僕は芸能人である前に1人のアイドルオタク。だから今でも普通に握手会に並ぶことがあるんです。列の中で他のオタクと話していると、思わぬ発見もありますしね。だけど正直言って、握手会は苦手! というか怖い! 今まで苦い経験もいっぱいしてきましたから。
特に個別じゃなくて全握(※メンバー全員と握手するシステム)だと、やらかしちゃうんですよ。自分の推しはいいんです。だけど推し以外の子に対して話しかける言葉を用意していないと、「なんとなくの言葉」でその場をやり過ごすことになる。それで「もっと気が利いたことが言えたのでは?」とか気を取られているうちに、推しに話すつもりだった内容を忘れてしまうとか(苦笑)。
他にもテンションが上がりすぎて、なぜか上から目線で説教みたいになったりとか、やたら早口になってしまったりとか。あるいは逆に妙に小声になってしまい、相手が聞き取れなくて困った顔をしているとか。言いたいことを詰め込みすぎて、アワワワ……ってなったりとか。
もう思い出すだけで自分にゲンナリですよ。芸人ってトークのプロだって世間からは思われていますよね。でも、好きなアイドルちゃんの前だと全然ダメですね。
握手会参加者にも一流から五流までいると思うんです。鍵開け・鍵閉め(その日の一番最初や最後に並んで印象づけること)みたいな高等テクを使えるのは本当にごく一部。好きな子の前で普段通りの自分を出すのって至難の業ですから。後ろに並んでいる人の視線もあるし、はがしからのプレッシャーもあるし。
だからコミュニケーション能力を高める場として、握手会というのはすごく有効なんです。限られた時間の中で言いたいことを簡潔に伝えるって、プレゼンにも活かされますしね。どんな仕事に就いていても、社会にいる以上、コミュニケーション能力は高い方が有利ですから。
それからたとえばオタクの中には、ひきこもりもいるでしょう。そういう人にとって、外の世界と接するきっかけが握手会ということだって十分に考えられるわけですね。
神対応で一番有名な現役アイドルは、だーすー(須田亜香里)でしょう。何せオタクが手を離しても、握り返してくるらしいですから。逆にぱるる(島崎遥香)なんか塩対応ってことで非難されたじゃないですか。でも僕は、それもアリだと思っているんです。冷たくため息をつかれることに喜びを感じるM気質のオタクはいますから。媚を売るぱるるなんて痩せた橋本真也みたいなもので、誰も見たくないですよ。
でも、最近のぱるるは「当時の塩対応はキャラ作り」みたいなことを言っているんですよね。ちょっとそれはガッカリですよね。幻想は最後まで残してほしかった……。
このように握手会というのは非常に奥が深いものなんです。だけど山口真帆さんのトラブルが起こってから、世論は「諸悪の根源は握手会商法だ!」みたいな方向に進んでいるじゃないですか。
でも、握手会をなくせばいいというのはおかしいと僕は思う。握手会がなかった時代も、松田聖子さんはステージで襲われているんですよ。もちろんアイドルの安全は絶対守られるべきだけど、握手会を廃止にすればOKって、そんな単純な話じゃないはずですから。
今、48グループは、ジャカルタとかバンコクとか海外での人気がすごいことになっています。向こうの人たちからしてみたら、握手会という文化がめちゃくちゃ新鮮に映るらしいんですね。僕ら日本のアイドルファンは握手に慣れっこになり、すっかり感覚が麻痺していたのかもしれない。思えば最初にAKB48が握手会を大々的にやり始めたとき、「そんなありがたいことがあっていいのか!」って感激したもんなぁ。
握手会というシステムが岐路に立たされている今だからこそ、改めて僕たちはアイドルと握手できることに感謝するべきなんですよ! 今回は握手会で失敗を繰り返してきた1人のオタクとして、みなさんに共闘を呼びかけたいと思います。
(『月刊エンタメ』2019年7月号掲載)
クロちゃんの「このアイドルに注目!」
Task have Fun
アイドルって急激に伸びていく時期があるんです。そういう意味で、3年前にデビューしたタスクは今が一番面白いと思う。とにかく最大の魅力は若さゆえの躍動感。
▽クロちゃん
お笑いトリオ安田大サーカスの一員。1976年12月10日生まれ。広島県出身。大のアイドル好きで、忙しい合間をぬって アイドルライブへと足を運ぶ。
Twitter:@kurochan96wawa