現在放送されているTVアニメ『【推しの子】』(TOKYO MX ほか)の主題歌『アイドル』が、爆発的なヒットを記録している。ストリーミング総再生回数は1億回を突破しており、もはや社会現象クラスの勢いだ。


【関連写真】『アイドル』が1億回再生を突破したYOASOBI

同楽曲を手掛けたYOASOBIは、いわゆる“ボカロP出身アーティスト”の代表格。なぜ彼らの楽曲は、多くの人々を感動させるのだろうか。

ボカロP出身アーティストとは、音声合成ソフト「VOCALOID」による楽曲をニコニコ動画などへ投稿していたクリエイターたちを指す。有名どころとしては、YOASOBIで作詞・作曲を担当するAyaseのほか、米津玄師やヨルシカ、TOOBOE、須田景凪などが挙げられるだろう。

ここ数年、彼らは世間で次々とブレイクを果たしているが、その理由についてはさまざまな説が唱えられている。なかでも有力だと思われるのは、「SNS世代の若者たちの心をつかんでいるため」という説だ。

実際に『アイドル』の歌詞には、SNS世代に訴えかける要素が垣間見える。

そもそもYOASOBIは、小説を音楽にするという異色のコンセプトをもつユニット。『アイドル』の場合は少し特殊な経緯があり、元々Ayaseが一読者として『【推しの子】』にインスピレーションを受け、プロトタイプとなる楽曲を作っていたという。その後、赤坂アカの書き下ろし小説『45510』を原作として、現在の楽曲が完成した。

そうして生まれた楽曲の歌詞は、『【推しの子】』本編の内容と同じように、“嘘”がテーマとなっている。分かりやすく解釈するなら、愛がわからない1人のアイドルが、ファンやメディアに嘘をつくなかで、本当の愛を見つけるという内容だ。


しかしメディアを通して作り上げられた虚像に悩まされるアイドルの姿は、誰もが嘘をつき、“偶像”を演じるSNS時代のリアルを反映しているようにも見える。「偽りの自分」と「本当の自分」の間で生じる葛藤や苦悩は、SNS世代にとって最も身近な感情の1つではないだろうか。

YOASOBIの楽曲はそれぞれ別の小説を原作としているにもかかわらず、『アイドル』と同じように、SNS世代に刺さりそうなものが多い。

たとえば『怪物』では「本当の僕」「僕の在るべき姿」、『群青』では「本当の自分」「本当の声」といった歌詞が登場しており、他者の視線と向き合いながら自分のあり方を模索するような内容となっていた。

こうした傾向はYOASOBIにかぎらず、ボカロP出身アーティストや現役ボカロPが手掛けた楽曲の歌詞にも広く見受けられる。

2021年に投稿され、YouTubeで4,000万回以上の再生数を記録しているツミキの『フォニイ』も、嘘や本当の自分などをテーマとした楽曲。そもそもフォニイ(phony)という楽曲名自体、「偽物」や「でっちあげ」などを意味する英語だ。

また、人気クリエイターユニット・HoneyWorksによる『可愛くてごめん』も、SNS世代を意識した歌詞によって大ヒットした。同楽曲は『告白実行委員会~恋愛シリーズ~』のキャラクターソングとして制作されたが、歌詞のなかではSNS上で他者から向けられる視線を意識しつつ、自分らしさを追求する少女の心情が歌われている。

いつの時代も、音楽はその社会に生きる人々の価値観を色濃く映し出すもの。次にSNS世代の支持を集めるのは、どんな楽曲だろうか。

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