【写真】映画『グランツーリスモ』場面写真
数々のゲーム作品のドラマ化、映画化が進む中、いまいち実現には向かわないものも多かった。
最近になってアニメ映画『スーパーマリオブラザーズ・ムービー』というかたちで実現した「スーパーマリオ」。『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993)以降の長らく再実写映画化が検討されてきた作品であったのに、なかなか実現しなかった。また同じ任天堂でいうと「メトロイド」や「ゼルダの伝説」なども映画化企画が何度も浮上しながらも実現には至っていない。
しかしコロナ過の影響でゲームの需要が急増し、そこに付属するかたちで映画、ドラマとのメディアミックスが盛んになった。そんな背景も重なり、ゲームのドラマ、映画化の企画が非常に通りやすい環境となった。今後もどんどんゲームのドラマ・映画化は急増してくることだろう。
新たなアプローチとして、ゲームの世界観を拡張するのではなく、開発者やバックステージを描くという作品も増えてきている。
先日、Apple TV+で配信された『テトリス』はそういった系統の作品であったし、現在公開中の映画『グランツーリスモ』もゲームの世界観ではなく、「グランツーリスモ」というゲームが現実社会に与えた影響というものを描いている。
『グランツーリスモ』は、2008年に日産、プレイステーション、ポリフォニー・デジタルが実際に立ち上げたゲームプレイヤーを本当のレーサーに育成するプロジェクト「GTアカデミー」を描いた実話ベースの作品。ただ、そこまでくると、ゲームの映画化というジャンルになるのかは疑問である。
ただ、多角的なアプローチも有りだとされるのであれば、長い間、試行錯誤を繰り返している「モノポリー」の映画化企画も実話ベースの方面に進むのではないだろうか。
実は「グランツーリスモ」の映画化企画自体は10年以上前からあったのだが、当初は今作のようなアプローチではなかったはずだ。レースゲームということもあって、ゲーム自体に世界観がないため、映画化するには自由すぎて逆に難しい部分があったのかもしれない。
同じくレースゲームを原作とし、過去に映画化された『ニード・フォー・スピード』(2014)などを観ても、「ワイルド・スピード」に影響された感が強く、「グランツーリスモ」も当初は、そういったアクション要素の強い作品が検討されていたのではないだろうか。
野村周平主演で『ALIVEHOON アライブフーン』という作品が2022年に公開されているのだが、『グランツーリスモ』はそれと似た作品となっている。というのも『ALIVEHOON アライブフーン』という作品自体が、今作のなかで描かれているゲームとリアルの壁を超える一大プロジェクトがあったからこそ誕生した物語。作中にも「グランツーリスモ」が実際に登場する。
「グランツーリスモ」というゲームは、プレイステーションが発売された当初から、とりあえず最初にプレイする定番ゲームとして君臨し続ける、言ってみれば安定の中の安定な作品である。
そんな「グランツーリスモ」が現実とゲームを繋げる大きな存在となろうとは誰もが想像しなかったはずだ。
ただのゲームだった「グランツーリスモ」が、ゲームという概念、枠組みを飛び出してドライビング・シュミレーターとしての機能を発揮し、現在のレース業界を本当に変えてしまった事実は、「グランツーリスモ」だけに限ったことではなく、現実とゲームの距離感が一気に近づくこととなった。
すでに「eスポーツ」というものが一般的になっている時代。スポーツや音楽と同じく、ゲームというものが才能を発揮するひとつのツールとして大きく機能していることを改めて思い知らされる。
今作は、まさに「時代の変化」を切り取った作品といえるだろう。
【ストーリー】
世界的大ヒットのドライビングゲーム「グランツーリスモ」のプレイに夢中なヤン。ゲームに明け暮れる姿に「レーサーにでもなるつもりか、現実を見ろ」と父親にはあきれられる。そんな時、ヤンにとって一生に一度のチャンスが訪れる。世界中から集められた「グランツーリスモ」のトッププレイヤーたちを、本物の国際カーレースに出場するプロレーサーとして育成するため、競い合わせて選抜するプログラムだ。その名も「GTアカデミー」。プレイヤーの並外れた才能と可能性を信じて「GTアカデミー」を立ち上げたひとりの男と、ゲーマーなんかが通用する甘い世界ではないと思いながらも指導を引き受ける元レーサー、そしてバーチャルなゲームの世界では百戦錬磨のトッププレイヤーたちがそこに集結。彼らが直面する、想像を絶するトレーニングやアクシデントの数々。不可能な夢へ向かって、それぞれの希望や友情、そして葛藤と挫折が交錯する中で、いよいよ運命のデビュー戦の日を迎える――。
【クレジット】
原題:GRAN TURISMO: BASED ON A TRUE STORY
US公開日:8月11日予定
監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ジェイソン・ホール
出演:デヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルーム、アーチー・マデクウィ、ジャイモン・フンスーほか
日本語吹替版テーマ曲:T-SQUARE「CLIMAX」
9月15日(金)全国の映画館で公開中
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