大学在学中に芸能界デビューを果たし、ベストセラーになったノンフィクション作品『ビリギャル』の表紙モデルを務めて一躍ブレイク。2022年まで『CanCam』の専属モデルを務め、俳優としても数々の映画やドラマに出演するなど多方面で活躍する石川恋
10月7日(土)からスタートする『猫カレ -少年を飼う-』(BSテレ東/毎週土曜 深夜0時、テレビ大阪/毎週土曜 深夜0時55分)で連続ドラマ初主演を務める彼女に、これまでのキャリアを中心に話を聞いた。

【写真】連続ドラマ初主演を務める、石川恋 撮りおろしカット【10点】

──石川さんは19歳のときのスカウトがきっかけでモデルのお仕事をスタートさせましたが、もともと芸能界に興味はあったんですか?

石川 自分の中ではあまりなかったかなと思っていたんですけど、よくよく考えてみたら、漠然とモデルに憧れはあったんだと思います。というのも当時から、友達とファッション誌の回し読みをしたり、モデルさんのブログを参考にメイクを真似したり、同じカラコンを買ったりとファッションに関わることが好きでしたし、TGC(東京ガールズコレクション)を観に行って「こんなキラキラした世界があるんだ」と感動した思い出もあるので。

──ただ、モデルになるまではCAを目指していたんですよね。

石川 高校3年生で進路を考えるときに、自分が将来何をしたいのか分からなかったんです。そしたら担任の先生が、「国語と英語が得意だし、CAが向いているんじゃない?」と勧めてくださったんです。
それでいくつか取り寄せた大学のパンフレットの1つに、CAの方の体験談が載っていて、いいなと思って目指していました。

──英語が得意だったんですね。

石川 両親が小さい頃から英会話教室に通わせてくれたのもありますし、中学3年生のときに短期でニュージーランドにホームステイしたことがあって。大学でも語学留学をしようと思っていたんですけど、『ビリギャル』の表紙モデルをやらせていただいたり、21歳で初めて映画に出演させていただいたりと、どんどんお仕事が忙しくなってきて、留学するタイミングは逃してしまいました(笑)。

──とはいえCAを目指して進学したところから、どうして芸能界に入ろうと決断できたのでしょうか?

石川 私は奨学金を借りていて、生活費も自分で賄う必要があったので、大学に通いながらずっとバイトもしていたんです。一番稼げるバイトだと思って、居酒屋で働いていたんですけど、いつの間にか生活費を稼ぐことにいっぱいいっぱいになって、気づけば朝までバイトをして、寝過ごして大学に行かない日もあったありして。
友達からの誘いも「バイトがあるから」と断るようになって、大学生活を楽しむために東京に来たのに、私って何しているんだろうと……。

──思い描いていた大学生活と違っていたんですね。

石川 そんな大学1年生の秋に、たまたまスカウトのお話があって、「状況を変えたい、漠然と憧れていたモデルができたら楽しいかもしれない」と思ったのが事務所に入ったきっかけでした。

──実際にモデルのお仕事を始めて、自分に向いているという実感はありましたか?

石川 当時は今よりもふっくらしていましたし、新人の頃はヘアメイクさんも付かなかったので自前だったんですけど、それが本当に下手くそで全然可愛くなくて(笑)。ファッション誌で見ていたモデルさんとは全然違っていて、自分には向いていないと思っていましたね。

──そんな中、2013年発売の『ビリギャル(学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話)』の表紙モデルを務めて一躍時の人になります。
が、ノンフィクションという作品の特性も合わさり、主人公のさやか本人だと思われることも多かったのだとか。

石川 モデルのお仕事の1つとしてお話をいただいたんですけど、まさか私が主人公のさやかさんご本人だという誤解を生むとは思ってもいなくて、そういう方面で話題になったときはびっくりしました。

騙しているつもりはないのに、大学の後輩からも「どうして慶応に合格したのにうちの大学にいるんですか?」と声をかけられたりして(笑)。すごく混乱した時期もあったんですけど、たくさんの人に名前を知っていただいて、その後の仕事にも繋がっていったので、『ビリギャル』がなかったら今の私はいないと思います。

──その後順調にキャリアを重ね、2017年には『CanCam』の専属モデルになります。

石川 いろいろな経験を積んで、たくさんの方々にご尽力いただいたおかげで、憧れの専属モデルになれたのは本当にうれしかったです。
その年には、高校生のときに見た夢の舞台、TGCのランウェイも歩かせていただいて。私はモデルを始めたのも遅いですし、専属モデルとしても遅いスタートですけど、こうして夢が叶っていくんだと感慨深いものがありました。一方で『CanCam』の専属モデルとして、一人前のモデルにならないといけないなと身が引き締まりましたね。

──専属モデルならではのプレッシャーみたいなものはありましたか?

石川 ありましたね。堀田茜ちゃんを始め、先輩方の撮影を近くで見ていると、自分とは全く違うんです。みなさん服を綺麗に見せるために、まるで踊るようにポーズを取るんですけど、私はカチカチに固まって何もできなくて……。
家に帰ってからも練習する日々でした。

──そして今回はドラマ『猫カレ -少年を飼う-』で初主演を務めます。お芝居にも、もともと興味があったんですか?

石川 正直なかったですね。だから初めての映画の撮影のときは勝手が分からず、ただセリフを覚えて言うだけで一生懸命でした。でも撮影現場で、自分が事前に考えていた感情とは違う、その場面で湧き上がってくる感情に出会って。お芝居ってセリフを言い合うだけじゃないんだと気づいてからは、もっとお芝居を勉強したいなと思うようになりました。
ちょうど大学卒業後の進路を決める時期だったので、たくさん悩んで、芸能界で一度挑戦してみようと決めました。

──今後もモデルと俳優の両立は続けていくのでしょうか。

石川 自分がやりたいからできる訳ではないですけど、どちらのお仕事も大好きですし、今までの経験を今後も活かしていきたい気持ちは強いです。ファッションのお仕事が、お芝居に活きることもたくさんありますし、ファッションの現場で馴染みのあるスタッフさんと会うことがリフレッシュになったりもします。

一応、俳優・モデルということになっていますけど、そういう肩書きにとらわれずに、もっとバラエティにも出たいですし、好きなことや興味のあることに、どんどん挑戦していきたいですね。

(取材・文/猪口貴裕)
▽石川恋(いしかわ・れん)
1993年7月18日生まれ、栃木県出身。モデルとして活動する傍ら、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』のカバーモデルに起用され、以降テレビドラマや映画などでも活躍している。
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