【写真】本村碧唯フォトブック『未来の手前』より珠玉のカット
本村碧唯の卒業ロードは異例中の異例だった。
発表したのは昨年11月。騒然となった客席が「卒業は来年の夏」という本人からのコメントを受けて、なんとも不思議な空気になった。
HKT48では卒業発表から卒業公演までは約2カ月、というのが定番になっている。ところが本村碧唯の場合、その4倍にあたる8カ月! これは本人の強い希望によって決まった長い長いファイナルカウントダウンなのだ、という。
本人いわく「卒業コンサートが、フォトブックが、という前にとにかく卒業までたっぷり時間をかけたい。これが卒業発表前に私が出した第一条件でした!」
いちばんの理由はちゃんとファンのみんなにお別れの挨拶がしたい、だった。お互いに卒業することをわかった状態でおしゃべり会などのイベントで会いたい。コロナ前と比べてイベントが減ってしまったいま、これはなかなか実現させるのが難しい。だからこそ8ヶ月間もの時間が必要だったし、結果的にたくさんのファンに会うことができた。
ファンを大切にすることはアイドルにとって当たり前の気持ちかもしれないが、HKT48の特に1期生からは、ファンへの想いがものすごく伝わってくる。よくよく考えたら、立ち上げの段階ではファンはほぼいなかったたわけで、応援してくれる人がいることのありがたみを1期生は誰よりも知っている。
「一旦、離れていたファンの方も卒業と聞いて戻ってくれたりしたんですよ。とにかく、おしゃべり会ではたくさんの方が泣いてくださったんですけど、私はまだ卒業の実感が沸いていないから泣けなくて(苦笑)。私のことなのに、泣かないでって慰めることしかできなかった。実感って、いつ沸いてくるんですかねぇ」
7月7日には卒業を記念したフォトブック『未来の手前』(双葉社・刊)が発売される。「やり残したことがないように最後のわがままで出版をアピールしたら、実現しちゃいました」と笑う本村碧唯だが、出版されることはもちろん、出版記念イベントでまたファンに会えることを心から喜んでいた。ここまで喜んでもらえたら、まさに応援している方はファン冥利に尽きまくるだろう。
同期を全員、いや、これまでHKT48から巣だっていったメンバーをすべて見送ってきた本村碧唯だが、いざ自分の番になると、どうしていいかわからなくて戸惑いまくっている。1期生ならではの悩みを、最後の1期生がまるっと背負った。本人は「卒業コンサートも卒業公演も実感が沸かないまま終わりそうな気がする」と困惑しながら語るが、そんな本村碧唯の感情の変化をステージ上での表情や歌声から読み取るのも一興かもしれない。
ちなみに卒業記念のフォトブックの構成も、卒業コンサートでの演出も本村碧唯本人の意向や意見が色濃く反映されている、という。ここまでアグレッシブになれたのは自分の性格を考えたら珍しいかも、と本村碧唯は言う。
「ノリや勢いでえーい!って動くことができないんですよ。昔、ネイルの勉強をしたいなって思ったことがあって。そんなこと、自分の意思でどうにでもなるじゃないですか? でも、私は当時、通っていたネイルサロンのスタッフさん全員に『この仕事に就いたきっかけは?』とか『勉強するにはどうしたらいいですか?』って何ヵ月もかけて、じっくり取材して(笑)。そこまでしても、やっぱり今じゃないかな、とか。そういう性格なんですよ、私」
アイドルとしては、そういう性格で損をしてしまったかもしれない。その場のひらめきで弾けたほうがステージでも目立つし、注目度も高くなるからだ。
でも、チームKⅣのキャプテンとして、そして今ではHKT48全体のまとめ役になったことで、その慎重な性格と冷静な視線は最強の武器になった。普通ならこういう存在が抜けてしまうと残されたメンバーはたいへんだが、この8ヶ月のあいだにキャプテンの座を松岡はなにしっかりと委譲し(通常は卒業コンサートのステージ上で次期キャプテンが発表され、その場で引き継ぎがおこなわれる)、新しいチームが発足して軌道に乗るまでをチームの一員として内側からちゃんと見届けてきたから、なんの心配もない。これもまた異例の卒業ロードのおかげである。
卒業後はタレント活動を行わない、と公言している本村碧唯だが、未来の夢として「アイドルになりたい人のためのダンス教室を開きたい」という。アイドルを目指して、ダンススクールに通う女の子はたくさんいるが、一般的なスクールで習うダンスと、実際にアイドルになってステージで披露するパフォーマンスとでは、ちょっと種類が異なってくる。
それだったらオーディションを受ける前からアイドル流のダンスを身につけておいたほうが話は早い。
もうひとりの1期生・中西智代梨(2014年にAKB48に移籍)も8月の卒業が決まり、本当にHKT48の立ち上げに関わった1期生は誰もいなくなってしまう。
歴史が変わる、夏。
記憶に刻まれる、夏。
12年間のアイドル生活を見事に完走しようとしている本村碧唯のラストランをぜひ、その目に焼きつけていただきたい。きっと、忘れられない夏、になる。
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