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8話、9話ではクアトロ主演の4人の共通の友人・志木美鳥(田中麗奈)が強い存在感を放ち、ある種“美鳥回”だったと言っていい。しかし、第10話の冒頭で美鳥が物語から一度姿を消したことで、再び最初の4人にフォーカスが向けられた。
そこで鮮明に映し出されたのが、深雪夜々(今田美桜)の春木椿(松下洸平)に対する想い、そして佐藤紅葉(神尾楓珠)が向ける潮ゆくえ(多部未華子)への恋愛感情だ。いずれも実ることはなかったが、とりわけ前者の描き方には恐れ入った。
すでに夜々は椿に対して第7話ではっきりとではないが、好意は伝えていた。それに対して、椿は「3人とも同じかな。同じくらいみんな、同じように好き」と答えた。つまり夜々に対して恋愛的な感情がないことを示す言葉だった。
このそれとない恋愛の終わりを告げた瞬間こそ『いちばんすきな花』というドラマの性質をよく表していると感じていただけに、10話で夜々が再び椿にアプローチするのは意外な展開だった。一方で、このドラマをここまで見てきた人であれば、2人の恋が結実しないというのもある種予想通りだったのではないだろうか。
夜々の「私ってやっぱり可能性ないですか?」という言葉に、椿は「ごめん」とだけ返し、改めて2人の恋愛は成立しないということが示された。しかし、ただ失恋した、視聴者にとって悲しいだけの感情で終わらせないのがこのドラマの魅力である。
夜々が自分の涙を拭いた後の丸めたティッシュをゴミ箱へ向け、「入ったら付き合ってくれますか?」と聞き、「付き合わない」と椿に言われるとわざと外すように投げるシーンが描かれた。
悲恋を描きながら茶目っ気も含めるこのシーンは同時に、ゴミ箱という2人にとってのキーアイテムを中心に据えたものでもある。思えば、椿は夜々の美容室に一度行った後、会員カードをゴミ箱へ捨てていた。そして、それを密かに拾い上げる夜々を見せることで好意の始まりを匂わせていたが、今度は夜々が「何か」をゴミ箱めがけて投げることで、恋の終わりへと導いている。
伏線と言ってはあまりに陳腐だし、脚本家の生方美久さんも必要以上に注目してほしいシーンではないだろう。それでも、プロデューサーの村瀬健さんとともに、最初に掲げた「男女の友情は成立するか?」というキャッチコピーをしっかりと“回収”しているのはあまりに見事だった。
その答えはすでにドラマ内でも言われているように「人にとっては成立する」なのだろう。だが、そうしたシンプルな答え以上に注目したい恋の終わりがそこにはあった。
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