【写真】透明感あふれるルックスに注目、池田朱那 撮り下ろし写真【5点】
2001年生まれの池田は、自然豊かな群馬県の出身。「実家のすぐ近くに10頭くらい牛がいる牛小屋がありました」という環境で熱中していたのが野球だった。男子に混じって同じユニフォームを着てプレーし、しかもポジションはショートという花形だ。
「きっかけは兄が野球をやっていたからで…お兄ちゃんのやることがなんでも格好良く感じた年頃だったんですね。私も兄の姿につられて野球を始めたら、チームで皆と一緒にプレーすることもすごく楽しくて。県内の選抜チームのメンバーに選ばれた時は、いつものチームメイトと離れることが淋しかったくらいです」
実力は男子顔負け、右利きながら兄にならって左打ちとマンガのような活躍ぶりで野球に打ち込んでいたが、成長するにつれ男子との体格差はいかんともしがたく、中学1年生でバットを置いた。次に熱中できるもの、として思い浮かんでいたのが芝居の道だった。
「自分の性格を考えると、多分何か目指すものがないとダメになっちゃう人かなと思って。それで、何か私にできることって考えた時に、お芝居が好きだなとひらめいたんです。『スターになりたい!』のような強烈な目標はなかったのですが、それが原点ですね」
願いは通じ、中学時代にスカウトされて俳優業の第一歩が始まった。
「でもずっと野球漬けで、田舎でしたから日焼けして肌も真っ黒で、これで女優さんになれるのかなって感じの女の子でした。地元の人が今の私を見たらびっくりすると思います。
群馬の地元では自転車通学の途中、遠回りして友達の家に寄ってから一緒に登校していたりもした。そんな牧歌的な日々から高校進学を機に上京し、テレビドラマやCMなどに出演。2019年には出演したゲーム『八月のシンデレラナイン』のCMをきっかけに「令和の野球少女」のキャッチコピーでも注目された。制服が似合うフレッシュなビジュアルで“青春ドラマのヒロイン感”も印象づけ、それは4年後の今も変わっていない。
「野球に関するお仕事自体もうれしかったですし、“野球少女”と呼んでいただけたことも全く予期していなかったことでした。特技ってどんなところで役に立つか分からないものなんですね」
甲子園でプロ野球の始球式も経験し、2022年にもショートドラマ『ふたりの背番号4』(ABC)で久しぶりにユニフォームを着てグラウンドに立った。硬式野球部で唯一の女子部員として奮闘する高校生・川瀬遥香という、池田本人に生き写しのような役を演じる。高校野球では女子部員は公式試合に出場できない規定がある。情熱はあっても試合でプレーができない、好きなのにハンデゆえに諦めざるを得ないもどかしさもかつて自身が実感した。
「もう、1球投げただけで肩がもげるかもってくらい身体のなまりを実感させられたんですけど(笑)。経験者として私もすごく彼女の気持ちが手に取るように分かりました」
そして。畜産と女子高生という異色の組み合わせを題材にした『17歳は止まらない』では、農業高校の畜産科で学ぶ瑠璃を演じた。
「瑠璃は素直で真っ直ぐで、何事にも全身全霊に取り組んで、やりたいと思ったことを行動に起こせるところは私とは正反対で、憧れを感じるくらいでした。素の私は優柔不断ですし、あまり思ったことをストレートに言えないたちなので、正反対の瑠璃だからこそ、演じていて楽しく、やりがいばかりでした」
瑠璃は高校で家畜を世話しながら畜産を学び、一方で男性教師の森(中島歩)に惚れている。近所の高校生のマサル(青山凱)が好意を寄せているのも歯牙にもかけず、森に強引に気持ちを伝えようとしていく、青春に全力投球していく少女の役だ。「すごく自分の気持ちに素直で強い子なんですけど、同時にもろさも持っていて、そこが魅力的であるとともに愛らしさでもあるんですね」
直情型の瑠璃。劇中、森やマサル相手に何度も感情を赤裸々にぶつけたりもするが、池田自身は意外にも高い地声をしている。自然の中で、汗にまみれる青春ど真ん中の高校生のイメージとはギャップがあるかもしれない。
「声がきれいってよく現場ではほめていただけるんですが、もっと低い声が欲しかったかも。ないものねだりなんでしょうけど、太くて低い声の方がお芝居では説得力あるように聞こえると思うので。私の地声に近づけすぎると瑠璃が女の子らしくなりすぎてしまいますから、声作りはしっかりと、野太い声を意識していました。」
野球のイメージから活発な少女時代を過ごしてきたかと思いきや、上京した高校時代は控えめな生徒だったとも明かした。
「高校では授業が終わったら学校が閉まるまで自習して、そこからファミレスに行っても遊ぶでもなく勉強して家に帰るみたいな生活だったんです。だからスクールカーストで言ったら絶対に1軍ではない女子で、JKらしい青春はエンジョイしていなくて。だからこそこの映画でまた高校生の役をできることが、私の青春になっているようにも思います」
群馬から東京へ、汗と泥まみれのグラウンドから芸能の世界へ。
「性格は本質的には変わっていなくて、私が持っていないものに憧れ、求めてここまで来たのかなと思います。小さい頃のヒーローだったお兄ちゃんに憧れて始めた野球もそうですし、素直で天真爛漫な瑠璃は私もなりたかった高校生像だったので、精一杯演じたこと自体が俳優人生一番の経験です。自分ではない誰かの人生を役として生きられることをモチベーションに、お芝居は続けていきます」
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▽池田朱那(いけだ・あかな)
2001年10月31日生まれ、群馬県出身。2019年ゲーム「八月のシンデレラナイン」CM出演で注目され、映画「かぐや姫は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」(19年)、「彼女が好きなものは」(20年)、NHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリンピック噺~」(19年)、「青天を衝け」(21年)などに次々出演。2022年は舞台「群盗」ではヒロインを務め、ドラマ「ふたりの背番号」では初主演を果たした。2023年、初の主演映画「17歳はとまらない」が8月4日より公開中。