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野木は近年、『アンナチュラル』や『MIU404』などのオリジナルドラマで脚光を浴びているが、元々は原作付きドラマでこそ異彩を放つ才能の持ち主だった。『図書館戦争』シリーズや『アイアムアヒーロー』、『俺物語!!』など、人気原作の実写化に多数携わっており、2016年の『重版出来!』では「東京ドラマアウォード2016」の脚本賞を受賞するに至っている。その半年後、『逃げるは恥だが役に立つ』の大ヒットは言うまでもないだろう。
ところでドラマや映画の脚本において難しいのは、原作とはまったく異なる媒体に合わせて、原作の内容を落とし込む必要があることだ。尺の制限があるため、どのエピソードを使うか取捨選択する必要がある上、実写にしても違和感がないようにさまざまな表現を工夫しなければならない。時には“原作にはないが実写では入れた方がいいシーン”を追加することも重要となるだろう。すなわち原作の上辺をなぞるのではなく、その内容を正しく理解した上で再構成する力が求められる。
野木の脚本が評価されるのは、何といってもこうしたテクニックに関する部分だ。たとえばゾンビものの大人気マンガを原作とした映画『アイアムアヒーロー』では、ストーリーや世界観を上手く実写に置き換えることに成功していた。パニック映画としてのツボを抑えながら、未知の大災害に見舞われた人々の生々しい感情の動きや言動を丁寧に拾い上げており、人がゾンビのような存在(ZQN)になる直前の支離滅裂な言動なども、原作の雰囲気をほぼ“完コピ”している。
そうした原作理解度の高さからか、野木は原作者から強い信頼を寄せられることも多い。実際に『アイアムアヒーロー』の作者・花沢健吾も、1月27日に自身のXにて「原作者も納得の映画版アイアムアヒーロー 初号試写の感動は未だに忘れられない ラッキーだったんだなぁ」といったポストを投稿していた。
早い時期から野木の才能を見抜いていたのが、『図書館戦争』シリーズの作者である小説家・有川ひろだった。自身の著作『空飛ぶ広報室』が野木脚本で実写ドラマ化された際、TBS公式サイトのインタビューにて、「原作をものすごく正しく読み解いて、その上できちんと取捨選択をやってくださっています」と語りつつ、原作にあってもおかしくないようなオリジナルエピソードが追加されたことを絶賛していた。
また野木自身、同ドラマをめぐる公式座談会にて、原作『空飛ぶ広報室』だけでなく有川の過去の作品なども読み込んで制作にあたったことを明かしていた。やはり原作を深く理解するためには、地道に原作を読み込んで登場人物の心情などの解像度を高めることが重要なのではないだろうか。
ちなみに同ドラマでは有川も脚本をチェックしていたそうだが、「忙しいときには『野木さんの原稿なら読まなくても大丈夫!』というOKを出してしまいます」とまで冗談交じりに語っており、野木への信頼の高さがうかがえる。
さらに最大のヒット作である『逃げるは恥だが役に立つ』に関しても、原作者の海野つなみからその仕事を絶賛されており、プライベートでの交友が生まれるほど良好な関係を築いていた。
ほかにも東村アキコ原作の『主に泣いてます』や西尾維新原作の『掟上今日子の備忘録』など、野木は原作ファン納得の実写化を多数成功させている。2024年1月から公開が始まった和山やま原作の『カラオケ行こ!』も、口コミで大きな盛り上がりを見せているところだ。
次はどんな原作付きドラマを手掛けてくれるのか、今後の動向にもっとも注目したい脚本家の1人ではないだろうか。
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