脚本:宮藤官九郎、主演:阿部サダヲによるTVドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)の第8話が、3月15日に放送された。エピソードのタイトルは、「1回しくじったらダメですか?」。
まさしく今回取り上げられるテーマは、キャンセル・カルチャーだ。(以下、ドラマ第8話のネタバレを含みます)

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EBSテレビの若手人気アナウンサー倉持(小関裕太)が、女性アスリートとの不倫スキャンダルで炎上。およそ2年に及ぶ禊を終えてようやく復帰…と思ったら、SNSに批判的な書き込みがされ、それを元にWEBライターがコタツ記事を書き、それがネットに公開されてさらに批判の声が大きくなり、しまいには番組スポンサーへの不買運動にも繋がる…という負のスパイラルが発生。書き込み2件だけの小さな炎上が、意図的な操作によって大きな炎上へと拡大してしまったのだ。

リスクマネジメント部長の栗田は、「もはやテレビが向き合う相手は視聴者じゃない。観てない連中なんです」と言い放つ。さらに、「どうやって向き合う?」と戸惑う市郎(阿部サダヲ)に対し、「観る人はまだ好意的、観ないで文句を言う人は最初から悪意しかない。これがバッシングの実態です」と説く。もう会社を辞めるしかないと肩を落とす倉持に、市郎は「たった一度の過ちも許されない。そんな世の中間違ってる!」と一喝する。

批判的な書き込みをした相手にSNSで説得したり、なぜ復帰してはいけないのか街頭アンケートで聞いて回ったり、精力的に動く市郎。やがて、20回目の結婚記念日を祝う栗田のホームパーティに呼ばれた市郎と倉持は、かつて彼が妻の加世子(紺野まひる)を裏切って不倫していた事実を知らされる。
しかもこのパーティには、不倫相手の女性(和田光沙)まで呼ばれていた。栗田が犯した罪をいつまでも反省させるため、加世子の友人たちによって開かれた催しだったのである。

その帰り道、釈然としない倉持は思わず「言っていいのかな。あの人たち関係ないですよね」と口にする。倉持の不倫は倉持家の問題だし、栗田の不倫は栗田家の問題のはず。このようなテーマでかならず俎上に載せられる、当事者性・非当事者性だ。

だが筆者の個人的意見を言うならば、あからさまに非当事者が口出しするものではない不倫というイシューを引っ張り出して、「これがバッシングの実態です」と栗田に言わせてしまうのは、あまりにもキャンセル・カルチャーの単純化・矮小化に繋がるのではないだろうか。当事者でなくても、もしくはたった一度の過ちであっても、許容することはできない事案が存在するとして、その境界線に対して宮藤官九郎はどのような回答を(あくまでドラマとして)示すのか、筆者はそれを知りたかった。

第3話では、「セクハラのガイドラインはどこ?」という疑問に対し、市郎が「相手を自分の子供だと思えばいいんじゃないか?」とひとつの提案を示している。その意見に対して、SNS上では異論・反論も巻き起こった。そのような反応があることを理解した上で、クドカンはひとつの考え方を提示したのだろう。第8話もそのような斬り込み方ができる題材だっただけに、少し残念に感じる。


ラストにはキョンキョンが登場して(そして五十代のムッチ先輩として彦摩呂まで登場して)、いよいよラストスパートを予感させる展開になってきた『不適切にもほどがある!』。破天荒ドラマの行く先はどこなのか、期待して次エピソードを待とう。

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