女優として活躍する宮澤佐江。アイドルを卒業し、本格的に芝居への道に進み、3月17日(金)からは映画『犬、回転して、逃げる』がシネ・リーブル池袋、シネ・リーブル梅田ほかにて全国順次公開される。
今回、役者としての気持ちの作り方や、アイドル時代の仲間について話を聞いた。

【写真】女優として活躍する宮澤佐江の撮り下ろしカット【7点】

──アイドル卒業後、数々のお芝居の経験をしてきましたが、経験値が積み重なっているという実感はありますか?

宮澤 映像のお芝居に関しては、そこまでコンスタントに出続けられているわけではないので、毎回探り探りだし、カメラの前に立つと緊張が勝ってしまいます。カメラ目線を意識しないようにしようとか、初歩的なことを考えてしまう自分がいつもいます。だけど、今回の作品ではお芝居って楽しいなと思えました。

──舞台とはそれほど違うものなんですね。

宮澤 まったく違います。流れで気持ちを作っていけるのが舞台で、シーンごとに気持ちを作るのが映像作品です。今回の映画は、ラストシーンから撮影しました。初めて長妻(怜央)君と会った、その日にラストシーンですから。だから、映像をメインでやっている役者さんってすごいんです。気持ちをすぐに作れるわけですから。私にはその力量がまだないですね。


──ミュージカルには今年だけでも3本に出演しますね。

宮澤 はい。ご縁があって、出演させていただくのはありがたいことです。
ただ、ミュージカル女優と呼んで頂くことに関しては、おこがましいと思ってます。ミュージカルを目指してやっている方もたくさんいらっしゃいますし、本格的な声楽を学んできた方もいらっしゃいますから。

小さい頃の私が憧れた世界は、テレビでした。歌番組を見て、アイドルになりたいと思って芸能界に入ったのに、卒業後は、自分が想像していたよりもテレビのお仕事ができていません。そこに対しての葛藤は大きいです。それは自分の実力が足りないからでしょうけど、今はSNSでバズったらテレビに出られる世界になりましたから、自分が闘うべき場所はどこなんだろうって、迷走しているところです。

──そういう葛藤もあるんですね。

宮澤 でも、AKB48グループ時代から劇場公演が何よりも大好きだったので。ファンの方々がいらっしゃる前で歌って踊ることが忘れられない記憶として残っています。
ステージに立つという意味では、ミュージカルも同じです。こっちのほうがしっくりするなと感じ始めています。だからといって、ミュージカル女優を名乗ろうというわけでもありません。

──AKB48グループの卒業生に悩みを打ち明けることはありますか?

宮澤 河西智美ちゃんとは事務所も同じなので、よくお仕事の話はします。(大島)優子、(秋元)才加とは腐れ縁なので(笑)、常に連絡を取っています。おめでたいことに、みんな結婚しているんですよ!

──ご自身の結婚観は?

宮澤 機会があったら占いに行くんですけど、最初に占ってもらうことは仕事のことなんです。恋愛はその次。恋愛はしたい時にすればいいかなって思います。

──同僚だった元メンバーのことはどう見ていますか?

宮澤 みんなすごいですよね。さっしー(指原莉乃)はバラエティで活躍しているし、(川栄)李奈は立派な女優さんです。だから、後輩だとは見ていなくて、芸能人だと思っています(笑)。

──現役メンバーとは?

宮澤 去年、AKB48のコンサートを観てきました。
ゆきりん(柏木由紀)がプロデュースした日本武道館のコンサートです。ゆきりんとは最近交流が増えて、一緒にごはんを食べる仲です。久しぶりに観たAKB48は、みんなが楽しんでいる雰囲気が伝わってきて、とにかく楽しそうでしたね。後輩に会うと、「佐江さんたちが築いてきたチームKを私たちが引き継ぎます!」なんて言われるけど、時代も違うし、今の子たちのほうがスタイルもいいんだから、そんなの気にしなくていいのになって思います。その気持ちはありがたいですけどね。

──SKE48の後輩たちとは?

宮澤 連絡を取る子はいますよ。北川綾巴、東李苑松本慈子とは年末に会いました。久しぶりに会ったのが嬉しくて、写真を撮っちゃいました。今でも何かあったら連絡をくれる子たちです。

──アイドルを卒業してから芸能界で活躍したいと考えているメンバーにアドバイスがあるとしたら?

宮澤 アイドルだったことを誇りに思ってほしいです。なりたくてもみんながなれるわけじゃない職業ですから。それに、AKB48グループを経験すると、常にだれかと比べられるじゃないですか。
声援しかり、選抜総選挙での順位しかり。でも、そこで根性と自信は知らぬ間に身についているものですから、それは卒業後の活動をきっと助けてくれます。今の私も、根性だけは忘れずに頑張っていきます。

──今回映画『犬、回転して、逃げる』に出演することになって、どう思いましたか?

宮澤 台本を読んだら、「なんじゃ、こりゃー!」って思いました(笑)。一度読んだだけでは内容を把握できなくて、数日後に監督さんから直接お聞きして、ようやく「なるほどね」と思えました。文字だけだと解釈しにくいことがありますから。

──どのように役に入っていきましたか?

宮澤 今回は普通の人の役だったので、そこまで役作りは難しくありませんでした。作品にもよりますけど、普段の役作りは時代背景を調べてみたり、監督さんからヒントをいただいて、「こんな人だったのかな」なんて想像してみたりします。

──試写を観て、いかがでしたか?

宮澤 撮影をしている時から、どうつながるのかな、このお芝居で合っているのかなと不安がありました。でも、試写を観て、「なるほど。そうなるのか!」と思えました。監督の頭の中には、こういうことがしたいという完成図があったんでしょうね。


──撮影はチームで行うものですが、どんなことを意識しましたか?

宮澤 AKB48時代からそうでしたけど、仕事って一人ではできないことですから、コミュニケーションがないままだと、絶対にいいものは作れないんです。アイドルを卒業してからも、そこは一番意識しています。基本中の基本ですけど、挨拶をしっかりとするとか、空き時間に話しかけてみるとか、そういうことが大事ですよね。今回の作品は撮影期間が短くて、他の役者さんとの絡みがそれほどなかったので、どうしてもコミュニケーションが薄くなってしまいましたけど(笑)。

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