「ミスマガジン2018」でグランプリに輝いて一躍脚光を浴び、数々の雑誌で表紙とグラビアを飾り、グラビアアイドルとして確固たる地位を築いた沢口愛華。近年は俳優としても活動の場を広げ、2022年に出演したドラマ「彼女、お借りします」も話題になった。
現在公開中の映画『札束と温泉』では映画初主演を務めている彼女に、これまでのキャリアや、芝居にかける思いについて語ってもらった。

【写真】"令和のグラビアクイーン"と称される沢口愛華 撮り下ろし写真【5点】

初めて芝居に触れたのは2018年に出演した舞台「ソウナンですか?演劇版」。「ミスマガジン2018」でグランプリを受賞した沢口を始め、受賞者5名とファイナリスト4名が出演する「劇団ミスマガジン」の第1回公演だった。

「劇団ミスマガジンのときは演技経験が一切なく、カラカラのスポンジ状態で行ったから、演技を教えてもらえることが新鮮でした。脚本・演出の竜史さんも、迷ったときにすぐに教えてくれたのでありがたかったです。私も含めて、どの女の子からも『誰にも負けないぞ!』って気持ちが伝わってきて、お互いに切磋琢磨することができました。
私たちを支えてくださった制作陣の方々の思いもちゃんと聞けて。一つのものをみんなで作るのが、すごく楽しいことだと初めて知ることができました」

芝居の魅力に触れて、オーディションを受けたり、ワークショップに行ったりと積極的に動いたが、現実を突きつけられることになる。

「オーディションにしても、ワークショップにしても査定される場。だから実力以上に自分を上手く見せなきゃいけないと思い込んで、無理やり自分の性に合ってないことばかりして空回りすることが多かったんです。それで演技が面白くないと思ってしまって……。当時、インタビューなどを受けたときは、表面的に『演技を頑張ります!』と言ってたんですけど、心の中では向いてないかもと諦めかけていたんです。


それをグラビア編集の方に話したら、『劇団ミスマガジンのときに竜史さんが言ってたのは、沢口はすごく本能が冴えている。だから、この仕事は向いてるけど、まだ基礎がないから、そこで躓くかもしれないと言ってた』と仰っていて。まさに当たってる! と思って。かと言って、どうやって基礎を磨くのかも分からないし、まだ地元から通っていたので身近に教えてくれる人もいないし、そういうスクールに通うお金もない。どうしていいか分からず、その時期は本を読んだり、映画を観たり、インプットをしていました。作品を通して、いろいろな感情を学んだのは、今に活きているかもしれないです」

上京後、事務所主催のワークショップに通い始めた。
最初に参加したときに先生に言われた一言が、深く胸に刻まれた。

「『沢口はカロリーを消費しない子なんだね』と言われて。カロリーって何? 消費する・しないって何? って全く理解できなかったんです。でも『札束と温泉』の撮影が終わって、久しぶりにワークショップに参加したら、『声が出るようになったな。半年前に比べたら言葉に力が生まれている』と褒めていただいて。撮影現場で経験したことがプラスになったんでしょうね。
もっともっと上手くなってやろう、数年後には先生も笑っちゃうぐらいの演技力を身につけてやろうって思いましたし、今回の映画を経験したことで気持ちが大きく変化しました。お芝居のモチベーションは過去一番高いです」

沢口にとって映画初主演となる『札束と温泉』は、高校の修学旅行で温泉宿に訪れた女子高生たちが、ヤクザの愛人が持ち逃げした札束の詰まったバッグを発見したことをきっかけに、様々な事件が巻き起こるクライム・コメディだ。女子高生を演じるのは沢口と同世代の俳優が多い。

「ほとんど演技経験もない私が、どうして主演に選ばれたんだろうというのが率直な気持ちでした。しかも私は同世代の人としゃべるのが苦手なので、すごくドキドキしました。ただロケ地の別府に行く前の、東京での練習期間中、女子高生役の子たちと帰りの電車が一緒になることが多くて。
そのときにお仕事の話だけじゃなくて、プライベートな話題も話すことができたので、別府でも気軽に話すことができました」

撮影現場の雰囲気は和気あいあいとしていたが、沢口の心の中では燃え上がる感情があった。

「私は負けず嫌いな性格なので、同世代の女性で同じ職業をしてる子は全員ライバルだ、この人たちに絶対勝ちたい! ってどうしても思っちゃうんです。でも今の時代って、仲良くみんなで高め合っていこうみたいな風潮もあったりすると思うんです。もしかしたら私だけ昭和的な戦い方をしているのかもしれないんですけど、あの子はこういう演技ができるのに、どうして私はできないのって悔しくなるんです。だから、芸能界に同世代の友達が少ないんですけど(笑)。この競争意識も、いつか実を結んでくれたら正解になるので、もっともっと頑張らなきゃなって」

俳優の仕事に力を入れる一方で、グラビアへの情熱もより強くなっている。


「お芝居も忙しいので、グラビア活動は控えめなんですけど、いっぱい表紙を飾ってた時期よりも、今のほうがモチベーションは高いと思います。というのも2021年9月から1年間、『ヤンマガWeb』で『週刊 沢口愛華』というグラビア連載をやったんですけど、グラビア愛のあるスタッフさんが集まって、一緒に作品を作り上げていくのが楽しいなと思って。やっぱりグラビアは天職なんだなって再確認したんです。今後もグラビアの頻度は少なくなるので、ファンの人は寂しいかもしれないんですけど、絶対に辞めることはないので、そこは安心していただきたいです!」

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▽『札束と温泉』
2023年6月30日(金)より、シネマート新宿、他にて全国順次公開

沢口愛華 小浜桃奈 糸瀬七葉 大熊杏優 佐藤京 星れいら 錦織聡/小越勇輝
一宮ゆい 工藤みか 村崎ゆうな 水野まゆ

監督・脚本:川上亮