10月より放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』にて、ヒロイン・スズ子(趣里)の幼馴染、タイ子役を演じている日本舞踊家・藤間爽子。11月2日放送の第24話では、お座敷で客を相手に日本舞踊を披露する場面が放送され、家元が踊る日本舞踊に視聴者からは驚きの声が寄せられた。


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昨年は社会現象となった『silent』に出演するなど本格的に女優としても活躍している。藤間の日本舞踊家としてのキャリアを振り返りつつ、話題のドラマ出演が続くその魅力について考えたい。

藤間は東京出身、1994年8月3日生まれの29歳。祖母の初世家元・藤間紫に師事し、7歳で祖母と共に歌舞伎座にて長唄『鶴亀』を初披露。その後も古典舞踊を中心に、多くの舞台を踏んできた。

青山学院大学4年生の時、周囲の学生が就職活動を始め焦りを感じた彼女。その時に「ずっと閉ざしていた”女優をやってみたい”っていう箱が、パカッと開いたんです。とにかく、やってみよう。今しかない」と、女優を目指したのだという(『本の窓』2022年9・10月合併号インタビューより)。

2017年にNHK連続テレビ小説『ひよっこ』にて女優デビューを果たし、ここから日本舞踊家と女優の二足の草鞋での活動がスタートする。

2021年には3代目藤間紫を襲名し、26歳という若さで藤間流の家元となる。

襲名披露のインタビューでは「26歳で家元になりましたが、技量も自信もありません。
でも30代で襲名を受けたら覚悟ができたのかと思うと分かりません。いずれ襲名を受けるなら早い方が責任感も一層強くなるでしょうし、いろんなことも柔軟に吸収できると思いました」と、その覚悟を語っている(Music Voiceインタビューより)。

家元になることはある意味、既定路線ではあったが、「柔軟に吸収」という姿勢に、女優という全く新しい世界に飛び込んだ彼女ならではの新しい家元像が垣間見える。

その後、女優としては2021年には『ボイスII 110緊急司令室』、2022年には『マイファミリー』『silent』 『ちむどんどん』などの話題作に次々に出演。

日本舞踊と役者業、広く言えば芸事・表現という同じジャンルだが、藤間はその二つの違いを「日本舞踊では、音を聴いたら身体が勝手に動くまで稽古を重ねるが、女優業ではそうはいかない。柔軟性を持って相手の俳優や役柄に合わせた芝居が求められる」と指摘している。

藤間が語る女優としての柔軟性。それは現場での一瞬の判断だという。藤間は「(自分の役の仕事机を見て、デスクが汚れていると)『自分は片付けられない性格の役なんだ』と判断し演技を変えていかなきゃいけない」と、現場の様子や小道具などに目を向けて、その役のキャラクターや性格を理解し、演技に落とし込む作業を行うという。

稽古を重ねて身体に覚え込ませる日本舞踊と、現場で作り込んでいく女優業。その二足の草鞋を履きこなせるのは、彼女の柔軟性があってこそ。他方から刺激を受け、吸収していくその姿勢が演技に奥深さを増しているのだ。


日本舞踊の家元と聞くと、堅いイメージを抱きがちだが、藤間本人が大切にしていることは「遊ぶこと」。座右の銘は「楽しんだもの勝ち」だという。

また、家元としての藤間は弟子との関係性について「よくないかもしれないですが、友達みたいな関係です。お稽古はプライベートの話もしながら、和気藹々と楽しくやっています」(『CLASSY.』インタビューより)と語っており、彼女らしい、新しい家元像を模索しているのが分かる。ここでも柔軟に調和していく彼女らしい考えが垣間見える。

幼い頃から学んできた日本舞踊で磨かれた美しい所作、動きを礎に、持ち前の柔軟性で奥深い演技を披露する。日本舞踊と女優という二足の草鞋をはきながら、新たな道を進んでいく藤間爽子にこれからも注目していきたい。

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