2023年7月20日で、ついに20周年を迎えた新潟を拠点とするアイドル、Negicco。メンバーが全員結婚、出産を経験し、ステージでは圧巻のパフォーマンスを見せる。
そんな彼女たちを長年にわたり追い続けている、元週刊プロレス記者であり、ももいろクローバーZにまつわる数々の著書でおなじみの小島和宏記者。長いコロナ禍を経て5年ぶりにNegiccoを取材して見えてきたのは、“変わらない”3人の空気だった(前後編の前編)。

【写真】Negicco 20th Anniversary Live東京公演の様子

新潟を拠点とするローカルアイドル・Negiccoが今年7月、結成20周年を迎えた。

アイドルが、20周年。

グループ名をそのままにメンバーを入れ替えて20年以上、存続しているアイドルは存在するが、オリジナルメンバーのままで、となると、女性アイドルではなかなかいない。

しかもNegiccoの3人はここ数年で全員が結婚、出産を発表。これまでのアイドルの定義からすると、ちょっとびっくりしてしまうような展開かもしれないが、ファンはあたたかく祝福した。ファンが受け入れてくれれば、どれだけ状況が変われど、彼女たちはアイドルで居続けることができるのだ。

20年もアイドルを続けてきたことは偉業であるが、その20年間の中身や背景も重要である。この20年のあいだにモーニング娘。が社会現象になり、AKB48が国民的な人気者となった、大きなアイドルブームがあった。
Negiccoはそれらのブームを体感しただけでなく、その狭間にあった「アイドル冬の時代」をも経験し、生き残ってきた。

昨年の暮れ、ももいろクローバーZのメンバーを取材しているとき、彼女たちが2023年5月に迎える15周年の話になった。高城れにが結婚を発表し、いよいよアイドルとして未踏の次元に到達したね、と言ったら、玉井詩織に「なに言ってるの? Negiccoさんがいるでしょ! ちゃんと先を走ってくださってるから、私たちも活動できるんだよ」と強めの語気で叱られた。

たしかにそうだ。

Negiccoの歩みはあとに続くアイドルたちの道を照らし、その背中は頼れる道先案内人になっている。そこにいてくれることが当たり前になりすぎて、うっかり失念していたが、これだけ長くアイドルを続けることは、やっぱり容易いことではないのだ。

2020年からはコロナ禍でほとんど活動ができなくなってしまったが、そんな3人の壮絶なアイドルとしての生きざまを知っているから、絶対にNegiccoは大丈夫だ、とどこかで勝手に安心していたが、やっぱり3年は長かった。

僕が最後に3人を取材したのは、もう5年も前のことになる。新潟での15周年コンサートから、東京・中野サンプラザでの単独ライブまでの流れを追いかけた。その後もそれぞれのソロイベントを取材したり、結婚を発表する際にはインタビューをしたりしていたけれど、コロナ禍で「東京から地方に出かけるなんて、けしからん!」という風潮が強くなってきてからは、新潟に足を運ぶことも難しくなり、すっかり疎遠になってしまった。

その5年前の取材のとき「5年後、どうなっているのか?」という話になった。そのときは5年後なんて、あまりにも先の話すぎて、まったく実感は沸いていなかったが、現実的な夢として「また東京で単独ライブができればいいな」と3人は声を揃えた。
日比谷野音、NHKホール、中野サンプラザと2000人規模のコンサートを着実に成功させてきたが、この規模感を5年後もキープできていたらいいな、と。

そこから話は脱線し「5年後は全員、結婚していて、みんな子供がいたりしてね」と言いながら、3人は笑った。まったく、そんな予定などなく、本当の夢物語として語っただけだったが(いまとなっては全員、その発言自体をおぼえていなかった)、それから5年が経って、3人はLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で20周年コンサートを開催し、みんな揃ってママになっていた。

現実的な夢も、まったくの夢物語も、両方叶えてしまうとは! こんなにハッピーな話、なかなかあるものではない。

コンサートを前に、3人にインタビューをした。リーダーのNao☆が事務所のパソコンの前に陣取り、MeguとKaedeは自宅から参加するリモート取材。ところが開始時間を過ぎても、Kaedeが入ってこない。どうやらWi-fiの状況がよろしくないようだ。

「こういうのって、かえぽが一番得意だったのにねぇ~」と笑うNao☆とMegu。3人の関係性はなんにも変わらない。同席した編集者はかなり焦りまくっていたが、メンバーと僕は「なんにも変わらない時間」をまったりと過ごしながら、この20年間のことを思い起こしていた。あぁ、懐かしい。
こののんびりとした空気感こそがNegiccoらしさなんだよなぁ~。うん、なにも変わってない。

結局、KaedeがNao☆のスマホにテレビ電話をかけ、その画面をNao☆がパソコンのカメラに押しつける、という最先端なのか、アナログなのか、よくわからない形式で取材は無事にはじまった。

印象的だったのは、これまでずっと支えてくれたファンの方たちに、最大限の感謝を示す一方で、今回の20周年コンサートはそれだけで終わってはいけない、と語っていたこと。

じつはコロナ禍で配信や動画を通じて、新たにNegiccoを好きになってくれた人たちが一定数いるのだという。アイドルが20年目にして新規ファンを獲得・拡大するというのも素敵すぎる話だが、そういう人たちにとっては、今回のコンサートが初の現場となる。

だからこそ、懐かしいで終わるのではなく、はじめましてのお客さんを置いてけぼりにしないようなコンサートにしたい……しかし、実際に幕があがると、一見さんが「???」となってしまいそうな衝撃的な展開が繰り広げられたのだった。

【後編はこちら】地方アイドルのパイオニア・Negiccoが歩んだ20年…会場一体2000人、涙のラインダンス
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