【写真】スローテンポの異質な漫才で独走中、キュウ・ぴろ
──キュウの漫才は、アドリブは入れないんですよね。
ぴろ アドリブはゼロです。僕はM-1世代というか、M-1を観て「漫才ってカッコいいな」と影響を受けたので、無駄のないM-1のネタが理想形。時間制限のある中、極限まで削ぎ落とした、大会当日のボディビルダーみたいなネタに美しさを感じるんです。
──寄席でやるような漫才ではない。
ぴろ そうですね。営業に行っても、地元のネタとか客いじりみたいな「つかみネタ」はしないで、そのままネタをやりますから。
──キュウは定期的に単独ライブを行なっていますが、単独ライブはコントのほうがやりやすい印象があります。
ぴろ 漫才だからこういう見せ方をしなきゃいけない、みたいなことを考えたくないんです。僕らにとって単独ライブは、キュウの漫才の世界を広げることだと思ってます。
──キュウはシステムにハメこむようなネタがない印象があります。
ぴろ システムは全部違うようにしてます。やったことがあるシステムは、極力やりたくなくて。似たように見えても確実に違いがあるんです。「めっちゃええやん」だけはフレーズを残して何本も作ったネタで、初めてパッケージを掘り下げました。
──実験を繰り返していると。
ぴろ そうですね。ためしてガッテンというか。
──ガッテン。20年と21年、M-1で2年連続準決勝に行ったことで、変化はありましたか?
ぴろ まわりの芸人が僕らの存在を認めてくれるようになって、キュウが完成しつつあるのかなと思います。
──だからこそ、今年のM-1は結果を出したいですね。
ぴろ 最低でも決勝に進みたいです。
──昨年のM-1で活躍した錦鯉やランジャタイはキュウと関係の深い芸人だと思います。刺激は受けましたか?
ぴろ 錦鯉さん、ランジャタイさん、モグライダーさん、真空ジェシカ……僕らが何度も同じ舞台に立った人たちが決勝で活躍して、悔しさを感じました。友達がみんな合格して、僕らだけ落ちた感覚というか。決勝に進んでいたら絶対に楽しかったのに、と思ってしまいます。
──錦鯉さんに解散を止められたことがあるとか。
ぴろ 6年前になるんですけど、キュウを組んで2年くらい経って、「もっと可能性があるんじゃないか」「このままだと遠回りになるんじゃないか」と解散を考えたんです。
さらに、隆さんは「来年(2015年)からM-1が再開するらしいじゃん。M-1なんてお前らのための大会だろう」とありがたい言葉をかけてくれたんです。裏でも「ソニーからM-1決勝に行くなら俺らかキュウしかいない」と話していたみたいで。結局、僕らは解散したんですけど、半年後に再結成したのは、錦鯉さんの言葉が引っ掛かっていたから。再結成した後、隆さんに挨拶するのが怖くて仕方なかったです。3回くらい報告したんですけど、そのたびに「聞いてねぇ」って言われました(笑)。
──M-1の決勝に行くことが、錦鯉への恩返しにもなると思います。
ぴろ 本当、そうですね。
【後編はこちら】キュウ・ぴろが異質なスロー漫才にこだわる理由「まわりと同じようなネタをしても楽しくない」