうと思うんです。僕はお客さんをできるだけ遠くに連れて行きたいんです。ボケに間違ったツッコミをしたり、ボケがツッコミを違う捉え方をしたり、そうしたほうが遠くに行ける可能性があるし、行きついたことのない場所に辿り着いた時はワクワクするんです。

──遠くに行きたいから漫才を選んでいる、というのもありますか? セットや小道具を用意できるコントよりも、シンプルな漫才のほうが世界は広がるのかなと。

ぴろ コントを観るのは好きだけど、作る側としてはコントってはみ出し甲斐がないんです。
漫才の「立ちしゃべりだけ」という縛りがあるほうが遠く行ける気がするんです。
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